第9話 モンスターハウス発見!
昼飯を食べ終えた陸は、空になった皿を流しへ置くと、すぐ玄関へ向かった。
「よし。もう一回行くか!」
ドアノブを下げる。
扉の向こうには、さっきまでと変わらない石造りの通路が続いていた。
そのまま一歩入って、陸は周囲を見回す。
「……あれ?」
誰もいない。
当然と言えば当然だ。スケルトンたちには、自分が戻ってくるまで狩りを続けるように言ってある。
「そういや、あいつらどうやって呼び戻すんだ?」
陸はその場で立ち止まった。
ダンジョンのどこにいるのかも分からない。自分から探しに行ったところで、この迷路の中で簡単に見つかるとも思えない。
「……戻ってこいって思ったら、伝わったりする?」
さっきも、「危なそうだったら無理するな」とか「できるだけ一緒に動け」みたいな細かい指示まで理解していた。
なら、これもいけるかもしれない。
陸は通路の奥を見ながら、少し意識を集中させる。
戻ってこい。
「……どうだ?」
何も起きない。数秒待つ。
「いや、分かんねえ!」
思わず笑う。
その場に突然ワープしてくるわけでもないらしい。
「まあ、伝わってるならそのうち来るか」
そう思ったところで、別のことが気になった。
「そういやポイント増えてたってことは……アイテムも増えてんのかな」
自分が家にいる間も、スケルトンたちはゴブリンを倒していた。
ポイントだけ入って、ドロップ品はダンジョンに置きっぱなしという可能性もある。
「ちょっと見てみるか」
ウィンドウを開き、アイテムの項目へ指を重ねる。
一覧が開いた。
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【所持アイテム】
薬草 ×6
ゴブリンの短剣 ×2
魔石 ×4
ポーション ×1
鉄の剣 ×1
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「増えてる!」
陸は一気に画面へ顔を近づけた。
「短剣なんて拾ってないし、魔石もポーションも見たことないぞ!」
しかも鉄の剣まで一振りある。大きなスケルトンには、さっき拾った鉄の剣を持たせたままだ。
「ってことは、これも別の一本か!」
どれも自分では拾っていない。
「スケルトンが拾ったやつも、俺のところに入ってんの!?」
ポイントだけじゃない。自分が家にいても、ドロップ品まで勝手に集まってくる。
陸は一覧をもう一度見る。
「……俺が一緒にいた時より増えてない?」
薬草も短剣も魔石もある。自分は昼飯を食べていただけなのに、向こうではかなり狩っていたらしい。
「こいつらだけでやってた方が効率よくない?」
数秒考えて、少し笑う。
「……俺、いらなくね?」
すぐに首を振った。
「いや、まあいいか! 勝手に増えてくれるなら最高だろ!」
すぐ魔石の文字へ指を重ねる。
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魔石
ランク:F
モンスターから稀に得られる石。
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「説明それだけ!?」
思わず笑いながら、もう一度魔石の文字へ触れる。
次の瞬間、手のひらの上に小さな石が現れた。
「おお!」
親指の先くらいの大きさ。薄く青みがかった半透明の石で、内部に小さな光が閉じ込められているみたいに見える。
「うわ、綺麗だな」
顔の近くまで持ち上げ、角度を変えて眺める。
光の当たり方で、中が淡くきらきらしていた。
「これ何に使うんだろ」
売るのか。何かを作るのか。それとも別の使い道があるのか。
「まあ、あとで調べればいいか」
魔石をもう一度システムへ戻そうとした、その時だった。
カツ。
遠くから、硬いものが床を叩く音がした。
「ん?」
陸は顔を上げる。
カツ、カツ、カツ。
音が増えていく。
「……何?」
通路の奥。曲がり角の向こうから、いくつもの足音が近づいてくる。
陸は思わず一歩下がった。
「え、ちょっと待って。何か来てない?」
次の瞬間、曲がり角から白い頭蓋骨がぬっと出た。
「うわっ!」
反射的に身体が跳ねる。
出てきたのは、鉄の剣を持った大きなスケルトンだった。
その後ろから、小さなゴブリンスケルトンたちがぞろぞろ続いてくる。
「……お前らかよ!」
力が抜ける。
「普通にビビったわ!」
大きなスケルトンは何事もなかったみたいに陸の前まで来ると、そこで止まった。
後ろのゴブリンスケルトンたちも次々に並ぶ。
「マジで戻ってきたんだ」
陸はすぐ全体を見回した。
大きなスケルトンが一体。ゴブリンスケルトンが七体。
「よし、八体いるな」
誰か欠けている様子もない。
「ちゃんと全員戻ってきた!」
並んでいる姿を見ると、前よりかなり賑やかだ。
「そうだ。短剣あったな」
陸はさっき増えていたゴブリンの短剣を二本取り出すと、近くにいた二体のゴブリンスケルトンへ一本ずつ渡した。
「ほら。お前らも武器!」
二体は短剣を受け取ると、そのまま握って構える。
「おお、いいじゃん!」
大きなスケルトンだけだった武器持ちが、これで三体になった。
「もっと装備も集めたいな」
陸は八体を見回して、口元を緩めた。
「よし。もっと増やそうぜ!」
「このまま百体くらいまでいったら、もう完全に軍隊だろ!」
もちろん返事はない。
それでも八体のスケルトンを見ていると、本当にできそうな気がしてくる。
「よし。探検再開!」
陸はスケルトンたちを連れて、ダンジョンの奥へ歩き出した。
今度はさっきまで通っていない道を選ぶ。
曲がり角を抜ける。分かれ道では、帰り道を忘れないように周囲を確認してから右へ進む。
行き止まりに当たれば引き返して、また別の通路へ進む。
「まだ全然広さ分かんないな、ここ」
同じような石壁がどこまでも続いている。スケルトンたちが後ろをぞろぞろついてくるせいで、一人で歩いていた最初の頃とはだいぶ雰囲気が違った。
「八体でも結構いるように見えるな」
振り返る。
一番前に鉄の剣を持ったスケルトン。その後ろに、小さなスケルトンたち。
「百体いたら通路埋まるんじゃね?」
想像して、少し笑う。
それでも見てみたい。
この狭い通路を、骨の軍団が延々と歩いていくところ。
「やっぱ増やせるだけ増やしたいな」
そのまましばらく進んだ時だった。
「……ん?」
陸の足が止まる。
少し先の右側に、今までの通路とは違う大きな開口部があった。
上部が丸くなったアーチ状で、扉はない。その向こうに、通路よりずっと広い空間が続いている。
「部屋?」
陸はそのまま近づいて、中を覗き込んだ。
そして。
「……一、二、三……」
緑色の小さな影が、そこら中にいる。
ゴブリン。
一体や二体じゃない。
「七……八……いや、もっといる?」
思わず声が小さくなる。
部屋の中にいたゴブリンたちが、一斉にこちらを向いた。
「うわ、めっちゃいるじゃん!」
その瞬間。
陸の目の前に、青白いウィンドウが浮かんだ。
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【モンスターハウス】
内部のモンスターをすべて討伐してください。
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「モンスターハウス!?」
陸はウィンドウと、その向こうにいる大量のゴブリンを交互に見る。
そしてすぐ、後ろに並ぶ八体のスケルトンを振り返った。
「……これ、集団戦じゃん!」
口元が大きく上がった。
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