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最強付与士の無自覚ハーレム冒険譚 ~仲間の顔も素性も知らないけどたぶん全員男だと思う~  作者: 徳川レモン
第二章

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74話 付与士と戦うとだいたい頭がおかしいと言われる

 

 降り注ぐ攻撃魔術をグランノーツが壁となって防いだ。攻撃が収まったところで、ナイフを持った敵の前衛が迫る。

 グランノーツの後方から、フェリスとザインが飛び出し、同じくして俺も短杖を振るう。付与するのは『舌噛み(ステューピッド)』のデバフだ。喋ろうとすると軽く噛んでしまう程度の付与、しかし、詠唱をしなくてはいけない魔術師相手には最高の嫌がらせだ。


「ひぎゃ!」

「マックス!?」

「ぷぎゃ!!」

「ダミアァァン!?」


 敵の魔術師達が舌を噛む。

 仲間が詠唱不能になり、狼狽えていた魔術師も盛大に噛んだ。


 それでも数人の魔術師は、心が折れずなんとか噛まないように詠唱をこなし攻撃を継続する。詠唱が遅くなったことで攻撃頻度が低下。


 その間にフェリスとザインは、敵の前衛に肉薄し交戦する。

 炎を纏う剣は、容赦なく敵を斬る。

 フェリスは適当な岩を軽々と掴み、攻撃魔術への盾とした。


 軽やかに敵の刃を躱し続けるザイン。

 振り下ろされた剣を手刀で切断すると、敵は絶句する。直後に拳によって敵は壁面へめり込んだ。

 ザインをナイフで刺した男が喜んだのもつかの間、魔術による回復によって、ナイフを押し出すように傷口は塞がり、振り返ったザインの片目が敵を捉えた。


 遅れてグランノーツが魔術師に向けて走り出す。

 攻撃魔術をもろともせず突き進むその姿は、突進する無敵防壁である。眼前にまで迫り来る壁に恐れおののき、遂には魔術師達は我先にと逃げ出した。





 ほぼ全ての敵が片付くと、生きている奴らだけロープで縛って通路の中心にまとめる。

 隊長は部下に使い捨て転移魔法陣を設置させ、騎士の一人が転移したのち、すぐさま帰還する。続々と兵士が転移してくると敵は連行されてゆく。


 全てが片付くと騎士は魔法陣をたたみ仕舞った。


「露払い感謝する。引き続き先導をお願いしたい」

「仕事だかなら。依頼はきっちりこなすさ」


 そう返事をしつつ、うっかり短杖の先を騎士達に向ける。

 ざざざっと騎士は一斉に何かを恐れるように身を躱した。さらに杖を彼らに向けると、再び回り込むように逃げる。


「その、ラックス殿の付与はこざかしすぎる――いえ、有能すぎると申しましょうか。杖を我らに向けないでいただけますかな?」


 隊長が怯えたように注意をしてきた。

 こざかしすぎるって言わなかった? 言ったよね今。


 ◇


 俺達が立ち止まった先には――二方向への分かれ道があった。


 どちらの道の先も、光が届かず暗闇が全てを隠している。どちらかが当たりかもしれないし、あるいはどちらもハズレかもしれない。隊長も決めかねるとばかりに渋い表情をしていた。

 竜の巣穴に潜ってからそれなりに経過していた。進んだ距離もずいぶんとなる。俺の予想では敵の本拠地は近いとみている。実際、進むほどに罠の数も襲撃の回数も目に見えて増していた。


 ランタンを持つフェリスが振り返った。


「ひとまず二手に分かれるというのはいかがでしょう。片方が見込みなしと判断できれば、ここまで引き返しもう片方と合流する、というのは?」

「メンバーはどうする?」

「そこはリーダーであるラックスのお仕事ではないでしょうか」

「あー、はいはい。でしたね」


 俺はフェリスを一時的にリーダーとし、ザインとグランノーツを同行させることにした。そして、もう片方の道には、俺と騎士達が行くことに。完全にばらけさせても連携がとれないだろうから、騎士に俺が同行するという形にしたのである。まぁ、俺は支援するだけだし問題ないでしょ。


