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第94話 祭壇でキャンプ!

 誘魔の香炉から上がる淡い煙の向こうでは、スケルトンたちの戦闘が続いていた。


 陸が所持アイテムを確認すると、魔石や素材が少しずつ増えている。祭壇を起動する前よりどれだけ増えているのかまではまだ分からないが、狩りを続けているだけでドロップ品もちゃんと集まっていた。


「アイテムも結構たまってきたな」


 陸は所持アイテムを閉じた。


 遠くへ出していた十八体はまだこちらへ戻っている途中だ。レベル上げも、すぐに結果が出るものではない。


 そこで腹が鳴った。


「……腹減ったな」


「ごはん?」


「そういや、もうだいぶ遅いもんな」


 陸はエリナを見る。


「エリナ、ごめんな。今日は家帰れないわ」


「かえらないの?」


「うん。ここでしばらくレベル上げしたいから」


 エリナは青白く光る祭壇と、三方向で戦っているスケルトンたちを順番に見た。


「ここでねる?」


「そのつもり」


「きゃんぷ?」


「そう。キャンプ」


「やる!」


 返事は一瞬だった。


「全然気にしてないじゃん」


「きゃんぷ、たのしい!」


「前も気に入ってたもんな」


 陸も笑った。


「じゃあ飯にするか!」


「ごはん!」


 所持アイテムから以前使った大きなテントを取り出し、少し離れた場所へ設置する。テーブルと座面の厚い椅子、携帯用の調理器具も並べ、テントの中には厚手のマットと寝具を出しておいた。


「エリナ、何食いたい?」


「おにく!」


「肉な。ほかは?」


「んー……」


 エリナはしばらく考えてから、陸を見上げた。


「リクがつくる!」


「俺が決めるの?」


「うん!」


「じゃあ……なんかキャンプっぽいの作るか」


 陸はショップを開き、必要な材料だけ買っていく。


 肉、麺、野菜。それにソースと、鉄板で使えそうな細かい材料をいくつか。


「今日は焼きそばにする!」


「やきそば?」


「肉いっぱい入れとくから」


「おにく!」


「そこしか聞いてないだろ」


 鉄板を熱し、先に肉を焼いていく。そこへ野菜と麺を加えて混ぜると、ソースの匂いが一気に広がった。


 エリナがテーブルの向こうからじっと鉄板を見ている。


「もういい?」


「まだ」


「もう?」


「まだ」


 少しして、陸は皿へ山盛りの焼きそばを取り分けた。エリナの分には肉を多めに乗せておく。


「ほら」


「いっぱい!」


「エリナのだけ肉増量」


「やった!」


 二人でテーブルにつき、食べ始める。


「おいしい!」


「よかった。俺も食お」


 陸も一口食べた。


「うまっ。外で食うと余計うまいな」


 エリナは麺を食べ、肉を食べ、また麺へ戻る。皿の上は見る見る減っていった。


「リク、これすき!」


「焼きそば?」


「うん!」


「じゃあまた作るか」


「やった!」


 食べ終わったあと、陸はショップをもう一度開いた。


「甘いのも欲しいんだろ?」


「ほしい!」


 買ったのはマシュマロと長い串だった。


「これ焼くぞ」


「やくの?」


「ちょっとだけな」


 携帯用の火の上へマシュマロを近づけ、ゆっくり回す。白かった表面に薄く焼き色がついていくのを、エリナがじっと見ていた。


「おお……」


「ほら、できた」


 少し冷ましてから渡すと、エリナが慎重にかじった。


「……あまい!」


「熱くない?」


「だいじょうぶ!」


 すぐに次のマシュマロへ視線が移る。


「もういっこ!」


「はいはい」


 何本か焼いて食べたあと、陸は椅子へ深く座った。


 少し離れた場所では、スケルトンたちが変わらず戦い続けている。武器のぶつかる音や魔法の弾ける音が時々聞こえてくるが、陸たちのところまで敵が抜けてくることはない。


「なんか、戦闘中とは思えないな」


「きゃんぷ!」


「そうだな」


 エリナは満足そうに椅子の横へ座り込んだ。


 食事が終わっても、まだ時間はある。


「このまま待ってるのも暇だな」


「ひま?」


「十八体戻ってくるのも、レベル上がるのも時間かかるし」


 陸はショップを開き、遊べそうなものを探した。


「せっかくだし、これ買うか」


 携帯ゲーム機と小型モニター、それに必要なケーブルや電源をまとめて購入する。テーブルの端へモニターを置き、ゲーム機をつなぐと画面が明るく点いた。


「げーむ!」


「今日はレースじゃないぞ」


「ちがうの?」


「二人でやるやつ」


 選んだのは、二人で協力してステージを進むゲームだった。


 陸とエリナで一体ずつキャラクターを動かし、離れた場所にあるスイッチを同時に押したり、片方が足場を動かしてもう片方を先へ進ませたりする。


「エリナ、そっち押して!」


「これ?」


「そう、それ!」


 エリナがスイッチを押すと、陸のキャラクターが乗っている足場が動いた。


「よし、いけた!」


「いけた!」


 次の場所では、今度は陸が先に進んでエリナの道を作る。


「こっち来て!」


「まって!」


「落ちる落ちる!」


「あー!」


 エリナのキャラクターが穴へ落ち、二人で笑った。


「もういっかい!」


「今度はゆっくりな」


 二回目はうまく渡りきった。


「できた!」


「ナイス!」


 エリナが嬉しそうに翼を広げる。


 レースゲームとは違って、どちらか一人だけ先へ行っても進めない。陸が道を作ればエリナが進み、エリナが仕掛けを動かせば陸が先へ行ける。


 しばらく遊んでいると、エリナも仕組みを覚えたらしく、陸が何も言う前に必要なスイッチへ向かうようになった。


「お、分かってるじゃん」


「こっち!」


「はいはい、今行く!」


 ステージを一つクリアすると、エリナがコントローラーを抱えたまま陸を見た。


「つぎ!」


「休憩なし?」


「つぎ!」


「元気だなあ」


 陸は笑いながら次のステージを選んだ。


 もし一人でここにいたら、いつ戻ってくるか分からない十八体を待ちながら、何度もステータスやサモンマップを開いていたかもしれない。


 今は隣でエリナがゲーム画面を見ながら、「こっち!」と陸を呼んでいる。


「エリナいてよかったわ」


「?」


「いや、なんでもない」


 陸は空いている手でエリナの頭を軽く撫でた。


「えへへ」


 エリナが嬉しそうに目を細める。


「リク、はやく!」


「今行くって!」


 またゲームへ戻り、二人でしばらく遊び続けた。


 何ステージか進んだところで、陸は一度コントローラーを置いた。


「ちょっと休憩」


「まだやる?」


「あとでな」


 飲み物を取ろうとして、ふと自分のステータスが気になった。


 画面を開く。


━━━━━━━━━━━━━━

佐藤陸

Lv.23

━━━━━━━━━━━━━━


「……え?」


 陸は表示を見直した。


「上がってる!」


「リク?」


「レベル、23になってる!」


「おお!」


 陸はもう一度Lv.23へ目を戻す。


「マジでいけるかも……!」

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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