第201話 アメリカのダンジョン!
投光器の光は、斜面の途中までしか届かなかった。そこから先は、岩壁そのものがうっすら暗い。写真で見た、黒っぽい岩の通路だ。足音の返り方が変わり、背中で鳴っていた発電機の音が、急に遠くなった。
陸はスケルトンストックを開いた。
まず探索班を三組。ウルフとバットが、斜面の上で陸の左右へ並ぶ。それから、テンペストガーゴイル。大きな骨の翼が開いた瞬間、通路の天井近くまで白い影が広がって、後ろの方で誰かが英語で短く声を上げた。続けて、ロイヤルナイト、ブレイズウィザード、ホークアイ。コボルトベヒーモス、フラッシュファングウルフ、二体のアビスリザード。
「入口の先の広いとこまで。そこから先は、角を一つ曲がるくらいまででいい。なんか見つけたら戻ってこい」
探索班が斜面を駆け下りていき、ガーゴイルがその上を滑るように追っていった。
サモンマップを開く。
表示は、ほとんど真っ白だった。入口の印から、陸とエリナがここまで歩いてきた短い線が一本だけ。そこへ、探索班の印が先へ進むたびに、新しい線が描かれていく。斜面が下りきったところで、線が左右へ大きく膨らんだ。広い空間に出たらしい。
海を越えて飛んできた先の、誰の地図にもまだ載っていないところが、自分の地図の上に、自分のスケルトンの足で描かれていく。
「……来たな、アメリカのダンジョン」
「リク、ここ、あめりか?」
「アメリカ。中だけど」
その時、ガーゴイルの印が止まった。
止まって、円を描き始める。広い空間の、ずっと奥だ。少し遅れて、探索班の一組の印が、来た線を引き返してきた。
陸はロイヤルナイトたちを連れて、斜面の下まで下りた。
広い空間は、学校の体育館くらいはありそうだった。天井は高く、正面の奥で岩壁が二つに割れ、左右に一本ずつ通路の口が開いている。戻ってきた探索班の組が陸の前で止まり、そろって左の口へ頭を向けた。
左の通路の奥から、重い足音が近づいてきていた。
「ナイト、ウィザード、ホークアイは俺の前。ベヒーモスたちは右の壁沿い。出てきたら横から行け」
骨の足音が二手に分かれる。陸はエリナを自分の後ろへ下がらせ、左の口を見た。
最初に出てきたのは、角だった。
頭の両側から前へ突き出した、太い角。盛り上がった肩。熊のような体つきが、一体、二体と通路の口から押し出されてくる。
「動画の、壁に突っ込んでたやつ……!」
四体並んだ。その後ろから、五体目が身体を屈めて口をくぐった。
前の四体より、頭一つ以上大きかった。角は太く長く、左右へ広がっている。背中の毛が逆立ち、ゆっくり首を回してこちらを見た。
陸は鑑定を使った。
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タイタングリズリー
ランク:B
Lv.43
HP 1,160
MP 124
筋力 438
耐久 406
敏捷 272
賢さ 81
【スキル】
ホーンチャージ
グラウンドスタンプ
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前の四体は、ホーングリズリー。どれもCだった。
五体の頭が、そろって陸たちの方を向いた。正確には、陸たちの後ろの、斜面の上の光の方だった。
「上には行かせない。ホークアイ、先頭!」
ホークアイが弦を引き切った時には、もう弓全体が白く光っていた。放たれた矢が広い空間を一直線に横切り、先頭のホーングリズリーの額へ吸い込まれる。巨体が前のめりに崩れ、後ろの一体がそれにつまずいた。
「ウィザード、横!」
ブレイズウィザードの杖が振られ、残った四体の左右に炎の壁が二枚立ち上がった。逃げ場の消えたグリズリーたちが、炎の間を一列になって押し寄せてくる。
右の壁沿いから、フラッシュファングウルフが消えた。
次に見えた時には、炎の壁の切れ目から列の二体目へ食らいついていた。首の付け根へ牙が沈み、グリズリーが身体をよじる。そこへ二体のアビスリザードが壁沿いから突っ込み、三体目の脚と脇腹を左右から押さえ込んだ。
列の真ん中から、タイタングリズリーが抜け出した。
頭を低く下げ、角を前へ突き出す。前脚が岩床を蹴った瞬間、巨体が一つの塊になって走り出した。炎の壁の端を毛皮ごと突き破り、まっすぐ斜面の方へ。その間にいるのは、ロイヤルナイトと、その後ろの陸たちだけだった。
「ベヒーモス!」
横から、骨の巨体がぶつかった。
コボルトベヒーモスの肩が、タイタングリズリーの首の横へ叩き込まれる。岩床が鳴り、二つの巨体がもつれ合ったまま斜めへ流れた。角がベヒーモスの肋骨の横を削り、乾いた音が響く。それでも、ベヒーモスは押し返されなかった。突進の向きが、斜面から壁の方へずれていく。
ロイヤルナイトが踏み込んだ。
グランドアクセルで弾けるように距離を詰め、アークソードを、がら空きになった首元へ振り下ろす。刃が深く入った。タイタングリズリーが吠え、身体ごと振り向いて前脚を薙ぐ。ナイトはエアステップで宙を蹴ってその上を越え、着地と同時に、同じ傷へもう一度長剣を叩き込んだ。
巨体が、ゆっくりと横へ傾いた。
倒れた音が広い空間に響いた時には、残りのホーングリズリーも動かなくなっていた。フラッシュの足元に一体。リザードたちの間に一体。最後の一体は炎の壁の内側で膝をつき、ホークアイの二本目の矢を首に受けて、そのまま伏せた。
炎の壁が引いていく。
陸は振り返った。斜面の上で、投光器の光が四角く白く見えていた。その手前を横切ったものは、何もない。
「……一体も、行かせてない」
画面越しに見た壁の前では、Cランク一体に、何人もの隊員が銃を集めていた。今ここに転がっているのは、そのCが四体と、それより大きいのが一体だ。
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