「何かあったらすぐにあーしらを呼びなよ? 鬼早で駆けつけるから!」

「わかってるよ」

「ち、血を」

「怪我をするつもりはないから。期待するな」


 フェリス達を見送った後、俺達ももう片方の道へと進んだ。


 ◇


「……よりにもよって、こっちが当たりかよ」


 嘆息混じりにぼやいてしまう。


 散乱する獣の骨。天井から滴る水滴でできた透明度の高い水たまり。

 道と呼ぶにはずいぶんと広い空間。

 奥の壁には金属製の重厚な扉が設置されている。進路を遮るように立ち塞がるのは、ぼろきれを纏い武器を持った二十人ほどのドワーフの男達だ。


 その背後では、三十人のフードをかぶった連中とくすんだ金髪の男がいた。


「予定と違うな。このルートで待っていれば、銀の護剣(シルバーブレイド)とやれると思っていたんだが、来たのは一番つまらない騎士共か。ちっ、手早く片付けるぞ」


 長髪の若い男が短杖を抜く。それだけで相手が付与士であることは一目瞭然であった。

 俺と同じ付与士――だとすれば面倒な戦いになりそうだ。それにあのドワーフ達、信徒にしてはずいぶん薄汚れてて疲れた様子だ。服装も信徒というより奴隷……。

 ドワーフの一人が突然話し始めた。


「わ、我々は、ラダン村のドワーフだ。教団に捕まり家族を人質に取られている。すまない。奴らに逆らえないのだ。我らはどうなってもいい。殺されてもいい。罰だって受け入れる。家族だけは、家族だけは助けてもらえまいか」

「誰が発言を許した。麻痺」


 男が魔術文字を描く。筆記速度は俺ほどじゃないがなかなか速い。

 瞬時に『麻痺』を付与し、発言したドワーフは地面に倒れた。様子から判断してドワーフは教団に捕まり働かされているようだ。俺はそれとなく隊長に真偽を確認する。


「事前の話にはなかったけど本当なのか?」

「我らも初耳だ。ラダン村といえば、翼竜山の反対側でひっそりと暮らす小さな村だったはず。教団に襲撃されていたとは」


 王国には把握すらできていない集落や村が点在している。中には他種族のみの村も。師匠が暮らしている村が良い例だ。ファルナス王国は他種族を広く受け入れている国だ。しかし、ヒューマンを中心とする国家からかやはり疎外感を抱く種族が多いのも事実だ。少数の他種族は次第にかたまり集落を形成した。ラダン村もその一つだ。

 騎士達が殺気立ち武器を構える。


「ドワーフ達はどうするつもりだ?」

「気の毒ではあるが、我らも王国の安寧を守る身である。立ち塞がるならば斬るのみ」


 敵と騎士がにらみ合う。


「俺がなんとかする。わざわざ殺す必要はないさ」

「しかし、どうやって」

「忘れたのか。俺は付与士だ。ドワーフを無力化しつつあんたらを支援する。それとも対策もなく敵に突撃するのが騎士のやり方か?」


 戦術を学ぶ騎士は、付与士の重要性をよく理解している。その危険性も。

 あとは個人的な危機感かな。同じ戦闘職だからこそ分かる。()()に俺抜きで突っ込ませたら全滅する。騎士の中には魔術師もいるのでレジスト可能だと考えているようだけど、腕の良い付与士の前では、数で押し切られてしまう。敵もそれが狙いだからこそあの余裕の態度なのだ。


「では、ラックス殿に支援をお願いしたい」

「超一流付与士に任せておけ」


 俺はぽりぽりと頭を掻く。

 対して薄ら笑いを浮かべる長髪の付与士が、ドワーフを押しのけ前に出た。


「ラックス? そうか、貴様が名称未定(アンノウン)の付与士か。くくく、面白い。どちらが付与士として格上か勝負といこうじゃないか。もちろん俺様が勝つけどな」

「ずいぶんな自信だなキューティクル全開くん。俺も付与ならちょっとばかし自信があるんだ」

「誰がキューティクル全開だ! 俺様はカマッセルだ! 覚えておけ!」

「カマ――行くぞ、全開くん!」

「略すなぁあああ!! ぶっ殺す!!」


 全開くんの付与をレジストする。恐らく状態異常系のデバフだ。ほぼ同時にドワーフと騎士の戦闘も開始される。さすが精鋭だ。力の強いドワーフ相手にも引かず手加減までしている。


