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最強付与士の無自覚ハーレム冒険譚 ~仲間の顔も素性も知らないけどたぶん全員男だと思う~  作者: 徳川レモン
第三章

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103/106

103話 信じがたい真実。そう、男は俺一人

 

 シルク・シルフィード・バレンシア。それが彼女の真の名だ。

 美しく可憐な少女の姿をした彼女は、自身を千年以上生きる魔術師だと語った。


「シルクは”エターナル”と呼ばれる種族だ。若く見えるがこれでも生きた時間は千年余り。種族の寿命は二千年ほどとされており、エルフを超える高い魔術素養を備えた種族と言われている」

「せ、千年……」


 俺、フェリス、ノノンの三人が絶句する。

 ザインは特に驚いたような様子は無く、ルルーナに至っては当然のように受け取っていた。


 長命種を超える長命種。人種族の中で最も長く生きると言われているハイエルフでさえ、その寿命は五百年を超えるか超えないかだ。ただ、俺の中ではまだ信じ切れない気持ちがあった。なぜならエターナルなどと称する種族など聞いたもないからである。

 世界は広大だ。まだまだ未知の種族がいても不思議ではない。それでもただの一度も耳にしたことがないというのもおかしな話だ。彼女はこのファルナス王国で古き魔術師の家系として在り、高名な貴族としても存続するバレンシア家の初代当主。


 何者か分からないなんてことが許され放置されるだろうか。


「エターナルは忘れ去られた人種族。古い書物を漁れば名くらいは出てくるはずだ。それでも種族的特徴や、かつてどういった存在であったのかを知る者は限られている。シルクのような書物を漁る物好きくらいだ」

「忘れ去られたとは?」


 フェリスの言葉は、まさしく俺がしたかった質問だった。


「説明は簡単だ。シルクの種族が絶滅の危機に瀕しているからだ。これまで出会った同族は、片手で数えられる程度。まだ生きているのかもシルクは知らない。時間の流れは残酷だ。かつて知らぬ者はいなかった種族の名は、化石と化し、紙の上だけの存在に成り果てようとしている」

「素朴な疑問なんだけどさ。なんでエターナルは絶滅の危機に瀕しているの?」

「それは……」


 本当に純粋に抱いた疑問だった。

 だっておかしいだろ。二千年も生きる長命種が、今はほとんどいないなんて。数千年を生きるドラゴンですら探せばいくらでもいる。

 もちろん長命種は性欲が乏しいとか子供ができにくいとかあれこれ噂は耳にする。それでも種が存続できないなんて状況には陥っていない。だとすれば別の要因。エターナルが消えた別の理由があると考えたのだ。


 始めてシルクの表情に動揺が表れた。

 目は激しく揺れ逸らす。唇を噛んだ彼女は、声を絞り出した。


「言えない、これだけは誰にも。信頼していないわけではない。だが、仲間でも言えることと言えないことがある」

「悪い。踏み込んで聞いちゃったな。俺ってよくノンデリとか言われるしさ。いやぁ、シルクの気持ちも考えずうっかり質問しちゃったなぁ」


 うんうん、気をつけないとね。俺は素顔を知りたいだけで、強引に秘密を聞き出したいわけではないんだよね。でもまぁ、本当に困ったら素直に頼ってほしいとは思うけどさ。これでもパーティーのリーダーだし。


「いつか、皆に伝えるつもりではある。でも、まだ気持ちが」

「初代様、私もおりますよ! バレンシアの名を授かった一族の末裔として、全身全霊でお助けする所存です! もちろん魔術学院総出でも問題ありません!」

「うるさいルルーナ」


 隣に居るルルーナがシルクを抱きしめる。すごい溺愛っぷりだ。

 理知的な女性かと思っていたけど今の彼女は、本能をさらけ出し、妹を猫かわいがりする姉のようである。シルクもうざがっているわりにまんざらでもない顔だ。


 ひとまず種族については聞けたけど、まだバレンシア家とルルーナに見つかりたくなかった理由が判明していない。さらにもう一つ大きな疑問も。千年以上生きてきたってことは、つまりシルクはこの姿で成人、そして、ルルーナはシルクの名を継ぐ一族。まさか人妻!? 人妻なんですかシルクさん!?


 そこでノノンがはいはーいと挙手する。


「てことは、シルシルって結婚して子供を産んだの? だって二人ともバレンシアってことは、そういうことっしょ? でも、髪色も顔も似てないね。種族もシルシルだけエターナルだし」

「当然です。初代様は赤子だった二代目当主を拾い育て、魔術を授けてくださるばかりか、家名まで授けてくださったのです。現バレンシアはシルク様を支え敬う者達の系譜。シルク様こそが真のバレンシアであり、我々は名と技術を受け継ぐ魔術家系なのです」


 シルクに代わり説明をしてくれたのはルルーナだった。

 そこに後ろめたさも落胆もなく、むしろ彼女は誇らしげに堂々と語る。その胸元では魔術学院のネックレスが揺れて光を反射していた。

 現代魔術の名家、魔術学院を創設した一族、今もなお研鑽を積み新しい魔術を世に出し続けるバレンシア家。シルクがいたらかこそ手に入れられたと考えるならば、崇拝に近い感情を抱くのも無理はない。


