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最強付与士の無自覚ハーレム冒険譚 ~仲間の顔も素性も知らないけどたぶん全員男だと思う~  作者: 徳川レモン
第三章

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86話 王都では田舎者はよく目立つ

 

 古めかしくもお洒落な建物が並ぶファルナス王国の首都。馬車が四台ほど並んでも余裕がありそうな大通りでは、雑多に人々が行き交っていた。王国の中心というだけあって、住人の身につける服や小物は質が高い。全体的にお洒落だ。


 そんな通りをずんずん進む俺達。

 人々はこちらに気が付くと足を止め見入っていた。


 名称未定(アンノウン)――フルメンバーである。


 俺、フェリス、ザイン、ノノン、シルクと五人揃って王都に到着。

 可憐な美貌にして炎の魔剣を携えた金髪の剣士。

 ミステリアスな黒髪の美女。

 太陽のようなに明るい褐色美少女。


 人々の大半は彼女達の異彩放つオーラに圧倒されていた。

 そして、さらに目立っていたのがその中にいる白い毛玉だ。美女美少女のど真ん中にいる毛玉の存在感足るや、鼻の下を伸ばしていた男達ですらそれに気づくと真顔で凝視していた。

 もちろん俺は蚊帳の外である。一部の男達に嫉妬される以外は、そもそも視界にすら入っていないようだ。


「いいな、お前ら存在感があって。ちやほやされてさ」

「拗ねないでください。子供ですか」

「俺が立派な大人に見えるのか?」

「すみませんでした」


 即座に謝罪をするフェリス。

 あれ、考える間もなくですか? 少しは悩んでくれてもいいんですけど。おかしいな、自分で言ったのに悲しくなってきた。


 仲間を引き連れる俺は、久々の王都を見上げる。


 俺達が王都に来た理由。言うまでもなくギルド本部の依頼を引き受けたからである。参加メンバーも全員だ。ギルマスも非常に喜んでいた。

 昇格試験が行われるのは五日間。その次の日には、王国で最も大きなお祭りである『豊穣祭』が行われる。試験の準備期間を含めると二週間近く滞在する予定となっているので、その間に祭りを楽しむ魂胆だ。


「さっすが王都。お洒落なお店があるじゃん。あの全身鎧とか鬼可愛いし」


 ノノンがとある店をのぞき込み、羨ましそうにしていた。


「ああ、そっか、忘れてた。別にお前達までギルド本部に行く必要は無いんだった。宿の場所はすでに教えてあるし。買い物に行きたいのなら好きに行っていいからな」

「マジ!? やったぁ、買い物買い物! せっかくだしみんなで回ろうよ!」


 はしゃぐノノンは、フェリスの腕に腕を絡ませた。


「私はサブリーダーなのでラックスと共に本部に行かなくては」

「あ、そっか。残念」


 肩を落とすノノンに、俺は腕を組んで思案する。

 どうせ今日は顔合わせや簡単な説明程度だろう。本格的な講習は明日からだろうし、無理にサブリーダーを同行させる意味はない。一人で充分かな。


「たまには羽目を外して仲間と楽しんできたらどうだ。こっちは俺一人で充分だからさ」

「ですが」


 そこでシルクが、ぴょこんとはねっ毛を揺らした。


「シルクが同行しよう。ラックスが聞き漏らした話は、シルクが記憶しておく。宿に戻った際に情報共有も行う。これならば問題ない」

「そうですね。すみませんが、シルクさんにお願いいたします」


 フェリスはあっさりと引き下がり、ノノンとの買い物について行くことを決めたようだ。

 あとはザイン。はたして俺とノノンのどっちについて行くつもりか。


 全員の視線がザインに集中する。


「……」


 なぜかザインは普段の黒づくめ姿に戻り、俺にずいっと顔を近づけた。


「ひ、ひひ、ひひひ」

「一人で買い物したいのか?」

「そ、そう」


 相変わらず距離感が。吐息が当たってますよ。


 そうか、一人でぶらぶらするのも選択肢の一つか。何も必ず集団行動をする必要はない。仲間にも見られたくない姿というのもあるだろう。俺だってこそこそと顔を隠して、秘密の買い物をするときだってあるんだ。


