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「これからどうするつもりですか? ヴィス」
事務所内の簡易イスに座らされたトリアは、隣のヴィスに小声で訊ねた。ヴィスはトリアの顔を見ると肩をすくめた。
「考えてない」
「やっぱり……しかし、困りましたね。これでは身動きが取れません」
事務所には工場の関係者らしき人影が見当たらず、閑散としていた。だが、先ほどの警備兵が奥の机で確認の電話をかけている。夜も遅いせいか、うまく連絡がつかない様子だった。警備兵は何度か電話をかけなおし、そのつど、「夜分に申し訳ありませんと」と頭を下げていた。時間稼ぎにはちょうどよかったが、なんだか気の毒になってきた。
「強行突破するか?」
ヴィスは警備兵と職員用出入り口の距離を確かめながら、囁いた。
「全力で走れば、突っ切れそうだ」
その言葉にトリアも黙ってシミュレートをしはじめたようだった。沈黙のあと、トリアは静かにうなずいた。
「決まりだな」
ヴィスは言うなり立ち上がり、出入り口目指して走り出した。トリアが続いて走り出す。突然の出来事に警備兵はすぐに対応することができなかった。
「――はい、そうなんです。ええ……おい、お前たち、なにをする気だ! あ、いえ、こちらの話でして、おい、こら! ……いえ、ですから、そちらのことではなく、ええい、もう!」
やけくそになった警備兵が走り出したときには、もう手遅れだった。二人の姿は轟音の鳴り響く工場内に消えていた。




