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最強付与士の無自覚ハーレム冒険譚 ~仲間の顔も素性も知らないけどたぶん全員男だと思う~  作者: 徳川レモン
第二章

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71話 お偉いさんがホームにやってきた

 

 ――テーブルを挟んだ正面に将軍とギルマス。

 そこへフェリスが戻り、二人の前にお茶を差し出した。一礼すると彼女は退室してしまう。


「超有名人の将軍様が、名称未定(アンノウン)に何のご用で?」

「それはだな」


 口を開いたギルマスを将軍は「まちたまえ」と話を中断させた。


「その前にお茶をいただこうではないか。ミルディアの姫騎士が淹れてくださったのだ。冷めてからでは失礼というもの」

「それもそうですな」

「落ち着く良い香りだ。上級貴族の屋敷で出されるそれとなんら遜色がないレベル。使用人任せがほとんどだというのに、ご自身でこれほどのスキルをお持ちだとは」


 将軍もギルマスも揃って茶を啜る。さらに置かれた焼き菓子にも手を伸ばした。

 俺も喉が乾いたので茶を含むと、甘く芳醇な香りが鼻から抜けた。いつものフェリスの味だ。茶会などに顔を出す将軍が唸るのだから相当の腕なのだろう。ただ、飲み慣れているせいか、俺に彼のような驚きはなかった。


 全員がティーカップを置いたところで将軍から切り出された。


「突然の訪問にもかかわらず招き入れてくれたことに感謝する」

「前置きはやめてくれ。アンブレラで、また会うみたいな発言をしていたのは”これ”があったからか?」

「そうだ。あの時はゆっくり話をする時間も無く、少々口惜しい気持ちだったよ」


 つまり将軍には元々、名称未定(アンノウン)を尋ねる予定があって、本来なら今日が初対面のはずであったと。説明されて腑に落ちたというか、意味深だなとは思っていたのだ。

 ギルマスが話の口火を切る。


「魔王神教の件はご苦労だった。敵を捕らえることができ、国王陛下がお喜びになっていたそうだ。ギルド本部からも、銀の護剣(シルバーブレイド)名称未定(アンノウン)への感謝状を受け取っている」

「言葉じゃなくもっとこうさ、金でできたコインを沢山くれるとかさ。分かってないな王様もギルド本部も」

「こ、言葉を慎めラックス。将軍の前だぞ」


 口が過ぎたらしくギルマスが珍しく慌てていた。


 事実を言ったまでだ。しょっ引くならお好きにどうぞ。もちろん抵抗はするけどな。

 結局、魔王神教との戦闘はただ働きだったし、内心では割に合わない依頼だったなと少しばかり後悔しているのだ。そりゃあねルークが元に戻ったのはいいことですよ。だけど名称未定(アンノウン)の財布は膨れないんですよ。欲しいのは割の良い仕事。もう一度言う。割の良い仕事だ。


 将軍が俺の腰にある剣を一瞥した。


 恐らく剣から、俺が元剣聖とは気づけないだろう。どこにでもある作りだし、特徴的な何かがあるわけでもない。平凡なデザインの剣だ。


「君も剣を扱うのだな」

「護身用さ。後衛だからって杖だけに限る必要も無いだろ?」


 彼は「その通りだ」と、それ以上気にとめた様子もなく軽く流した。

 本当に気になっただけなのだろう。それ抜いて見せて、とか言われなくて本当に良かった。抜けない剣を持っているなんてどう考えてもおかしいしさ。いや、その時は飾りとかなんとかで、切り抜ければ。それがいい。いざとなったらそう返そう。


「そういや尋問してた女魔術師は口を割ったのか?」

「これから話す依頼は、そのことにも関係している。参加するかしないかは、説明を聞いてからにしてもらいたい」


 つまりここに来たのは魔王神教がらみだと。なるほどね。

 しかしなんでまたウチにだろう。女魔術師を捕まえたのはたまたまだし、魔王神教に詳しいってわけでもないのだが。参加と言ったあたりに、将軍が直々にお越しになった理由があるとみた。


「単刀直入に言う。これから我々は、魔王神教の掃討作戦を行う予定だ。そこに名称未定(アンノウン)も参加して貰いたい」

「これは達成後の報酬、白金貨6枚に金貨50枚、合わせて金貨650枚分だ。閣下は前金に200枚お渡しになると仰っている」


 テーブルに金貨が置かれる。

 その輝き足るや、思わずごくりとツバを飲む。


 だがしかし、喜ぶのはまだ早い。


 経験上、軍との仕事は厄介ごとが多い印象だ。その軍のトップが直々にお越しになるのだから、さらに厄介な仕事なのは言うまでもない。かといって断れるほど財布が潤っているわけでもない。まずは内容を聞いてから。受けるか断るかはそれからだ。


「敵の根城は『竜の巣穴』だ。内部は複雑に入り組んでおり、危険な魔物も数多く生息している。作戦には複数の冒険者パーティーが参加予定だ。その一つに名称未定(アンノウン)もと、私は考えている」


