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第49話 スケルトンVSオークチャンピオン!

 オークチャンピオンが大斧を構えたまま、低く唸る。


 その正面に立つのは、陸とほとんど変わらない背丈のスケルトン。十九体を混ぜたとは思えない細い骨格が、青白い光沢を帯びたミスリルの剣を片手に下げている。


「よし……行け!」


 陸の声と同時に、オークチャンピオンが先に踏み込んだ。


 大斧が頭上から振り下ろされる。


 スケルトンは横へ半歩ずれ、ミスリルの剣を斧の側面へ斜めに当てた。


 ギャリィンッ!


 火花が散り、大斧の軌道が横へ逸れる。刃が石床を叩き割った時には、白い骨格はもうオークチャンピオンの懐へ入っていた。


 青白い刃が胴を斬り抜く。


 ザンッ!


「はやっ!」


 オークチャンピオンが振り向きざまに大斧を横薙ぎにする。だが、そこにいたはずのスケルトンは低く沈んで刃の下を抜け、そのまま反対側の脇腹へ剣を走らせた。


 斬られた巨体が吠える。


 大斧が返る。今度は斜め下から跳ね上げるような一撃。それも剣を一度ぶつけただけで軌道を外し、スケルトンは身体をひねって脇を抜ける。すれ違いざま、太い腕へもう一筋の傷が刻まれた。


「何だこいつ……!」


 陸は目の前の攻防から視線を外せなかった。十九体で囲んでいた時とはまるで違う。今はたった一体で、オークチャンピオンを圧倒している。振られるたびに最小限の動きで外し、そのたび剣だけがオークチャンピオンの身体へ届いていく。


 巨体が力任せに踏み込み、大斧を連続して振る。ドンッ! ガギィンッ! 石床が砕け、火花が散った。


 一撃目を横へ抜け、二撃目は剣で流す。三撃目の横薙ぎにはスケルトンが地面を蹴り、大斧の刃を飛び越えるように巨体の横へ着地する。そのままミスリルの剣が走り、オークチャンピオンの背中へ長い傷が刻まれた。


 ザシュッ!


「うわ、今の何だよ!」


 陸が声を上げている間にも、スケルトンはもう正面へ戻っている。後ろへ跳び、横へ抜け、時には剣で刃を流しながら距離を詰める。さっきまで十九体が何度攻撃してもほとんど削れなかった相手の胸、肩、脚へ、次々と斬撃が増えていった。


 だが、巨体はまだ倒れない。


 胸を斬られても、脚へ刃が入っても、大斧を握る腕は止まらなかった。


 突然、オークチャンピオンが大きく吠えた。


 全身から赤い光が噴き上がるように広がり、分厚い身体を包み込む。


「来た! バトルオーラ!」


 光をまとったオークチャンピオンが踏み込み、大斧を振る。


 さっきまでより明らかに鋭い。


 スケルトンがミスリルの剣を斜めに合わせた。


 ガギィィンッ!!


 今度は流れない。大斧と剣がぶつかった瞬間、スケルトンが横へ吹き飛んだ。石床へ足をつき、それでも止まりきれずに何メートルも滑っていく。


「うおっ!?」


 オークチャンピオンは待たない。赤い光をまとったまま前へ出て、両手の大斧を頭上から振り下ろす。スケルトンが横へ跳んだ直後、その場所の石床が大きく陥没した。


 続く横薙ぎには身体を後ろへ反らし、巨大な刃を胸のすぐ前でかわす。さらに踏み込んできた巨体へミスリルの剣を返し、青白い刃が胸を斜めに走ったが、オークチャンピオンは止まらず肩からぶつかるように距離を潰した。


 ドンッ!


 スケルトンが押し戻される。


「やば……バトルオーラ、めっちゃ強いじゃん」


 さっきまで一方的に見えた戦いが、一気に変わった。


 赤い光をまとったオークチャンピオンが大斧を振るたび、空気まで重く揺れる。スケルトンも正面で受けるのをやめ、斧の外側へ回り込みながら剣を入れていく。


 動きそのものはスケルトンの方が上だが、一度でもまともに受ければ吹き飛ばされる。


 オークチャンピオンが踏み込みながら斧を振り上げる。スケルトンが横へ抜けようとした瞬間、巨体がさらに一歩踏み込み、大斧の柄を肩へ叩きつけた。


 ゴンッ!


 身体が弾かれ、その先へ大斧の刃が迫る。


「危なっ!」


 スケルトンは倒れながら片手を石床につき、そのまま身体を回して刃をかわした。大斧がすぐ横へ突き刺さる。地面を蹴って起き上がると、引き抜かれる前の斧を踏み台にして一気に跳び、オークチャンピオンの顔の高さでミスリルの剣を横に振る。


 ザンッ!


