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第6話 初めてのレベルアップ!

 鉄の剣を持ったスケルトンを先頭に、陸はさらに奥へ進んだ。


 さっきまで素手だったのに、剣を持っただけで見た目が一気にそれっぽくなっている。歩いているだけでも、なんとなく頼もしさが増した気がする。


「次のやつ、早く出てこないかな」


 さっきの素振りを見たせいで、実戦でどうなるのか気になって仕方がない。


 曲がり角を一つ抜けたところで、陸の足が止まった。


「お」


 少し先に、ゴブリンがいる。


 しかも一体じゃない。


「二体いるじゃん!」


 今まで会ったゴブリンは全部一体ずつだった。二体並んでいるだけなのに、ちょっとだけ新鮮に見える。


 向こうもこちらに気づき、二体揃って身体を向けた。


 陸はすぐ、鉄の剣を持ったスケルトンを見る。


「よし。ちょうどいいな」


 指を二体のゴブリンへ向ける。


「今度はその剣使ってみようぜ! 二体とも頼む!」


 スケルトンが駆け出した。


「おお、行け!」


 一体目のゴブリンが身構える。けれど、遅い。


 スケルトンはほとんど速度を落とさず、その横を抜けるように剣を振った。


 スンッ。


 あまりにも軽い音だった。


 次の瞬間、ゴブリンの首が床へ落ちる。


「えっ」


 陸が声を出した時には、スケルトンはもう二体目へ向かっていた。


 二体目のゴブリンが慌てて腕を上げる。スケルトンが一歩踏み込み、今度は横薙ぎに剣を振る。


 スンッ。


 また首が飛んだ。


 二体のゴブリンが、ほとんど同時に床へ倒れる。


「……終わった?」


 陸は数秒その場に立ってから、一気に顔を輝かせた。


「いや、かっけえええ!」


 すぐスケルトンのところまで駆け寄る。


「お前やっぱ剣めちゃくちゃ上手いじゃん! 何その戦い方!」


 鉄の剣を持ったスケルトンは、何事もなかったみたいに立っている。


「素手でも強かったけど、剣持ったら完全に別物だな!」


 その瞬間、目の前にウィンドウが浮かんだ。


━━━━━━━━━━━━━━

レベルが上がりました。


Lv.1 → Lv.2

━━━━━━━━━━━━━━


「お、レベル上がった!」


 陸はすぐウィンドウへ顔を近づける。


「きたきたきた!」


 そのままステータスを開いた。


━━━━━━━━━━━━━━

佐藤陸

Lv.2


HP  12

MP  15

筋力  8

耐久  6

敏捷  7

賢さ 11


【スキル】

・スケルトンラッシュ


【称号】

・なし

━━━━━━━━━━━━━━


「おお、ちゃんと上がってる!」


 右手を握ったり開いたりしてみる。腕も軽く振ってみた。


「……いや、分かんねえ!」


 数字は増えている。でも、急に身体が軽くなったとか、力が湧いてきたとか、そういう実感は特になかった。


 そこで、陸の視線が倒れている二体のゴブリンへ落ちる。


「……あれ?」


 今回、陸は何もしていない。剣を持ったスケルトンが二体とも倒した。それなのに、自分のレベルが上がった。


「ってことは……」


 ゆっくりスケルトンを見る。


「お前らが倒しても、俺に経験値入るの?」


 当然、返事はない。でも状況を見る限り、そうとしか思えない。


「え、めっちゃいいじゃん!」


 陸の顔が一気に緩む。


「俺、見てるだけでレベル上がるってこと!?」


 そこまで言って、倒れた二体のゴブリンを思い出す。


「あ、そうだ。こいつらも増やしとこ!」


 二体へ手を向ける。


「スケルトンラッシュ!」


 青白い光が二体のゴブリンを包む。少しして、二体のゴブリンスケルトンが立ち上がった。


「よし、五体!」


 大きなスケルトンが一体。ゴブリンスケルトンが四体。


 さっきまで三体だったのに、急に後ろが賑やかになった。


「おお。ちょっと軍団っぽくなってきたな!」


 陸は五体を見回して、満足そうに頷いた。


「よし、この調子でいこうぜ!」


 そのあとも、何度かゴブリンと遭遇した。一体ならゴブリンスケルトンたちだけでも十分だったし、複数いても鉄の剣を持ったスケルトンがあっという間に片づけていく。


 倒したゴブリンを増やして、また進む。そうしてしばらく歩き回っているうちに、陸の足が少し重くなってきた。


「……さすがに疲れたな」


 壁にもたれながら息を吐く。自分ではほとんど戦っていない。それでも、迷路みたいな通路をずっと歩き続けていれば普通に疲れる。


「一回帰るか」


 来た道を戻り、しばらくして自分の部屋へ繋がる玄関扉まで戻ってきた。


 石造りの通路の途中に、見慣れた玄関扉だけが立っている。


「やっぱ何回見ても変だな、これ」


 ドアノブへ手をかける。


 そこで、ふと後ろを振り返った。


 スケルトンたちが並んでいる。鉄の剣を持ったスケルトン。その周りに、小さなゴブリンスケルトンたち。


「……でも、もったいないよな」


 陸の手がドアノブから離れる。


「俺が家で休んでる間、お前らもずっと何もしないってことだろ?」


 もちろん返事はない。


「それ、めっちゃもったいなくない?」


 少し考える。スケルトンたちは命令すれば戦う。ちゃんとついてくる。しかも、こいつらが倒した敵でも自分に経験値が入る。


 だったら。


「……お前らだけで狩り続けたりできる?」


 陸は一番大きなスケルトンを見る。


「俺が家に戻ってても、ここでゴブリン倒し続けるとか」


 数秒、何も起きない。


「いや、さすがに無理か?」


 そう言いかけた時だった。


 スケルトンが右手を上げる。


 親指を立てた。


 グッ。


「……え?」


 陸が固まる。


 スケルトンは親指を立てたまま動かない。


「え、いけんの!?」


 陸は一気にスケルトンへ近づいた。


「ていうかお前、そんな意思疎通できたの!?」


 今まで喋らないから、命令に従うだけだと思っていた。でも少なくとも、今の質問の意味は分かっている。


「マジかよ! じゃあ、俺が戻ってくるまで、この辺のゴブリン倒しといて!」


 少し考えて付け足す。


「危なそうだったら無理すんなよ! あと、できるだけみんな一緒に動いて!」


 スケルトンがもう一度、親指を立てた。


「うわ、便利すぎる!」


 陸は笑いながら玄関扉を開く。


 その向こうには、いつもの自分の部屋。


 片足を部屋へ入れてから、もう一度振り返る。


 スケルトンたちはダンジョンの奥へ歩き出していた。


 先頭には鉄の剣を持ったスケルトン。その後ろを、ゴブリンスケルトンたちがついていく。


 その背中を見て、陸の口元がゆっくり上がった。


「……これ、俺が家にいてもポイント増えるんじゃね?」


 数秒後。


「いや、最高じゃん!」


 陸は笑いながら、自分の部屋へ戻った。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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