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二人がロンヌシェルトに戻ると、フロントに手紙が届いていた。
トリアが受け取り、内容の確認をすませると、ヴィスに手紙を差し出した。
「どうやら、謁見の日時が決まったようですね。明日の午後、フラット政務次官にお会いしたあと、そのまま、宮廷に向かうようです」
「ああ」
ヴィスは気乗りしないようすで、うなずいた。
「あまり、うれしくないようですね?」
「そんなことない。うれしいよ」
唇に指をあて、うつむいたまま、手紙を見ようともしない。トリアはヴィスの反応に首をかしげた。メリルに注意されてから、ずっと様子がおかしい。
部屋に戻ってきてからも、ヴィスは上の空で、ソファーにもたれながら、天井を眺めていた。
「メリル秘書官に、ずいぶん叱られたようですね」
テーブルの上に置いたアタッシュケースから、トリチウム電池を取り出しながら、トリアは静まり返ったヴィスに、話しかけた。
「もしかして、それが反省という状態ですか?」
「反省? ――ああ、反省なら、さっき、もうしたさ」
ヴィスは横目で、電池の交換をしているトリアを見ながらつぶやいた。つまり、いまは反省していない、ということだ。
上着を脱ぎ、腹部を開けていたトリアは、新しい電池を嵌めながら、首をかしげた。
「では、どうして、そんなに大人しいのですか?」
「違和感さ」
「違和感?」
かみ合わない会話に困惑していると、ヴィスが立ち上がり、トリアの背後に回りこんだ。そして、ためらわずにトリアの背中を叩いた。
「な、なんですか? 一体」
ヴィスは黙ったまま、真剣な顔つきで今の感触を確かめた。そして、確信した。
「エレクトオートってのは、出稼ぎをするのか?」
「出稼ぎ? なんのことです?」
トリアはヴィスの顔を覗きこんだ。ヴィスはまっすぐトリアの顔を見た。
「エレクトリア・アンペールから出稼ぎに出る奴はいるのか?」
「前にも話したと思いますが、エレクトオートは滅多に国から出ることがありません。私や、リオットのことで勘違いされているかもしれませんが、エレクトリア・アンペールは、他国との関わりを最小限に留めています。留学生にしても、過去、数名しか受け入れを許していません。出入国には、かなりの気をつかっているのです」
冷静に答えるトリアに、ヴィスは大きく首をふった。
「だが、あの感触は、おまえにそっくりだった」
「感触? だれの感触ですか?」
「工場で働いていた奴だ。あいつの背中を叩いたとき、妙な感触だったんだ。少し堅い感じがした」
ヴィスの言葉に、トリアは眉をひそめた。
「もし、それが人間の感触でなかったとしたら……」
「なかったとしたら?」
ギアをフル回転させているトリアの顔をヴィスは覗きこんだ。トリアはうなずきながら微笑み、芝居がかった仕草で人差し指を伸ばした。
「私が探していたものかもしれない……行きましょう、ヴィス!」
トリアはすばやく上着を着るとヴィスを促し、部屋を出た。
フロントに頼んで自動馬車を呼び寄せると、ふたりは急いで第四号工場へと向かった。




