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町の一区画を往復する単線鉄道にしか乗ったことのないヴィスは、大陸鉄道の駅に立つと、目を丸くした。まず線路の幅がとてつもなく広いことに驚き、到着した列車の大きさに息をのんだ。城壁がそのまま滑りこんでくるのかと思ったほどだ。行き来する人の多さといったら、さきほどの朝市といい勝負だ。ヴィスは案内表示に従いながら、二等客車を目指して、駅構内を右往左往した。三人の駅手に場所を聞き、四人の物売りに列車の乗り方を訊ね、何とか乗りこんだと思ったら、途端に出発のベルが鳴り響き、列車が動き出した。
衝撃に驚き、ヴィスが手すりにしがみつくと、列車はあっという間に加速し、長いプラットホームを飛び出した。町並みや森の木々がビュンビュンと後ろに流れ去っていく。今見た景色だけでも、乗り合い馬車で移動するなら二日はかかる距離だ。ヴィスはあらためて大陸鉄道のすごさに息をのんだ。
さすがは工業都市ケーナバルトにつながる鉄道だ。
ケーナバルトは世界有数のトリチウム電池の生産国であり、輸出国として有名だった。今、世界にある機械のほとんどは、このトリチウム電池で動くようにできているので、ケーナバルトは毎日、大量のトリチウム電池を世界中に輸出していた。今乗っているこの列車も、工業用大型トリチウム電池を六本並列つなぎで動かしているという。ヴィスはそのことを駅手から自慢され、素直に感心した。
ユエラのような農村地帯を旅してきたヴィスにとって、ケーナバルトへの旅は驚きの連続だった。
目の前に広がる未知の世界に、思わず鳥肌が立つ。
はたしてケーナバルト二世に占いの結果を、うまく伝えることができるのだろうか。
ヴィスは自分の未来を占ってみたいと思ったが、禁忌を犯すわけにはいかないので大きく頭をふり、その考えをふり払った。
とりあえず、先に進めばなんとかなるさ。
ヴィスはひとりでうそぶくと、かたわらに転がった古くからの相棒――革のトランクを拾い上げ、二等客車に移動した。