 巨体の頬から血が飛ぶ。


「おおっ!」


 着地したスケルトンへ大斧が振り下ろされる。今度は受けず、わずかに横へずれただけで刃を外した。続く二撃目にも触れず、その外側へ回り込んで太ももへ剣を入れる。


 力で押された直後なのに、動きは崩れていない。


 陸はいつの間にか、命令を出すことも忘れて二体の動きを追っていた。


 目の前で大斧と剣が交差するたび、石床が砕け、火花が散り、赤と青白い光が何度もすれ違う。


「こんなの……ずっと見てられるわ」


 オークチャンピオンが何度目かの斬撃を受け、大きく後ろへ下がった。そのまま大斧を両手で握り直すと、赤い光が腕から大斧へ集まり始めた。


「……来る!」


 大斧が頭上まで持ち上がる。スケルトンは逃げず、ミスリルの剣を正面へ構えた。剣身へ青白い光が集まり、見る間に強さを増していく。


「フォーススラッシュ……!」


 オークチャンピオンが大斧を振り下ろした。


 グランドクラッシュ。


 ドガァァァンッ!!!


 石床が砕け、叩きつけられた場所から巨大な衝撃が円を描いて広がる。


 同時に、スケルトンが剣を振り抜いた。


 青白い斬撃が空間を走る。


 二つの力が正面からぶつかった。


 次の瞬間。


 バァンッ!!!


「うわあっ!?」


 爆発したような衝撃がフィールドを駆け抜ける。陸は咄嗟に腕で顔を庇った。身体を押され、足が一歩後ろへずれる。砕けた石の欠片が床を跳ね、巻き上がった砂埃が一気に周囲へ広がった。


 何も見えない。


「どうなった!?」


 薄れていく砂埃の向こうに、二つの影が浮かぶ。


 オークチャンピオンはまだ立っていた。


 だが、胸にはさっきまでなかった深い斬り跡が走っている。大斧を握る腕もわずかに下がっていた。


 その正面で、スケルトンも剣を構えたまま立っている。


「うおお……!」


 陸の声が勝手に漏れた。


 砂埃が完全に晴れるより早く、二体がまた動いた。


 オークチャンピオンが低く大斧を振る。スケルトンは跳んで刃の上を越え、空中で身体をひねると、落ちながら肩へ剣を振り下ろした。


 ガキンッ!


 オークチャンピオンは大斧の柄を持ち上げて受け、スケルトンを空中で弾く。だが、着地と同時に石床を蹴って再び前へ出た。


 剣と大斧が正面からぶつかる。


 ガァンッ!!


 スケルトンの足元が滑り、オークチャンピオンも一歩下がった。


「力でもほとんど押し負けてない……!」


 大斧が右から来る。スケルトンが剣で外へ流して胸へ踏み込み、振り下ろされた肘をかわして脇腹を斬る。巨体が振り向けば、そこへもう一度剣が走った。


 赤い光と青白い刃が、目で追うのも難しい速さで何度も交差した。


 やがてオークチャンピオンが大きくよろめく。


 それでも倒れない。


 再び吠え、赤い光を揺らしながら大斧を引きずるように一歩踏み出した。


「まだ来るのかよ……!」


 次の瞬間、オークチャンピオンが大きく踏み込み、大斧を一気に振り上げた。


 スケルトンも前へ出る。


「行け!」


 二体の距離が一瞬で消える。スケルトンは止まらない。


 巨大な刃が落ちる。


 その直前、白い骨格が横へずれた。


 大斧が空を切る。


 スケルトンは巨体の脇を抜けるように走り、そのまますれ違いざまにミスリルの剣を振り抜いた。


 ザンッ!


 一歩。


 二歩。


 スケルトンがオークチャンピオンの背後で止まる。


 巨体は大斧を振り下ろした姿勢のまま動かなかった。


「……え?」


 太い首に、細い線が走る。


 次の瞬間、オークチャンピオンの頭が肩から滑り落ちた。


 ドンッ。


 頭が石床へ落ちる。


 続いて、首を失った巨体がゆっくりと傾いた。


 ズズンッ!!


 大斧と一緒に倒れ込み、石床が重く揺れる。


 目の前にウィンドウが開いた。


━━━━━━━━━━━━━━

【第四戦クリア】

━━━━━━━━━━━━━━


「勝ったああああっ!」


 陸は両腕を突き上げた。


「マジで第四戦勝った! やったあああっ!」

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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