第89話 アイアンゴーレム!
正面の通路を進んでいくと、やがて道は左右へ折れながら城の奥へ続いていった。途中で何度かモンスターの群れに遭遇したが、オークウォーロードとハイオーガを先頭にした軍団が押し切っていく。
しばらくすると、前方から明るい光が差し込んでくる。
「外?」
アーチを抜けると、そこは高い城壁と建物に囲まれた広い中庭だった。石畳の中央に、ひときわ大きな影が立っている。
「なんだあれ!」
「おっきい……」
人型ではあるが、全身が黒っぽい鉄でできていた。太い腕と脚。肩も胸も分厚く、頭部まで金属の塊を削り出したような形をしている。
その周囲には大柄なゴブリンやウルフが散らばり、上空にはガーゴイルも飛んでいた。陸はエリナを後ろへ下がらせると、前へ目を戻した。
「まず周りから!」
陸の声でスケルトンたちが一斉に動く。オークウォーロードの大斧がゴブリンを弾き飛ばし、ハイオーガの大型棍棒がウルフを石畳へ叩きつける。矢と魔法が後ろから重なり、上空では味方のガーゴイルたちが敵へぶつかっていった。
鉄の巨体は、その間もゆっくりとこちらへ身体を向けるだけだった。
周囲のモンスターを片付けると、陸は改めて巨体を見る。
「こいつがボスか?」
だが、いつものようなボス戦の表示は出ない。
「……違うのか?」
陸は鑑定を使った。
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アイアンゴーレム
ランク:C
Lv.33
HP 380
MP 60
筋力 188
耐久 310
敏捷 18
賢さ 20
【スキル】
アイアンボディ
グラウンドスマッシュ
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「耐久310!?」
陸はもう一度アイアンゴーレムを見た。
「行け!」
オークウォーロードとハイオーガが同時に前へ出た。大斧がアイアンゴーレムの胴へ叩き込まれ、ガァンッ! と重い金属音が響く。反対側から大型棍棒も叩きつけられるが、鉄の巨体はほとんど動かない。
「硬っ!」
前衛が続けて斬り込み、後ろから矢と魔法が飛ぶ。剣は浅く止まり、矢は金属の身体に弾かれる。魔法が炸裂しても、黒い表面へわずかな傷が増えるだけだった。
陸はHPを確認した。
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アイアンゴーレム
HP 374/380
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「6しか減ってない!?」
アイアンゴーレムが右腕を振り上げる。
「避けろ!」
動きは遅い。前にいたスケルトンたちが左右へ散ると、振り下ろされた拳が石畳へぶつかり、鈍い衝撃が足元まで響いた。
「遅いなら、まだやれる!」
陸は鼓舞の杖を取り出し、高く掲げた。先端の青い石が強く光り、広がった光がスケルトンたちを包む。骨の身体へ薄い赤色の光がまとわりついた。
「一気に行くぞ!」
強化された軍団がもう一度押し寄せる。オークウォーロードが大斧を振りかぶった。
「ヘヴィブレイク!」
大斧が鉄の胴へ叩き込まれ、甲高い金属音が中庭へ響く。刃が表面を削ったが、アイアンゴーレムはその場からほとんど動かなかった。
すぐ横ではハイオーガが大型棍棒を大きく引き、棍棒へ青白い光をまとわせる。
「ヘヴィスマッシュ!」
大型棍棒が横から叩き込まれる。Dランクのオークを吹き飛ばし、その後ろの敵まで巻き込んだ一撃。それを受けても、アイアンゴーレムはわずかに足をずらしただけだった。
「マジかよ!」
Dランクまで育った個体たちも次々に攻撃スキルを使う。前から剣と棍棒、左右から高速組、後ろから矢と魔法。攻撃が途切れず重なっていく。
陸はもう一度HPを見る。
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アイアンゴーレム
HP 352/380
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「まだこれだけ!?」
鼓舞の杖で強化して、Dランク勢のスキルまで重ねた。オークウォーロードとハイオーガもCランクの攻撃スキルを使っている。それでも、削れたのはわずかだった。
「フュージョン使うか……?」
陸の視線がスキル欄へ戻り、アイアンボディで止まった。
以前、オーガのアイアンガードを使わせてからフュージョンを狙ったことがある。ここで先にフュージョンを使って、防御スキルで止められたら、その後に何かあっても大きな手札が残らない。
「……いや、まだだ」
その時、アイアンゴーレムが両腕を高く持ち上げた。
「なんか来る!」
巨体が大きく沈み込む。
「離れろ!」
次の瞬間、両腕が石畳へ叩きつけられた。
ドゴォンッ!!!
地面を走った衝撃が円状に広がり、近くにいた前衛たちをまとめて浮かせる。盾を持った個体まで大きく弾き飛ばされ、石畳を転がった。ハイオーガも数歩押し戻され、オークウォーロードが大斧を地面へついて踏みとどまる。
「グラウンドスマッシュか!」
倒れた前衛へ回復魔法が飛ぶ。だが、その間にもアイアンゴーレムはゆっくりと前へ出た。大きな拳が振られるたび、受けたスケルトンが重い音と一緒に後ろへ飛ばされる。
「くっ……!」
回復した個体を戻せば、別の個体が削られる。こちらは何十回も攻撃を重ねているのに、向こうは一発ごとの被害が大きい。
陸は鼓舞の杖を握ったまま、前の戦況へ目を走らせた。
「これ、このままやってたらまずい……」
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