第88話 巨大な城へ!
装備作りを終えたのは、まだ昼を少し過ぎた頃だった。
必要な装備をまとめて作業を切り上げると、陸はエリナのところへ向かった。
「よし、まだ時間あるじゃん!」
「おしろ?」
「おう! あの城行くぞ!」
準備を済ませ、陸はエリナと一緒に階層転移で第11階層へ移動した。
草原へ出ると、入口付近で待機させていたスケルトンたちが陸の周りへ集まってくる。偵察に出していた部隊も、今はここへ戻してある。城の位置はもう分かっているし、Dランクのモンスターが出る第11階層で少数の部隊だけを走らせ続ける必要もない。
「まず装備替えるか!」
持ってきた新しい装備を順番に渡していく。
オークウォーロードには、午前中に作った大斧。今までの斧から持ち替えると、大きくなった身体にもようやく武器の大きさが合った。
「おお、こっちの方が合う!」
ハイオーガも大型棍棒へ交換する。ほかの進化した個体たちも、剣や盾、弓、杖を新しい物へ替えていった。
装備を揃え終えると、陸はホバーバイクを取り出した。
「エリナ、乗って!」
「のる!」
エリナを後ろへ乗せ、車体を低く浮かせる。陸はサモンマップを開いて城の方向を確かめると、そのまま草原を走り出した。スケルトン軍団も後ろからついてくる。
低い丘を越え、途中で現れたモンスターを倒しながら進んでいく。
やがて、草原の先に暗い灰色の輪郭が見えてきた。
「見えてきた!」
以前は遠くから眺めただけだった城が、近づくたびに大きくなっていく。
最初に目についたのは、草原を横切るように続く高い城壁だった。暗い灰色の大きな石が隙間なく積まれ、その途中には何本もの塔が立っている。城壁のさらに奥には、それより高い建物が重なり、その中央にはひときわ大きな主塔がそびえていた。
「でかっ! 遠くから見た時より全然でかいじゃん!」
「おっきい!」
近づくほど、城壁の高さも正面の門もおかしな大きさだと分かる。ハイオーガやオークウォーロードが何体並んでも余裕で通れそうな巨大な門。その両側にある分厚い扉は、城壁へ沿うように開いたままになっていた。
城壁の上では、何体かのモンスターがゆっくりと行き来している。上端の内側には、何体も並んで歩けるほどの幅があるようだった。
「上にもいるのか」
陸はホバーバイクの速度を落とし、正門の向こうへ目を凝らした。中からすぐに何かが飛び出してくる様子はない。
「よし、入ろう!」
門の手前でホバーバイクから降り、オークウォーロードとハイオーガを前へ出す。陸とエリナもスケルトンたちの間へ入り、そのまま正門をくぐった。
その先にあったのは建物の中ではなく、城壁に囲まれた広大な石畳の空間だった。
「うわ、広っ!」
左右には高い城壁が伸び、正面のかなり先には巨大な城本体が構えている。人間が何百人集まっても余裕がありそうな広さだが、そこに人の姿は一つもない。
代わりに、石畳のあちこちでモンスターが動いていた。
大柄なゴブリンとウルフの群れ。城壁の上にもガーゴイルが数体いる。
こちらに気づいたゴブリンたちが武器を構え、ウルフが一斉に駆け出した。少し遅れて、城壁の上にいたガーゴイルまで翼を広げる。
「いけ!」
陸の前方からオークウォーロードが飛び出した。
新しい大斧が横薙ぎに振り抜かれ、先頭のゴブリンが一撃で弾き飛ばされる。隣ではハイオーガが大型棍棒を振り下ろし、飛びかかってきたウルフを石畳へ叩きつけた。
「おおっ! いいじゃん!」
その二体の後ろを、盾を持った前衛たちが押し上げる。後衛から矢と魔法が飛び、上から降りてきたガーゴイルには味方のガーゴイルたちが飛び上がってぶつかった。
敵の数は多い。それでも、進化と装備更新を終えた軍団が止められるほどではなかった。
陸たちは石畳を進みながら敵を押し返し、やがて広場の奥までたどり着いた。
そこには、城本体へ続く巨大な入口があった。
「まだこっから中なんだよな……」
門をくぐった時点でも十分に城の中へ入った感覚があったのに、目の前にはさらに大きな建物が残っている。
陸は一度、その後ろに広がる外郭を振り返った。
「これ、思ってたよりずっと広い!」
エリナも隣で城を見上げている。
「リク、まだいく?」
「行く!」
陸はすぐに正面へ向き直った。
城本体の両開きの扉も開いていた。
中へ入ると、外の明るい草原とは空気が一気に変わった。
高い石造りの天井。何人も並んで歩けるほど幅のある廊下。左右には太い石柱が並び、その先には大きなアーチがいくつも続いている。
「中まででかい!」
スケルトンたちが進むたび、いくつもの足音が石の床から高い天井へ響いていく。ハイオーガが歩いても廊下にはまだ十分な余裕があり、外から見た城の大きさがそのまま内部まで続いていた。
少し進むと、天井がさらに高くなった大広間へ出た。奥には二つに分かれた幅広い階段が伸び、その間にはさらに先へ続く大きなアーチが口を開けている。
陸は歩きながら左右へ目を向けた。
これだけ大きな城なのに、壁際にも広間にも家具らしい物がほとんどない。長い廊下を通ってきても、机や椅子はもちろん、人が暮らしていたような物は見当たらなかった。
「城っぽいけど、住む場所って感じじゃないな」
エリナが柱のそばまで近づき、首を上へ向ける。
「たかい!」
「ほんとだ。全部でかすぎる」
陸は大広間の奥へ目を向けた。階段の上にも、その向こうのアーチにも道が続いている。
「どこまであるんだ、これ」
少し迷ってから、まずは正面の通路へ前衛を進ませる。
陸もエリナと一緒にその後を追い、広い石の廊下へスケルトンたちの足音が次々に響いていった。
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