第60話 エリナとゲーム!
陸がゲームルームの扉を開けると、エリナがその場で足を止めた。
「わぁ……!」
部屋の中には大きなモニターがいくつも並び、デスクの上にはゲーミングPC。その横にはゲーム機が置かれ、少し離れたところには二人で座れるソファもある。
エリナはきょろきょろと部屋の中を見回した。
「ここ、なにするところ?」
「ゲームする部屋」
「げーむ……」
「まあ見てな」
陸はゲーム機の電源を入れた。
モニターに画面が映り、機器の周りにも小さな光が灯る。さっきまで静かだった部屋が一気にゲームらしい雰囲気へ変わった。
「わぁっ!」
エリナがすぐモニターの前まで近づく。
「きれい!」
「だろ?」
少し得意になりながら、陸はコントローラーをいくつか取り出した。
「エリナ、どれ使う?」
「どれ?」
「好きなの選んでいいよ」
色や模様の違うものを並べると、エリナは一つずつ覗き込んでいく。
少し迷ったあと、小さな模様が入った明るい色のコントローラーへ前脚を伸ばした。
「これ!」
「それな。じゃあ俺こっち」
陸も一つ取り、エリナと並んでソファへ座る。
エリナはコントローラーを前脚で抱えるように持ち、不思議そうにボタンを見ていた。
「ここ押せる?」
陸が指さすと、エリナが前脚の先でボタンを押す。
画面の表示が動いた。
「お、普通に押せんじゃん」
「うごいた!」
「そしたら、こっちで曲がる。こっちが進むやつ」
いくつか操作を教えてから、陸は二人で遊べるレースゲームを選んだ。
画面には色とりどりのカートとコースが並んでいる。
「この車みたいなの動かして、先にゴールした方が勝ち」
「かったらいいの?」
「そうそう」
「わかった!」
分かっているのか少し怪しかったが、エリナはもう画面へ釘付けになっていた。
レースが始まる。
「行け!」
陸のカートが飛び出し、その横でエリナのカートも動き出す。
「おお、ちゃんと走って――」
次の瞬間、エリナのカートが勢いよく壁へぶつかった。
「そっちじゃないそっちじゃない!」
「まがれない!」
「ここ! こっち動かす!」
「こう?」
カートが壁から離れたと思ったら、今度は反対側へ大きく曲がって別の壁へ突っ込む。
「なんで!」
「動かしすぎ!」
陸は笑いながら先へ進んだ。後ろではエリナが何度も壁へぶつかり、そのたびに前脚を忙しく動かしている。
「むずかしい!」
「最初はそんなもんだって」
一周目を終える頃には、陸はかなり先へ進んでいた。それでもエリナは諦めず、少しずつ真っ直ぐ走れるようになっていく。
「お、今いい感じ」
「できた!」
「そのままそのまま!」
次のカーブも、今度は壁へぶつからずに曲がった。
「できた!」
「おお!」
エリナの翼が嬉しそうに少し広がる。
結局、最初のレースは陸の圧勝だった。
「かった!」
「いや、俺がな」
「……まけた?」
「負けた」
エリナは画面の順位をじっと見たあと、すぐに顔を上げる。
「もういっかい!」
「お、やる気じゃん」
二戦目が始まると、今度は最初からかなり真っ直ぐ走れていた。
「さっきより全然うまいな」
「みてて!」
エリナのカートがカーブを抜け、途中でコース上のアイテムを取る。画面に攻撃用のアイテムが表示された。
「それ使えるぞ」
「これ?」
エリナがボタンを押した瞬間、陸のカートが大きく弾かれる。
「うわっ!」
「わぁ!」
エリナが楽しそうに声を上げる。
「今の俺に当てたのかよ!」
「いけー!」
「急に元気だな!」
陸が追いかけるが、さっきまで壁にぶつかっていたエリナは、もうかなり普通にコースを走っていた。
最後の直線で陸が追いつきかけたところで、エリナが残していたアイテムを使う。陸のカートが止まり、その横をエリナが抜けていった。
「ちょっ!」
「やった!」
そのままゴールへ飛び込む。
「かった!」
エリナが陸の方を向き、琥珀色の目を輝かせる。
「マジかよ……」
陸は自分の順位を見てから、楽しそうにしているエリナを見た。
「もう一回やる?」
「やる!」
返事はさっきよりずっと早かった。
三戦目、四戦目と続けるうちに、エリナはどんどん操作に慣れていった。
勝てば嬉しそうに翼を動かし、負ければすぐ次をやりたがる。陸が先へ出れば必死に追いかけ、追い抜けば声を上げて喜んだ。
気づけば、洞窟で泣いていた時の面影はほとんどない。
「ゲーム、面白い?」
「おもしろい!」
「よかった」
陸が笑うと、エリナはコントローラーを抱えたまま画面へ向き直った。
「つぎ!」
「まだやるの?」
「やる!」
「元気だなあ」
陸も自分のコントローラーを持ち直した。
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