第3話 スケルトンラッシュ、強すぎない!?
玄関の扉を開ける。
その先にあるのは、見慣れた廊下じゃなかった。
薄暗い石造りの通路が、まっすぐ奥まで続いている。
「うわ、マジでダンジョンじゃん!」
一歩踏み込んで、周囲を見回す。通路は人が二、三人並んで歩けるくらいで、少し先には曲がり角も見えた。
振り返る。
石造りの通路の途中に、自分の部屋へ繋がる玄関扉だけがぽつんと立っていた。
「いや、扉だけあるの変な感じだな」
開ければちゃんと自分の部屋が見える。
帰れることだけ確認して、視線を前へ戻した。
それより、気になることがある。
スケルトンラッシュの説明には、倒したモンスターをスケルトン化できるとしか書いてなかった。
まだ何も倒していない。
「まあ、今使っても何も起きないだろうけど……一回試してみるか」
少し前へ出て、スキル名を口にする。
「スケルトンラッシュ!」
その直後、目の前に青白い光が集まり、一気に人の形を作っていく。
「うわっ!」
思わず後ろへ下がった足がもつれて、そのまま尻餅をつく。
光が消れる。
そこに立っていたのは、陸とほとんど変わらないくらいの大きさのスケルトンだった。百七十センチくらいはありそうだ。
「いやデカッ! ちょっと待って、こんなの出せるなんて書いてなかっただろ!」
すぐ立ち上がって、目の前のスケルトンを見る。
白い骨だけの身体。武器も防具もない。ただ立っているだけなのに、想像していたよりずっと存在感がある。
ウィンドウを開いて、スケルトンラッシュの説明をもう一度確認する。
『倒したモンスターをスケルトン化することができる。』
やっぱり、今目の前にいるこいつのことは書かれていない。
「説明にない効果もあるってことか?」
そうなると、もう一つ試したくなる。
「じゃあ、もう一体。スケルトンラッシュ!」
今度は何も起きなかった。
少し待ってみても、目の前にいる一体以外は増えない。
「一体まで? それとも最初の一体だけ出せるとか?」
答えは分からない。
でも、少なくとも今はこの一体がいる。
「まあいいか。行こうぜ」
歩き出すと、スケルトンも普通についてきた。
「お、ちゃんと来るんだ!」
少し振り返ってみても、そのまま一定の距離を空けてついてくる。
「なんかペットみたいでちょっと面白いな」
曲がり角を一つ曲がり、さらに先へ進む。しばらくすると分かれ道が出て、その先には行き止まりもあった。
「これ普通に迷いそうだな」
帰り道はちゃんと覚えておいた方がよさそうだ。
そう思いながら、また別の通路へ進む。
そして次の曲がり角を曲がった時だった。
「……ん?」
少し先に、何かいる。
緑色の肌。尖った耳。陸より二回りくらい小さい身体。
何も持たず、通路の真ん中に突っ立っていた。
「ゴブリン……だよな?」
向こうも陸に気づいた。
小さな身体がこちらを向く。
そこでようやく、陸の足が止まった。
勢いでここまで来た。
スキルが面白そうで、そのままダンジョンにも入った。
でも、こいつがめちゃくちゃ強かったら普通に死ぬんじゃないか。
「いや、ちょっと待って。これ普通にヤバくね?」
ゲームなら死んでもやり直せる。でも、ここが本当にそうなのかなんて分からない。
ゴブリンが一歩こちらへ近づく。
「いやいやいや、まずお前行け!」
陸はすぐ隣のスケルトンを指さす。
「あいつと戦ってこい!」
次の瞬間、スケルトンが走り出した。
「速っ!」
人間とほとんど変わらない動きで、かなりの速さで通路を駆ける。
ダダダダッ、と一気に距離を詰め、そのまま片足を振り抜いた。
パァンッ!
乾いた音が響く。
蹴りをまともに受けたゴブリンの身体が横へ吹き飛び、床へ転がった。
動かない。
「……え?」
陸は数秒、その場に立ち尽くす。
スケルトンは何事もなかったみたいに、倒れたゴブリンの横に立っていた。
「いや、強すぎない!?」
恐る恐る近づいてみる。
ゴブリンは完全に倒れていた。
その瞬間、目の前に小さなウィンドウが現れる。
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薬草 ×1
100P を獲得しました。
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「薬草!? 100P!? 何それ、そっちもめちゃくちゃ気になるんだけど!」
ウィンドウへ顔を近づけかけて、すぐに倒れたゴブリンへ視線を戻す。
「いや、今はこっちだろ! スケルトンにできるんだよな!?」
陸はすぐゴブリンの前にしゃがみ込み、手を向ける。
「スケルトンラッシュ!」
ゴブリンの身体を青白い光が包む。
「うわ、来た!」
輪郭が崩れ、肉が消え、骨だけの姿へ変わっていく。陸はしゃがんだまま、その変化を食い入るように見つめる。
数秒後、そこに立ち上がったのは小柄なスケルトンだった。
ゴブリンスケルトン。
「うわ、マジで増えた! すげえ!」
陸も勢いよく立ち上がる。
最初の大きなスケルトンの隣に並ぶと、かなり小さい。頭一つ分どころじゃないくらい差があって、妙にちんまりして見える。
「いや待って、こいつちっさ! なんかちょっと可愛いな!」
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