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第93話 祭壇を起動!

 陸はそのまま祭壇のポイント入力欄を開いた。


「とりあえず……100万入れてみるか」


━━━━━━━━━━━━━━

【祭壇】


捧げるポイント:1,000,000P


加護を発動しますか?

━━━━━━━━━━━━━━


「よし!」


 決定した瞬間、祭壇の中央に青白い光が灯った。


「わっ!」


 石板に刻まれていた細い溝へ光が流れ込み、枝分かれしながら台座の下へ走っていく。そのまま祭壇の足元から地面へ何本もの淡い線が伸び、周囲へ向かって放射状に広がっていった。


「おお……!」


 暗かった地面を青白い光が次々と走り抜け、少し遅れて祭壇そのものも淡く輝き始める。


 やがて強かった光は落ち着き、祭壇の紋様だけが夜の中で静かに光り続けた。


━━━━━━━━━━━━━━

【祭壇の加護が発動しました】

━━━━━━━━━━━━━━


「めっちゃそれっぽい!」


 陸は少し離れて祭壇を見た。


 これで本当にどれだけ変わるのかは、まだ分からない。だが、確かめる方法ならもう決まっている。


「よし。次は香炉だな」


 陸はサモンマップを開いた。


 祭壇にいるのは、ここを見つけたナイトウルフ二体とエコーバット一体、それに自分たちと一緒に来た九体。残る六部隊、十八体はまだ別方向の遠くにいる。


「先にこっち戻ってきてもらうか」


 陸は遠方にいる六部隊へ意識を向けた。


 祭壇まで戻ってこい。


 サモンマップ上で、六つの部隊の印が少しずつ向きを変え始める。


「よし。戻ってくるまで、こっちの十二体だけ変えとこ」


 近くにいる十二体をストックへ戻し、代わりに戦闘向けの十二体を召喚する。オークウォーロードとハイオーガも呼び出し、祭壇の周囲へ並べた。


「これなら十二体でもいけるだろ!」


 所持アイテムを開きかけたところで、陸の手が止まった。


「あ」


「どうしたの?」


 隣にいるエリナを見る。


 誘魔の香炉は、以前エリナまで強く引き寄せたことがある。そのせいで香炉を使って育成する時は、エリナを家へ残していた。


「これ、エリナいると使えないじゃん……」


「エリナ?」


「前に使った香炉、覚えてる?」


「こうろ……」


「あれにすごい夢中になってたじゃん」


 エリナは少し考えるように首を傾げた。


 家まで戻れば問題はない。だが、ここまで何時間もかけて来たうえ、残り時間も三日ほどしかない。エリナを送り届けるためだけに往復する時間は使いたくなかった。


「なんか対策ないかな……」


 陸はショップを開き、スキル関係の商品を探した。


 しばらく一覧を送っていると、スキル付与ブックという商品が目に入った。


「これか?」


 開いてみると、スキル作成ブックとほとんど同じ形式の入力欄が現れる。


━━━━━━━━━━━━━━

【スキル付与ブック】


欲しいスキルの効果を入力してください。


入力された効果をもとに

必要ポイントを算出します。


効果が強力・広範囲・複雑になるほど、

必要ポイントは増加します。


作成したスキルは

他者へ付与できます。

━━━━━━━━━━━━━━


「お、これならいけるじゃん!」


 陸はすぐに入力欄へ指を伸ばした。


━━━━━━━━━━━━━━

【入力効果】


誘魔の香炉による

誘引効果を受けなくなる。

━━━━━━━━━━━━━━


 余計な効果は入れない。香炉にだけ効けば十分だ。


 決定すると、少しして結果が表示された。


━━━━━━━━━━━━━━

【作成予定スキル】


誘引遮断


必要ポイント:

1,000,000P


作成しますか?

━━━━━━━━━━━━━━


「これだけで100万!? 高っ!」


 思わず声が出た。


 それでも、家まで往復している時間の方が惜しい。


「……まあ、今は時間の方が大事だな。作る!」


 青白い光が入力欄から広がり、本の形をした画面を包んでいく。


━━━━━━━━━━━━━━

1,000,000Pを消費しました。


スキル『誘引遮断』を

作成しました。

━━━━━━━━━━━━━━


 光が集まり、陸の手元に小さな一冊の本が現れた。


「ほんとに本になるんだ」


「ほん!」


「エリナ、これ触ってみ」


「これ?」


 エリナが前脚を伸ばし、本の表紙へ触れる。


 瞬間、本が青白く光った。


「わっ!」


 エリナが前脚を引くより先に、本は光の粒へ変わって消えていく。その光がエリナの身体へ吸い込まれると、新しい表示が浮かんだ。


━━━━━━━━━━━━━━

エリナが

スキル『誘引遮断』を習得しました。

━━━━━━━━━━━━━━


「お、いけた!」


「エリナ、つよくなった?」


「んー……まあ、強くなった!」


「やった!」


 エリナが嬉しそうに翼を広げる。


「これで香炉も使えるな」


 陸は十二体を三方向へ分けた。


「盾持ちは三方向! 入口で止めて!」


 三つの入口それぞれに前衛を置き、中央側にはオークウォーロードとハイオーガ、弓や魔法を使う個体を残す。三十体そろった時ほど厚くはないが、遠くの十八体が戻るまでなら十分戦えそうだった。


 夜の中でも戦えるよう、持ってきた高出力ライトに加えて、さらにいくつか購入する。祭壇の周囲と三つの入口へ向けて設置すると、広場全体がかなり明るくなった。


 中央近くへ誘魔の香炉を置く。


「エリナ、変な感じしたらすぐ言ってな」


「うん!」


「じゃ、使うぞ!」


 誘魔の香炉を使用する。


 中から淡い煙のようなものがゆっくり立ち上り、夜の空気へ溶けていく。


 陸はエリナを見る。


「どう?」


「なんにもない!」


「よし!」


 陸は三方向の入口へ視線を向けた。


 すぐには何も来ない。祭壇の淡い光と、設置したライトだけが広場を照らしている。


 少しして、右側の入口の奥から何かが走る音が聞こえた。


「来た!」


 続いて正面。さらに左側からも、獣の鳴き声と重い足音が重なってくる。


 三方向の前衛が武器を構え、中央のオークウォーロードとハイオーガも動き出した。


 最初に飛び込んできたモンスターを前衛が受け止める。別の入口から続けて敵が現れても、中央の弓や魔法がすぐにそちらへ攻撃を飛ばした。


「お、ちゃんと回るじゃん!」


 オークウォーロードとハイオーガが加わると、押し込まれかけた場所もすぐに立て直される。


 それからも何度か敵の群れが三方向から集まってきたが、十二体の配置は崩れなかった。


 淡い煙を上げ続ける誘魔の香炉の周囲で、スケルトンたちは次の敵を待ち構えていた。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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