 竜の巣穴――名前の通り、竜が住んでいる、あるいは住んでいたとされる天然のダンジョンだ。

 一部の竜種は山の岩肌や地面に巣穴を作ることが知られている。巣穴を作った竜は、生まれる子供のために餌となる魔物を招き入れ繁殖させる。子供が成長し巣立って行くと、親は巣穴を離れ本来の生息域に戻るのである。放置された巣穴は、時間とともに魔物の住処となっていきダンジョンの完成となるわけだ。


 まぁ竜はキラキラしたものを好む習性があるので、潜ってみるとお宝ざっくざくってことも割とある。稀少な魔物が生息していたってケースも多々あり、冒険者の間ではそこそこ難易度の高いダンジョンとして扱われている。


「冒険者を案内役にしたいのは理解した。素人が大挙して押しかけても全滅するだけだからな。で、どうしてウチなんだ?」

「魔王神教は、宗教の名を騙った非常に危険な組織だ。恐喝、強盗、強姦、殺人、ありとあらゆる手段で魔道具を収拾するならず者の集団。恐らくこちらの想定を超えた対抗手段を用意しているはずだ」

「それで?」

「ミルディアのアンデッドキングは守りに特化していた。それこそA級やS級が崩せぬほどの堅い守りを。だがしかし、君達はそれを突破し見事討伐を果たしたのだ。そこで私は、名称未定(アンノウン)はあらゆる障害をはねのける突破力のあるパーティーなのではと考えた。もちろんリーダーである君の指示があってこその結果だろう。私はどうしても今回の作戦に君達がほしかったのだ」


 ふ、ふーん、すごく褒めるじゃないか。

 まぁ、確かにミルディアを取り戻せたのは、俺がリーダーだったからってのが大きい。メンバーも頑張っていたが、やはり九割は俺の力だ。うんうん。

 とはいえまだすっきりしない。それっぽく言ってはいるが恐らく本当の理由は伏せている。元来、彼は実直な性格で嘘を吐くのが苦手だ。あれから少しは成長したみたいだけど、あの頃の彼を知る者が見れば誤魔化しているのは丸わかりだ。


「魔王神教の根城はかねてより目星はつけていた。しかし、確固たる証拠がなかったのだ。確実でなければ軍は動けない。そこに幹部であろう魔術師を君が捕らえてくれた。尋問にはずいぶん骨が折れたが、おかげで魔王神教の根城が、竜の巣穴で在ることが確定したのだ。改めて礼を言う」

「礼なんて良いさ。それで――軍の本当の狙いは何だ? 教えてもらえるなら引き受けてもいい」 


 魔王を崇拝する集団が魔道具を集めているってだけで、軍部のトップが直々に動く案件とは思えない。ギルド本部に引っ張り出されたのは理解するけど、それだけとはな。


 将軍は「隠し通せないか」と、仏頂面のまま眉間に皺を寄せた。伏せたままで依頼交渉を終わらせたかったらしい。


「これからする話は、当日全員に伝える予定であった。漏洩を避けるための処置だと考えてほしい。先に知る君には、誰にも話さないと今ここで約束して貰う」


 やっぱりな。軍が教団を本気で潰したい理由があるってことだ。

 それはたぶん、奴らが魔道具を集めている目的にも関係している。まぁどうせ面倒ごとでしょ。


「魔王神教の真の目的は、魔王ヘカトケイルの復活だ」

「……冗談、だよな?」


 問いかけに将軍は大真面目だと無言で返す。

 ギルマスも初耳であったのか驚愕の表情で固まっていた。


 魔王ヘカトケイル――言わずもしれた銀の剣聖が倒した魔王である。


 奴は同族のみならず数多くの魔物を率いて王国に戦争を仕掛けた。村や町が火の海と化し数え切れないほどの人の血が流れた。抵抗を続けた王国は次第に劣勢に。その後、銀の剣聖が現れ、形勢は逆転、なんとか勝利を収めた。


「とあるルートを使い手に入れた情報だ。教団が魔道具を使い、密かに彼の魔王を蘇らせようとしていると。私も最初は懐疑的であった。だが、君が捕縛した魔術師の証言により一気に確信へと変わった」


 彼は続ける。


「魔王復活までにはまだ猶予がある。教団が目的を達する前に、確実に壊滅させなければならない。そのために協力を請いたい。この依頼、引き受けてもらえるだろうか?」


 魔王を復活させるなんて聞いても信じられなかった。世界は広い、実現できる魔道具だってこの世にあるかもしれない、それは俺だって理解している。だが、実際そんな魔道具を見たわけでもなく耳にしたこともないのだから実感など湧きようもなかった。

 それでも沸々と胸の奥で、湧き上がる感情のような物があった。沈んだ何かが、目を開き泡を吐いた気がしたのだ。気が付けば俺は「受ける」と返していた。


「感謝する。では前金だ」

「ああ」


 将軍とギルマスがホームを去った後も、俺はしばらく窓の外を眺めていた。



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