 続きを促したのはフェリスだった。小さく頷いたシルクが語る。


「今でも鮮やかに思い出せる記憶。昨日のようだ。あの日、シルクはたまたま森に行って魔物を狩っていた。そんな折に、捨てられた赤んぼうを見つけてしまった」


 森の浅い部分で魔物を狩っていたシルクは、たまたま捨てられた赤んぼうを発見してしまう。

 赤んぼうは籠に入れられ泣いていた。子供を持った経験が無いシルクは狼狽え、置いて行こうと決めた。だが、赤んぼうは小さな手でシルクの長い髪を掴んだ。


 諦めたシルクは、渋々赤んぼうを町に持ち帰ったそうだ。


 見ず知らずの赤んぼうを預かってくれるような知人はおらず、彼女は興味もあって赤んぼうを育てることにした。

 魔術を学ぶ旅をしていたシルクは、赤んぼうを連れて各地を転々とした。それは悪戦苦闘の日々。夜泣きをする赤んぼうをあやし、おしめの替え方を見知らぬ女性に尋ね、ミルクをもらえないかと子供の多い家の扉を叩いたりもした。


 子供はすくすくと成長し、いつしかシルクから魔術を習うようになっていた。シルクは子供の教育を考えてファルナス王国に定住を決めたそうだ。

 子供は大人となり、シルクは自身の家名であるバレンシアを息子に与えた。優れた魔術師として頭角を現した息子は、王に認められ爵位を授かることとなる。彼はシルクに与えられた知識と技術を多くの才能ある者に与えるべく、魔術学院の創設を提案。初代学院長の椅子にはシルクが座り、教壇には息子が立つこととなった。


 彼女の名は瞬く間に王国中に広がった。

 その深い見識と知識、優れた技術は、魔術師ならば誰もが帽子を脱ぎ頭を垂れた。


 ついた二つ名は”妖精魔女”。


 彼女は現在でも、偉人の一人として魔術学院の教科書にその名が記載されているそうだ。

 現代魔術の基礎を生み出し発展に大きく貢献した偉大な魔術師。魔術学院の最初の学院長。新たな魔術師の家系であるバレンシアを作った人物として。


「その後、シルクは表舞台から姿を消し、屋敷で魔術の研究を続けていた。息子が死に、その息子も死に、代を経てもなおシルクはバレンシアを見守り続けてきた。時々気晴らしに何ヶ月も外に出ることはあってもシルクの帰る場所はあそこと決めている」


 彼女は窓の外に目をやる。夜空を星が埋め尽くし、町にも無数の明かりが瞬く、前夜祭はさらに盛り上がっているようであった。見知らぬ母と息子が通りかかると、懐かしむようにシルクは目を細める。


「う、ううう、シシ、シルクはがんばったぁぁああ!」

「なぜザインが泣く?」


 だばぁとザインが片目から涙を流していた。

 フェリスもノノンも涙目になっていて、ルルーナに至っては、両目からだばだば涙を流し鼻水まで垂らしている。


 いやいや、君のご先祖様のお話でしょ。

 なんで初めて聞いたみたいな反応しているのさ。


 でも、なんだ、とんでもない経験をしてきたってことだけは伝わったよ。シルクとルルーナが似てないのも納得できたというかさ。てことはだ、ルルーナはシルクが今も生きていることを知っていたってことだ。じゃあなんで闘技場であんな反応をしたんだ。


「実は初代様が存命でいらっしゃることは、両親からそれとなく聞かされていたのですが、身内だと初代様呼びですし、学院で習うのも初期も初期ですから。恥ずかしながら今頃になって気が付いた次第でして」

「バレンシアの者は、何かとシルクに構うので面倒に感じていた。ルルーナに正体がばれると都合が悪いと思い余計な発言は控えていた」

「シルク様、私の名前をご存じでしたよね? それはなぜでしょうか?」

「幼いルルーナを屋敷で何度か見かけていた。その時に名と顔を覚えたのだ。ルルーナはシルクをもじゃもじゃと呼んで懐いていた」

「な、なんて無礼を。恥ずかしい、今すぐ自室の布団にくるまりたい」


 シルクとルルーナは、親しげに言葉を交わしている。


 そういやシルクが初めてルルーナと会った際に、気をつけろと言っていたな。

 つまり正体がばれるかもしれないからうかつなことは言うなよ、って意味だったのか。分かんないよ。教えて貰わないとさ。毛玉さん。


 ぴょこん、と跳ねっ毛を揺らしたシルクは真っ直ぐに俺達を見た。


「シルクが何者かは伝えた。勘違いとはいえ隠していた件については詫びる。申し訳なかった。もしよければ、これからも仲間として名称未定(アンノウン)に所属させて欲しい」

「謝罪なんて必要ないさ。俺だって顔や素性を隠してたしな。シルクはウチの要。いなくなると困っちゃうな。てことで、これからもよろしく、頼れる凄腕魔術師さん」

「感謝する」


 こぼれんばかりの微笑みをシルクが浮かべる。

 その微笑みに、この場にいる全員が見惚れるように見入っていた。


 直後、俺はとんでもない事実に意識が向いて恐怖する。


「……男、俺一人ってこと?」


 名称未定(アンノウン)は、黒一点のパーティーだったのである。

 がらがらと足下が崩れた気がした。



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ドラゴンノベルス公式ページ
― 新着の感想 ―
ここに来てタイトル回収。今のシルクに勝てる人って居るのかな?
ま、まだ分からんよ! もう1人のガサガサちゃんがオトコの娘の可能性が!!
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