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第57話 小さなドラゴン!?

 陸は足元に転がっている魔物へ目を向けた。


「よし。こいつらも全部残しとくか」


 近くのゴブリンソルジャーへ手を向ける。


「スケルトンラッシュ!」


 青白い光が死体を包み、少ししてゴブリンソルジャースケルトンが立ち上がる。陸はすぐ管理画面からその個体を選び、ストックへ戻した。青白い光に包まれた骨の身体が、そのまま姿を消す。


「おお、いいね!」


 次の死体へ向かおうとして、陸は周囲を見回した。


「……あれ?」


 さっきまで戦闘を眺めていた場所には何体も魔物が倒れていたはずなのに、思っていたより少ない。


「もっといなかったっけ?」


 首を傾げていると、少し離れたところに転がっていたケイブリザードの身体がふっと消えた。


「えっ」


 陸は何もなくなった岩場を見つめる。


「時間経ったら消えるのか?」


 今まで倒した場所に長く居続けることがなかったから、気づかなかった。


「じゃあ、消える前にやっとかないとな」


 残っている死体を一体ずつスケルトン化し、そのままストックへ入れていく。


 その間にも香炉の効果は続いていた。細い通路の奥から足音が近づき、前衛が受け止める。後ろから矢と魔法が飛び、倒したと思えば、少ししてまた次の足音が聞こえてくる。時には前の群れを片づけた直後に、次の魔物が通路へ飛び込んできた。


 陸は椅子へ戻り、飲み物を飲みながら戦闘を眺める。魔物が何体か溜まれば立ち上がり、消える前にスケルトン化してストックへ入れ、また椅子へ戻る。


「これ、どんだけ増えるんだ?」


 そんなことを繰り返しているうちに、陸は一度スケルトンストックを開いた。


━━━━━━━━━━━━━━

【スケルトンストック】


ゴブリンソルジャースケルトン ×32

ケイブリザードスケルトン ×28

ブラックウルフスケルトン ×31

━━━━━━━━━━━━━━


「うおっ! もう90体超えてるじゃん!」


 陸は一覧を眺めながら、口元を緩めた。


「よしよし。めっちゃ増えてるな」


 ストックを閉じた頃には、また細い通路の奥から複数の足音が近づいていた。前衛が入口を塞ぎ、その後ろから矢と魔法が飛ぶ。オーガスケルトンの棍棒が振り下ろされ、最後に残ったケイブリザードも岩場へ倒れた。


 倒せば経験値が入り、消える前にスケルトン化すればストックも増えていく。香炉を置いて待っているだけで、魔物の方から次々とやってくる。


「楽すぎるな……」


 飲み物を一口飲み、背もたれへ身体を預ける。このまま一日中続けてもよさそうだった。


 ただ、今の二十体なら、この辺りの敵はほとんど問題なく倒せている。


「ずっとここで狩ってても、ボス部屋は見つかんないんだよな」


 そろそろスケルトンたちを探索へ戻した方がいい。陸は少し考えてから、まだ煙を上げている香炉を見た。


「まあ、今日はレベル上げの日でいいか」


 明日からまた探せばいい。そう決めると、陸は再び椅子へ深く座り直した。


 しばらくして、また魔物が来る。ゴブリンソルジャーが倒れ、その後ろからブラックウルフが飛び込んでくる。それもすぐに止められ、岩場へ転がった。


 同じ流れをぼんやり眺めていた時、視界の上の方で何かが動いた。


「ん?」


 陸が顔を上げると、高い洞窟の天井近くを小さな影がこちらへ向かって飛んでいた。


「……え?」


 鳥にしては身体が大きい。青白く光る鉱石の近くを通った瞬間、その姿がはっきり見えた。


 四本の脚に、長い尻尾。背中からは二枚の翼が生えている。全身を覆う鱗は白に近い淡い銀色で、翼の薄い膜だけが水色に透けて見えた。頭には小さな二本の角があり、近づくにつれて琥珀色の大きな目まで見えてくる。


「なんだ、あれ……ドラゴン?」


 小さなドラゴンは陸たちを警戒する様子もなく、そのままするすると高度を下げてくる。あまりにも普通に近づいてきたせいで、陸はしばらく見上げたままだった。


 先に動いたのはスケルトンたちだった。アーチャーが弓を持ち上げ、メイジも小さなドラゴンへ身体を向ける。


「待って! 上のやつ攻撃するな!」


 陸の声で、スケルトンたちの動きが止まった。


 小さなドラゴンはそんなことにも気づいていない。陸の横を通り過ぎるように降りてくると、地面に置かれた誘魔の香炉へ一直線に向かった。


「え?」


 香炉の前へ降りた小さなドラゴンは鼻先をぐっと近づけ、そのまま頬を擦りつけた。次には身体まで押しつけ、前脚で香炉を抱えるようにしながら何度も顔を擦りつけ始める。


「おいおい……大丈夫か?」


 陸が近づいても、まるで反応しない。これだけスケルトンが周りにいても気にする様子はなく、琥珀色の目は半分とろんとしていた。


「……話しかけても無理か」


 目の前の香炉しか見えていないようだった。


 陸はしゃがみ込み、しばらくその様子を見る。


「もしかして、こいつも香炉に引っ張られてんのか?」


 それなら、まず止めた方がいい。陸は誘魔の香炉の使用を止めた。


 立ち上っていた淡い煙が少しずつ薄くなり、小さなドラゴンの動きもぴたりと止まる。


「……んぅ?」


 香炉にくっつけていた顔を上げ、ぱちぱちと目を瞬かせた。それからゆっくり周囲を見回し、岩だらけの洞窟と、自分を囲むように立っている大量のスケルトン、少し離れたところにいる陸を順番に見ていく。


 琥珀色の目が大きく見開かれた。


「……ママ?」


 幼い声が聞こえ、陸の身体が固まる。


「喋った!?」

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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