「こいつ、速い!」

「どうした手数が足りてないぞ」


 レジストの速度が上回った。一瞬の隙に俺はドワーフに『嘔吐』を付与する。

 戦っていたドワーフは、次々に青ざめた顔となり、武器を捨てて「うっぷ」と口を押さえた。


「ちっ、使えねぇな。もういい、そこを退け。ここからは俺様の攻撃部隊が相手をしてやる。付与士の恐ろしさその身に刻め」


 ドワーフ達が左右に散り、フードをかぶった連中が前進する。

 見るからに統率がとれた戦闘集団である。前列には鎧に身を固めた剣士。後列には魔術師と付与士、それからキューティクル全開くんが陣取る。

 前列の剣士達が剣を抜く。その剣身には魔術文字が刻まれていた。


「こいつらの装備には、全て刻印付与を施してある。全ステータス上昇。状態異常耐性もアップ。デバフでどうにかできると思うなよ。さぁ、一方的な戦いの始まりだ」


 敵の魔術師が一斉に攻撃魔術を放つ。

 騎士達は、横並びに整列すると盾を構え壁となった。攻撃魔術を盾は防ぎきる。当然ながら騎士の装備にも刻印付与が施されていた。だがしかし、防戦のみとなったことで攻撃の起点を失っていた。


「何か手を。ラックス殿」


 隊長が打開策を求める。

 俺は敵の付与をレジストしつつ思案していた。


 ステータス上昇系は騎士側にも装備で付与されているはずだ。厄介なのは状態異常耐性。通常なら耐性を貫通する直書き付与で無効化できた。しかし、相手が刻印付与となると話は変わる。刻印付与による耐性強化を直書きは貫通できないのだ。こうなると地道に直書きで耐性を下げるしかない。

 仮に耐性を下げきったとしよう、次は状態異常の付与を行わなければならない。その間に耐性を上げられては苦労も水の泡だ。今必要なのは奴らの陣形を崩すことだ。ここにいる騎士達は精鋭。どれほど短く小さな好機でも確実に拾い上げてくれるはずだ。


「手が足りないのならば増やせば良い。こいつらは俺様による俺様だけの最強部隊だ。付与士は個ではなく群でこそ真価を発揮する。認めろよ。俺様より格下の付与士だってことをよ」


 正直、同じ付与士に馬鹿にされるのが一番むかつく。


 自らに『速度強化』を直書きする。それも付与できる最大まで。

 高速化した俺は、全てのデバフをレジストしつつ自ら前に飛び出し、攻撃と攻撃の間を縫うようにして駆け抜け跳躍――。


 敵の魔術師の顔面を、()()()()()


 直後に全開くんが叫んだ。


「こいつ、自ら前に!?」

「隊長のおっさん、俺が起点を作る。攻めの時間だ」


 振り下ろされる敵の剣を、俺は至近距離で躱しながら杖を奔らせる。付与するのはもちろんデバフだ。敵の”装備”にデバフ付与を直書きする。

 書くのは刻印付与専用の付与。刻印付与に使用するバフデバフは、極めて持続時間が短い上に必要となる文字数も多い。その代わり通常の筆記付与では得られない大きな効果を得ることができる。俺の筆記速度に速度バフを最大まで乗せた今なら書ききることは可能だ。まぁ相手が人だからできることだ。


 『重量増加』の魔術文字を重ねて書く。どうせ『重量軽減』は重ねて刻んでいないだろう。つまり一回書けば、装備は通常の重量に戻る。さらに書けばより重くなる。その分だけ俺との速度の差が開く。翻弄しやすくなるのだ。

 徐々に混乱が広がり陣形が乱れる。

 好機とみた騎士達が一気に突撃。戦いは敵味方入り乱れる乱戦となった。


「直書きだと!? 貴様正気か!? 自殺行為にも等しい技術だぞ!」

「確かに危険な技ではあるな。けど、嫌がらせのためなら命を賭けるのが付与士だろ?」

「貴様みたいなのがまともな付与士なものか! このイカれ野郎!」


 距離を詰めた俺は、全開くんと杖を打ち合う。



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