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最強付与士の無自覚ハーレム冒険譚 ~仲間の顔も素性も知らないけどたぶん全員男だと思う~  作者: 徳川レモン
第三章

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84話 待ちに待った白き毛玉の帰還

 

 膨大な知識が収められたミルディアの書庫。

 そこはまさしくミルディアの歴史そのものである。


 並べられた無数の棚はちょっとした迷路のようだ。棚にはみっしりと書物が収められ、手に取ってみると分かるが、たった一冊ですらずっしりと重い。見事な装丁に心を躍らせつつめくれば、羊皮紙に刻みつけるように書かれた、驚くほど密集した文字の羅列を目にするだろう。

 そんな書物が収められた場所で、シルクはたった一人黙々と、何ヶ月もページをめくり続けていたのだ。俺であれば頭がおかしくなっていただろう。


 さらに驚くべきことに、彼は書庫の本を全て読破していた。閲覧禁止の書物も含めてだ。驚異的な速読。本当に読んでいるのか疑いたくなる速さ。とにもかくにもシルクはミルディアの知識を漁りつくし、ようやく帰還したのである。


 ホームの敷地で俺は、不在中にあったできごとをざっくりだけど説明をしていた。


「……そんな馬鹿な。シルク以外全員が姿を偽っていたなんて」

「今まで隠していて悪かった」


 俺はこれまで顔と素性を隠していたことを謝罪する。

 スルーできない言葉をスルーしたような気がしたが、ここはまずは真摯な態度を優先する。


 シルクは本当にこれまでの俺達を信じていたらしく、ずいぶんショックを受けているようであった。信じていた仲間が偽りの姿であったと知らされれば、やはり少なからず動揺はするだろう。

 一方で俺に何か言うことありませんかね、とうっすら思ったりもしていた。もしや隠している自覚がないのだろうか。この雰囲気だとその可能性が高い。


「まぁその、俺達今までなんだかんだ上手くやってこられたじゃないか。だから本当の姿を知ってもらいつつ、これからも仲間として活動できたら良いなって考えててさ。だめかな?」

「シルクにとって名称未定(アンノウン)は居心地が良い場所。何かと知識が得られて冒険も楽しい。仲間も好ましいと感じている。確かに驚きはしたが、離れるほどの理由ではない。自分達を知ってほしいというのならシルクも努力しよう」

「感謝するよ。ところでさ、その姿暑くないかな。ほら、毛が多いとさ」

「このくらいがちょうど良い。シルクは寒がり」


 あ、そうなんすね。寒がりかぁ。寒がりだとしかたないよなぁ。俺も真冬の部屋では毛布に包まりますしね。へぇ、そっか。


「と、ところで、書庫で欲しい情報は見つけられたのか」

「欲しい情報は得られなかった。だが、知らなかった知識を得られた点では非常に満足している。古い魔術もいくつか得られた。収穫はあった。そうだ。フェリスに渡さなければならない物があった」


 シルクはフェリスに会いに行くと言ってホームの中へと戻っていった。



 ◇



 開け放たれた窓から陽光が差し込み、白いカーテンが揺れる。

 本を読む俺の後方では、薄く照らされた本の塔が無数に並んでいることだろう。手に持った本を閉じると俺はデスクに突っ伏した。


「だぁぁ、やっぱり田舎で手に入る本じゃ限界があるかぁ。王都にある王立図書館なら欲しい情報が手に入るだろうけど遠いしなぁ」


 王都は気軽に行ける距離じゃないし、そもそもプライベートで行くような金がない。しかもさ、この時期の王都は最高に楽しい場所なんだよなぁ。金さえあれば全て解決なのに。金のなる木とかないかな。


「どっかに割の良い仕事とかないですかね。こう寝てても大金が転がり込むような」

「ありますよ。新作のお薬を飲むだけのお仕事とか。ただ、お勧めはしませんね。大金を得るかわりに頭がパーになるともっぱらの噂ですから」

「そういうお仕事は求めていません。頭がパーとか怖すぎでしょ」


 振り返るとティーカップと菓子が載ったトレイを持ったフェリスがそこにいた。

 どうやら気を利かせて持ってきてくれたらしい。彼女は積み上がった本を躱しつつこちらへとやってくる。


「少しは片付けをしたらどうですか。ほこり臭いですよ」

「これから片付けるところだったんだよ」


 デスクにティーカップを置いたフェリスは「手伝ってあげますから一緒に片付けしましょ。ね?」などとにっこり微笑む。

 やるなフェリス。さすがサブリーダーだ。俺の扱い方をよく分かっている。そんな風に可愛いお願いをされたんじゃあ、やるしかないじゃないか。


 ひとまず彼女の淹れてくれたお茶を堪能する。


「そういえばお父様からお手紙をいただきました」

「シルクが探していたのはそういうわけか。で、中身は?」

「私が冒険者として活動することを許可すると書かれていました。あれこれ書いても折れないので諦めたようですね。縁談の話も当分はしないと書かれていました」


 ついに父親が折れたか。娘の幸せを願って縁談話を持ち上げようとしたのは理解できなくもない。しかし、肝心のフェリスがそのつもりがないのだから折り合いなど付けようが無いのだ。領主の気苦労はもう少し続きそうだな。


 まぁ、俺としてはサブリーダーがいなくならずに済んでありがたいのだが。


「そういやシルクはどうしてる?」

「寝ると言ったきり部屋に閉じこもったままですよ。手紙を渡す際に、ずいぶん眠そうにしていましたから熟睡されているのかもしれませんね」


 ミルディアの書庫をたった数ヶ月で隅々まで読み尽くしたのだ。疲れて当然か。それに歳もあるだろう。俺の予想だが、シルクの中身は恐らく老人だ。あれほどの魔術を扱えるのは知識も経験も豊富な老紳士しかいない。今はゆっくり休んでくれシルク爺。


「……なんだこの声?」

「下から、のようですね」


 女の子達のはしゃぐ声が響く。何事かとフェリスを連れて一階のリビングに向かってみると、そこでは新人ちゃん達にザインとノノンが何やら集まって喜び合っていた。


「何事だよ一体」

「聞いて聞いて! あたし達、ついにD級になれたんだよ!」


 剣士ちゃんを始めとする三人がこちらに駆け寄ってきて報告をしてくれた。

 ついに昇格したのか。そろそろあるだろうと予想はしていたけど、想定よりも少し遅かったな。その分着実に経験を積んだとも言えるが。


「おめでとう。また一つ大きくなったな」


 俺は微笑みながら三人の胸を見つめる。



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― 新着の感想 ―
経験豊富な老紳士←つまりだいぶ幼い女の子…?
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