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最強付与士の無自覚ハーレム冒険譚 ~仲間の顔も素性も知らないけどたぶん全員男だと思う~  作者: 徳川レモン
第三章

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90話 大人気パーティーが妬ましい

 

 ――A級昇格試験。一日目。


 快晴の空とは打って変わり、地上の王都では殺気立った受験者達が続々と集まっていた。毎年恒例ともなるこの光景になれた住人は、通り過ぎて行く受験者達に声援を送る。初めて目にする者は異様な空気感に驚いていた。

 受験者達が目指すのは、闘技場である。到着した受験者達は受付を済ませ中の会場へ。能力テスト開始まで各々会場で時間を潰す。


「何人か油断できない実力者がいるようですね」

「ああ、気配を殺して様子を窺っている。あっちの魔術師も魔力を抑えているが、腕はかなりとみた」


 俺達はそんな様子を、闘技場の観客席から眺める。


 試験当日ということもありメンバー全員、顔を隠した仮の姿だ。ただでさえ試験で頭がいっぱいの関係者を混乱させないよう、試験中は素顔を隠した、皆が知る名称未定(アンノウン)として動くと決めていた。


 そんなわけで、フェリスは仮面を着け、ザインはいつも通りに、ノノンはグランノーツに乗り、シルクは白い毛玉。俺はラックス・サードウッドの顔である。

 ちなみにグランノーツがどこから出てきたのか、だが。ノノンの所有するマジックストレージの中からである。これからは重量を気にしなくていいと思うとずいぶん気が楽になる。グランノーツが馬車に乗ると信じられないほど移動が遅くなるからだ。


 さて、会場の様子だが。こうして上から観察するのは、試験官としても個人としても非常に面白い。


 全身に傷がある者。派手な防具を着けた者。壁際で気配殺し沈黙する者。全員が腕に自信のあるB級だ。彼らは揃って同じく観客席にいる、銀の護剣(シルバーブレイド)獣歌(アンセム)を強烈に意識しているようであった。対して二つのS級は気にする様子もなくテストを見物している。


「やっぱあーしら人気ないね。鬼カッコイイ揃いなのに」

「ち、血を」

「シルクも不思議に思っている。謎だ」


 後ろにいる、全身鎧と黒づくめと毛玉が揃って首をかしげている。


 俺だってそう思うが、世間の評価は色物集団だ。まだまだS級の中では評価は下ってことだな。銀の護剣(シルバーブレイド)はもちろん獣歌(アンセム)も同業者からは人気が高い。

 獣人で固めた七人パーティー。リーダーのギル、双子の美少女に美人なお姉さん、野性味のある男らしい仲間もいて色彩豊かだ。その上で実績と信用があるのだから当然の人気だ。妬ましい。ああ、妬ましい。仲良くなっておこぼれにあずかりたい。


「皆さんおそろいですね」


 そう言ってやってきたのはルルーナだった。

 彼女は俺の隣に腰を下ろすと、緊張した面持ちとなった。


「いよいよ始まったようですね」


 試験前の簡単な挨拶が終わり、遂に能力テストが開始される。

 行われるテストは四つ。筋力テスト。魔力テスト。感覚テスト。特殊テスト。


 筋力テストは計測機で全身の筋肉の計測。

 魔力テストは魔力量と命中精度の計測。

 感覚テストは箱形の魔道具に入り、視覚、聴覚、嗅覚を計測。

 特殊テストは、種族的な特性を計測。


 四つのテストの内、二つで規定ラインを超えられた者だけが本試験を受けることができる。

 テストと銘打っているが、実際は足切りである。そうでもしなければとんでもない数の採点をしなくてはいけないからだ。今だって千人以上の申込者がテストを受ける為に待ち続けているのだ。


