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最強付与士の無自覚ハーレム冒険譚 ~仲間の顔も素性も知らないけどたぶん全員男だと思う~  作者: 徳川レモン
第二章

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73話 ラックス・サードウッドは早い男である

 

 天幕の中で、最も過剰に反応をしたのはルークだった。

 彼は怒りにも似た感情を表情に出し、勢いよく立ち上がる。


「ありえない。魔王の復活など。魔王ヘカトケイルは銀の剣聖が倒した。死者は蘇りはしない」

「落ち着きたまえ」

「あってはいけないんだ。確かに僕は、あの戦いには参加していなかった。戦場の過酷さも悲惨さも僕は知らない。それでもいち王国民として、今の平和な世がどれほど尊く貴重なのかよく理解しているつもりだ」

「ルーク・グロリアス。まずは落ち着きたまえ」


 穏やかなようでいて重い将軍の声音によって、再び天幕内に凪のような緊張感がもたらされる。冷静さを取り戻したルークは「失礼した」とひっくり返った椅子を直し、今一度話を聞くべく腰を下ろした。


 将軍は無表情のまま淡々と話を続ける。


「私も戦争に参加した者として同じ気持ちだ。多くの犠牲を踏みにじるようなことは決してあってはいけない。しかし、現実として危機は差し迫っている。我々はどのような手段を使ってでもこれを防がねばならない。そのために君達の協力が不可欠なのだ」


 ギルも少なからず動揺していたらしく「もしそれが本当ならヤバいだろ」と漏らす。一方でリリーは眉すら上げず微動だにしなかった。

 魔王が倒されたのはおよそ八年前。当時を知る者は多い。ルークのように取り乱す者がいても何も不思議でないのだ。


 しかし、この会議いつまでやるんだ。こっちは移動だけでくたくた、早く飯食って横になりたいんですけどね。やべ、あくびが出そうになった。


「あー、えーと、つまりだ、話をまとめると……魔王あるいはそれに近い何かを、連中が作り上げているということだよな?」

「その通りだ」


 死者は蘇らない、か。普通に考えればそうなんだよな。

 だが、不可能を可能にするものは存在する。魔道具だ。青銅級~白銀級は現代でも生み出すことができ、その仕組みも解明されている。それはつまり黄金級から上は、未だ再現のできない代物。人知を超えた物体だ。最上の神級ともなれば、神のごとく人では実現不可能な事象を現実の物とする。神級なら死者蘇生すらも実現可能かもしれない。


 とはいえたかが邪教集団に、神級を探し出す力があるとは到底思えない。よって『本当の意味での死者蘇生ではない』と俺はひとまずの結論を出した。


「軍は魔王神教が、少なくとも魔王に相当する何かを生み出そうとしていると判断した。これにひどく憂慮された国王陛下は、できる限り速やかに『敵』を掃討せよとお命じになったのだ。諸君らには決してしくじれないと心得て貰いたい」

「もちろんです。誇り高き王国の民として全身全霊で協力いたしましょう。竜の巣穴の攻略は冒険者である我々にお任せを。必ずや皆さんを敵のもとに送り届けて見せます」

「感謝する」


 正義マン全開のルークが使命感に燃えている。いつも以上に眩しくて見ていられない。

 テーブルで頬杖を突いているギルは「勝手にリーダー面するなよ」とご機嫌斜め。リリーも「勝手に話を進めないで」と不快感をあらわにしていた。


 俺は頭を掻きながら席を立つ。


「さて、竜の巣穴をどう攻めるか戻って考えますか。そうそう、名称未定(アンノウン)は中央から攻める予定だから。これ予約ね」

「「「なっ」」」


 俺は地図に駒を置く。

 中央はここから一番近い入り口だ。移動時間が省けて楽。


 元剣聖としては複雑な心境というか、因縁を感じずにはいられない仕事ではあるものの、それはそれこれはこれだ。楽して儲けるためなら割り切りも大事。それにこういったものは早い者勝ちだ。