「じゃあこっちは俺とシルクに任せて、三人は好きにやってくれ。言っておくがくれぐれもトラブルを起こさないように。喧嘩を売られたからって相手を泣かせるなよ」

「それはラックスですよね?」

「ラクっちの話じゃん」

「ラックスぅ……」


 三人から逆に気をつけろと視線を向けられてしまった。

 すると毛束で肩をぽんと叩くのはシルクである。


「注意して見守る。シルクに任せておけ」

「俺は子供かよ」


 拗ねるぞ。本気で拗ねるからな?



 ◇



 王都の一角にある大きな建物。アバンテールギルドが可愛いと思えるくらいのサイズのそれは、ファルナス王国にある全ての冒険者ギルドを束ねる冒険者ギルドの中枢。通称ギルド本部。ファルナス王国王都ギルドである。

 俺とシルクは揃って王都ギルドを見上げる。


「シルクのセンスとは合わない。親しみを感じない」

「確かに言われてみると無駄に威圧感あるよな。無機質だし優雅さもない。なんかこう正面にムキムキの冒険者の石像とか置いたらより人気が出そうだよな」

「やはりラックスは分かる男。シルクはその素晴らしいセンスに感服する」


 二人でギルド本部を前にしてはしゃぐ。

 ただ、なぜか通り過ぎる冒険者達は俺達を露骨に避けていた。


 王都のギルドというだけあり、すれ違う冒険者達は清潔感があったり着飾っている者が多い印象だ。ギルドを出入りする人の数も尋常ではなく、初見であれば間違いなく圧倒される光景であった。まぁ、俺には慣れた光景だけど。


「本部前でおかしな発言はやめてもらいたいね。他の冒険者が驚いている」


 声に振り返ると、そこには白髪混じりの初老の男性が立っていた。

 人の良さそうな温和な顔つき。フード付きマント身につけ、その手には長杖が握られている。


 彼の名は――【サリウス・エンディケ】


 高名な魔術師であり王都ギルドのギルドマスターでもある。マントにはギルドマスターの証である”金色の五本剣”の刺繍が施されていた。


 サリウスは人好きしそうな微笑みで挨拶をする。


「久しぶりだね。ラックス君。そっちはシルク君だったね」

「どうも。ご無沙汰してます」

「なぜ王都のギルドマスターがここに?」


 彼はシルクの言葉に「君達を待っていたんだ」と返事をしながら、ギルドへ誘うように歩を進めた。

 通り過ぎる冒険者達はギルドマスターに気づくと足を止め一礼をする。人徳のなせる業だ。アバンテールのギルドマスターではこうはならない。


「私はA級昇格試験の監督役を任されていてね。()()()()の手配は私が担当しているのだ。まったく老体をこき使うのは止めて貰いたいね」

「ギルド側?」

「それについてもきちんと説明を行う予定だ。久しぶりの本部はどうかな?」


 言葉を交わしているだけで、俺達はいつの間にかギルドの中へと足を踏み入れていた。


 アバンテールギルドとは比較にならない広いエントランス。壁や床は驚くような量の高級石材が用いられており、建物の各所には照明の魔道具がふんだんに配置されていた。壁にはファルナス王国ギルドの紋章である”五本剣”が描かれた深紅の旗が垂れ下げられていた。

 ギルド内は大勢の冒険者で活気があり、真っ昼間から酒を呷る中堅や熟練もいなければ、建物の隅でサイコロを転がして賭け事をやる輩もいない。誰もが真剣に仕事について話をしていて、すれ違う集団の中には、騎士団のような統率のとれた集団もいくつか見て取れた。


 俺に気が付いた何人かの冒険者が、怒りの籠もった目で睨んでいる。


「敵地って感じですかね」

「なるほど。最速でS級に上り詰めた者には気苦労が多いようだ」


 サリウスの言葉に俺は、ぽりぽり頭を掻いた。 



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