第83話 草原でピクニック!
第11階層の草原を、陸はエリナと戦闘用のスケルトンたちを連れて歩いていた。
低い丘を越えると、平らだった草原の先に緩やかな斜面が続いている。その向こうには木が集まった場所も見え、さらに別の方向には岩肌の出た小さな山まであった。
「ほんとにいろいろあるな」
陸は歩きながらサモンマップを開いた。
送り出した五組は、それぞれ別の方向へ進んでいる。地図に表示されているのは陸たちやスケルトンが実際に通った範囲だけで、その先にはまだ大きな空白が残っていた。
陸は五組の位置を確認してから、そのまま探索を続ける。
途中では何度かモンスターにも遭遇した。
身体の大きなゴブリンや、毛並みの濃いウルフ。どれも第11階層へ入る前に見てきた同種より一回りごつく、鑑定すればDランク、Lv.20を超えている。
戦闘用のスケルトンたちが囲めば苦戦するほどではない。倒したモンスターはそのままスケルトンラッシュでスケルトン化し、順番にストックへ戻していった。
さらに丘を越えたところで、頭上から大きな羽音が聞こえた。
「ん?」
陸が顔を上げる。
空を四つの影が旋回していた。
人に近い身体つきだが、背中には大きな翼が生えている。頭には短い角があり、長い腕の先には鋭い爪が伸びていた。
「ガーゴイル!?」
四体が一斉に翼を畳み、こちらへ降下してくる。
「そんなのもいるのか!」
陸が声を上げながら一体へ鑑定を使った。
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ガーゴイル
ランク:D
Lv.20
HP 176
MP 32
筋力 76
耐久 71
敏捷 58
賢さ 24
【スキル】
レンドクロー
ウイングガード
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ガーゴイルの一体が腕を振り上げる。鋭い爪が淡く光り、そのままスケルトンナイトへ振り下ろされた。
スケルトンナイトが剣で受け止めると、別のガーゴイルへ矢と魔法が飛ぶ。だが、そいつは大きな翼を身体の前へ畳み、攻撃を受け止めた。
「翼で防ぐのか!」
ガーゴイルが翼を開いたところへシャドウウルフが回り込み、さらに上からソニックバットスケルトンが襲いかかる。
四体は空から位置を変えながら爪で攻め、攻撃を受ける時には翼で身体を守る。それでも、今の軍団を崩すほどではなかった。
少しして、最後の一体が草の上へ落ちる。
「よし! こいつらも欲しい!」
陸は倒れた四体へ順番にスケルトンラッシュを使った。召喚枠は埋まっているため、スケルトン化した四体はそのままストックへ入る。
陸は戦闘用のスケルトンを四体ストックへ戻して枠を空け、ガーゴイルスケルトンを呼び出した。
青白い光の中から、翼の骨格を背中に広げた四体が現れる。頭骨には角が残り、腕の先には長い骨の爪が伸びていた。
「おお、ちゃんと飛べそうじゃん!」
四体が翼を広げて地面から浮き上がるのを見届けると、陸はガーゴイルスケルトンを再びストックへ戻した。
「飛べるやつ増えるのいいな」
「リク、あっち!」
少し先を飛んでいたエリナが、遠くへ顔を向けている。
「なに?」
陸も同じ方向を見る。
いくつかの丘のさらに向こう。かなり離れた場所に、草原や木々とは違う輪郭が見えた。
石造りらしい大きな建物が、高い場所に建っている。距離があるため細かな形までは分からないが、中央には大きな建物があり、その周囲にも壁のようなものが続いていた。
「……あれ、城じゃね?」
陸は目を細めた。
今いる場所からでも見えるほど大きい。
「行ってみる?」
「いや、今はやめとこ。見るからにやばそうだし」
まだ第11階層へ入ったばかりだ。通常モンスターだけでもDランクが続いているのに、あそこへそのまま近づく気にはなれなかった。
「場所だけ覚えとこう」
陸は城らしき建物の方向を確認し、再び歩き出した。
それからもしばらく草原を進んだ。
やがて太陽が頭上近くまで上がった頃、隣を歩いていたエリナが陸を見上げる。
「リク、おなかすいた!」
「あー……俺も腹減ってきた」
陸は周囲を見る。
少し離れたところに緩やかな丘があり、その上は草が短く、座るにはちょうどよさそうだった。
「ここで昼飯にするか」
「たべる!」
丘の上まで移動すると、陸はショップを開いた。レジャーシートとサンドイッチ、飲み物、それからエリナが食べられそうなものをいくつか買う。
青いシートを草の上へ広げ、陸はその上へ座った。
「なんか本当にピクニックじゃん」
目の前には草原が広がり、風が通るたびに草が波のように揺れている。少し離れたところにはスケルトンたちが立ち、そのさらに向こうをエリナが食べ物をくわえたまま歩いていた。
「エリナ、それうまい?」
「おいしい!」
「じゃあ俺も食うか」
サンドイッチを一つ手に取り、飲み物の蓋を開ける。
洞窟の中で休憩していた時とはまるで違った。
日差しは暖かく、風が吹くとちょうどいい。陸は途中でシートへ手をつき、そのまま少し身体を後ろへ倒した。
「これ、昼飯食うだけならダンジョンって感じしないな」
エリナは食べ終えると、シートの端でごろりと横になった。
陸も急ぐことなく残りを食べ、しばらく草原を眺めて過ごした。
昼食を終えて片づけを始めた頃、陸はサモンマップを開いた。
「あれ?」
五組のうち一組だけが、こちらへ向かって戻ってきている。
陸が立ち上がってその方向を見ると、しばらくして丘の向こうから二体のナイトウルフが姿を現した。その上を一体のエコーバットが飛んでいる。
三体はまっすぐ陸のところまで戻ってきた。
「もしかして、見つけた?」
二体のナイトウルフが陸へ身体を向け、そのまま来た方向を振り返る。
「お、案内してくれるのか。行ってみようぜ」
「バイク?」
「この広さならそっちの方が早いな」
陸はホバーバイクを取り出した。
黒と銀の車体が青白い光の中から現れる。陸が座席へ跨がると、エリナも前へ乗せた。
「じゃあ頼む!」
ナイトウルフ二体が草を蹴った。
ただし本気では走らず、陸たちに合わせて速度を落としている。その後ろをホバーバイクと戦闘用のスケルトンたちがついていき、エコーバットが上空を飛ぶ。
草原をいくつかの丘を越えながら進み、途中から地面に岩が混じり始めた。
やがて、先を走っていたナイトウルフたちが速度を落とす。
「ここ?」
陸もホバーバイクを止めた。
目の前には、草原の中から低い岩山が盛り上がっていた。
ただ、その中央部分だけが大きく削り取られたように窪んでいる。
陸はホバーバイクを降り、エリナと一緒に中へ入った。
「広っ!」
奥には平らな地面が広がっていた。
左右と正面は高い岩肌に囲まれている。むき出しになった岩壁には大きな段差や削れた跡があり、その間にスケルトンたちが十分動き回れるだけの広さがある。
陸は奥まで少し歩いてから振り返った。
草原へつながっているのは、今通ってきた場所だけだった。
しかも、そこだけは左右の岩壁が近く、通れる幅がぐっと狭くなっている。
「……これ、めっちゃいいじゃん」
陸は狭い入口と、その奥に広がる空間を交互に見た。
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