 同業者三人が一斉に立ち上がった。


「これはよくないよ。正々堂々じゃんけんで決めよう」

「てめっ、卑怯だぞ。これだからクソ付与士は」

「ふざけないで。真ん中は私達が取る予定だったのよ。無効よ」


 俺は忙しいの。場所取りなんかで時間取られたくないからさ。

 後はそっちで勝手に決めてください。


 吠える三人を無視して俺は天幕を出た。


 ◇


 薄霧が立ちこめる肌寒い早朝。空では飛び交う翼竜を餌とするワイバーンが飛翔していた。

 草木が茂る緩い山道を上ったところで山肌にぽっかりと空いた穴を見つける。これこそが竜の巣穴だ。こんな穴が山にはいくつも空いているのだという。

 ちなみに他の三パーティーは一足早く各々の穴に到着している。ウチが最後なのはいうまでもなく一番近いからだ。おかげでぐっすり眠れたよ。


 振り返ると十名の騎士が突入を待っていた。これから彼らと巣穴に潜るのだ。


「中では俺の指示に従ってもらう。竜の巣穴はあんたが想像もしないような危険に満ちている。無事に敵地へ送り届けるのが役目だが、さすがに勝手に動いて死なれちゃあ責任とれないからな」

「心得ている。将軍にも君達の指示に従えと命じられているのでな」


 三十代前半ほどの男性が鷹揚に応じた。

 話が分かる騎士様で安心した。


 決して弱いからあんなことを言ったのではない。単純に得意分野が違うって話だ。

 騎士は騎馬戦や物理的な対人戦闘において無類の強さを誇る。剣聖の頃の俺ですら容易には勝たせてもらえなかった。片や冒険者は対魔物に特化したダンジョン攻略のエキスパートだ。お互い得意なことで助け合いましょうねって話なのである。


「守りはあーしに任せて。このグランノーツの鎧は鬼硬いんだから」

「「「おおおっ」」」


 騎士達がグランノーツに過剰に反応する。全身鎧同士共鳴し合っているのだろうか。騎士達の目も輝いてて憧れを目の前にする子供のように思えてしまう。そういやグランノーツって男の子に人気なんだよな。実は騎士にも人気だったとか?


「そんじゃあ出発しますか。竜の巣穴へ」


 名称未定(アンノウン)を先頭に巣穴へと潜る。


 中はひんやりとした空気に満ちていて、強烈な獣臭が鼻を突いた。

 穴のサイズは身を縮めた竜が通り抜けられるほどだ。天井はゆうに五メートルを超え場所によっては十メートルを超える場所もあった。

 巣穴の内部は非常に暗いため、名称未定も騎士団もランタンで視界を確保している。中に入ってみて分かったことだが、ここの巣穴は複数の巣穴が繋がってできたものだと推測される。交差する通路がこれまで見てきたものの中でダントツに多く、広範囲にわたって通路が形成されている。うっすら瘴気も漂っており毒を含んだ空気が漂っていた。


「じょ、じょうかぁあああ!」


 ザインが現れたスケルトンごと浄化。フェリスとグランノーツは、同じく現れたゴブリンの群れを片付ける。俺はランタンを持ったまま眺めるだけ。


「ラックス殿は戦いに参加されないのですかな」

「ほら、俺って支援系だしリーダーでしょ? 後方から仲間を見守るのも仕事というか。ああ、指示出しはあれくらいの敵だと不要なんで。いやぁ、俺も頑張りたいけど敵が弱いからなぁ」

「は、はぁ」


 とはいえ全く何もしていないわけではない。

 魔力の網を張って常に周囲の警戒をしている。まぁそれだけだけど。

 一応腰に剣を備えているけど抜けないので基本俺は役立たずだ。出てくる魔物もあの三人には全く敵わず鏖殺されている。つまり付与士の出番はない。


 がこん。フェリスが床の仕掛けを踏み抜く。ひゅっとどこからか矢が飛んでくるが、彼女はたやすく片手でつかみ取った。


「毒矢のようです。侵入者除けの罠ですね」


 一部の騎士がざわつく。彼女の飛んでくる毒矢を軽々と掴んでみせる反射神経に驚いたのだ。


 彼女の微笑みに騎士達は動揺を隠しきれず一歩後ろへ引いた。

 さすがパワー系剣士。実に頼りになる。まぁ本人はスピード系だと言い張ってはいるが。


「さすがミルディアの姫騎士。いや、ここでは炎剣と言うべきか。敵の罠を真正面から受け止められるとは」


 隊長は感服したように喜んでいた。

 驚かないってことは彼も同じ状況なら余裕で対処できていたってことかな。他の騎士とは頭一つ抜けていると思った方が良いな。

 魔力の網に無数の反応が現れる。直後に炎の攻撃魔術が降り注いだ。


「あーしに任せて! 鬼ディフェンス!」


 グランノーツが前に飛び出し攻撃を全て受け止める。

 ぶしゅううと蒸気が吐き出され、漂う煙の中でグランノーツは防御体勢を解いた。


「魔王神様に逆らう愚か者共め。皆殺しだ」


 黒いフードをかぶった連中が、どこからともなく姿を現し薄ら笑みを浮かべていた。



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