「な、ななな、懐かしいなぁ」

「そういや俺達も一緒に受けたな、能力テスト」

「計測機、壊しちゃった」


 しょんぼりするザインに苦笑する。


 加減が分からなくて、筋力テストで計測機を壊してしまったのだ。その次の魔力テストでも計測機を壊し、合格にするからもうテストは受けるなとザインは追い出されてしまった。その後にフェリスが筋力テストで再び計測機を壊したのは懐かしい記憶だ。


 フェリス、やっぱりお前はパワー系だよ。


「あーしはグラちゃんなしで計測したっしょ。もち、計測機壊したけど」

「シルクも不本意だが壊してしまった」

「壊してないの俺だけかよ」


 まぁ、その代わり俺は三つのテストで規定ラインを超えたけどさ。全て満たせなかったのは、特殊テストが原因だな。あれはヒューマン以外の他種族向けのテストだ。他種族には、稀に筋力や魔力で測れない能力を備えている者がいる。そういった者達を落とさないための救済だ。それでも落ちるときは落ちるけどな。


「うぉりゃあああああああ!」


 聞き覚えのある声が響き、筋力テストの辺りでどよめきが起こった。

 計測していたのはアバンテールの冒険者であるマダニだ。合格ラインを大きく超えたマダニは、当然とばかりの態度で前髪をかき上げていた。でもあいつ、今回が初めてじゃないんだよな。

 が、ざわめきは、別のどよめきにかき消される。すぐ隣で筋力測定を受けていた剣士がさらに上回ったのだ。


 あいつ……見覚えがあるな。そうだ、眼鏡剣士君だ。へー、意外にやるんだな。


「上には上がいるものだ。よく覚えておくんだな。田舎者」

「なんだとっ!」

「やめなさい。喧嘩をするなら二人とも失格にしますよ」


 挑発した眼鏡剣士君に、マダニはまんまとのせられ逆上する。

 だが、割って入った職員によって両者は注意された。


 よく見ると至る所で冒険者同士のいざこざが発生しているようであった。といっても試験ではよくあることだ。ただでさえ喧嘩っ早い人種が狭いところに押し込められている。トラブルが起きない方が不自然だ。


「今年は全体的にレベルが高そうですね」

「その口ぶりだと毎年試験に?」


 独り言と思われるルルーナの言葉に返事をしてみる。


「はい。昇格試験は学院にとってもいい実技訓練になりますので。私は三年前から生徒と共に参加させていただいています」

「先生も大変だな。生徒の世話だけでもしんどいのにさ」

「そうですね。でも、毎回新たな発見があって、人としても魔術師としても成長できている気がして。それに魔術学院を創設した一族として、この程度でへこたれているわけにはいきませんから」


 立派だなぁ。志のあるある若い先生って感じがするよ。

 恐らく魔術の腕もいいんだろうな。


 バレンシア家ができたのはおよそ七百年前と言われている。そこそこ古い魔術師の家系だ。現代魔術の礎を築いたのもこのバレンシア家と言われていて、現在に至るまで王国の魔術界に大きな影響力を与えている……というのをサリウスに聞いた。俺もそこまで聞いて師匠にそんな話を教わったなとうっすら思い出した。


 俺は立ち上がる。同時に仲間も帰還を察して腰を上げた。


「さて、そろそろ見たいものは見られたから、帰るとしますか。じゃあまた、ルルーナ」

「はい、また」


 仲間を引き連れて闘技場の通路へと入る。

 だが、シルクだけがついて来ていないことに気が付き、足を止めた。


 シルクは通路の入り口で立ち止まっており、じっとルルーナを見ているようであった。


「知り合いなら声をかければいいじゃないか」

「その必要はない。シルクは彼女に見つかりたくないのだ」

「実は会いたくなかった相手、とか?」

「そこまでは言っていない。思い出せないならそれでいいというだけ。もう行く。シルクは甘い物が食べたくなった」


 先を行くシルクを見つめながら俺は頭を軽く掻く。

 なんだよ。気になるじゃないか。



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