第185話 並行討伐!
陸がまだ倒れたアビスリザードのそばにいると、後ろの岩道から骨の脚音が戻ってきた。
右へ出した探索班だった。ウルフとバットの組が陸の前で止まり、来た方向へそろって顔を向ける。
サモンマップを見ると、その組が通った線は、右の岩道をずっと奥まで伸びていた。一番先の、線が折り返している場所で何かを見たらしい。
「……あっちにもいるのか」
陸はさっきまで待機させていた四体を振り返った。
今倒したばかりの相手に、ここにいる全員はいらなかった。
「ベヒーモス、リザード二体連れて、こいつらが来た道を行って。フラッシュも一緒に行って、場所案内してやって。見つけたら倒していい。やばそうなら戻ってこい」
探索班の組が来た道を引き返し、フラッシュファングウルフがその後を追う。コボルトベヒーモスと二体のアビスリザードが、岩床を揺らしながら続いた。
陸は自分の方を見た。ロイヤルナイトと、ブレイズウィザードと、ホークアイ。上にはガーゴイル。
サモンマップの上で、ガーゴイルの印が、もう別の場所で円を描き始めていた。
「……そっちもいるのかよ!」
二体目は、さっきより岩の多い斜面の下にいた。
陸が結晶の陰まで来た時には、ホークアイの矢がもう脚の付け根に刺さっていた。アビスリザードが斜面を駆け上がろうとしたところで炎の壁が前を塞ぎ、向きを変えた先にロイヤルナイトがいる。陸が指示を出すより先に、全部がさっきと同じ場所へ収まっていった。
陸は戦っている斜面を半分見ながら、もう半分でサモンマップを見ていた。
右の奥へ行ったベヒーモスたちの印が、一か所に集まったまま止まっている。止まって、少しずつ位置をずらしている。戦っているのだと分かった。
斜面の方で重い音がして、アビスリザードが崩れ落ちた。
サモンマップの印は、まだ止まったままだった。陸が倒れた巨体から目を戻してしばらくすると、ようやくベヒーモスたちの印がまとまって動き出す。フラッシュの印だけが先に離れ、こちらへ向かって速度を上げた。
戻ってきたフラッシュの顎には、黒青色の鱗が一枚ぶら下がっていた。
「……向こうも終わったな」
口に出した途端、笑いが込み上げてきた。
一体を倒している間に、別の場所でもう一体が倒れている。陸はその片方を見てすらいない。
「なんか、もう俺いらなくないか?」
「リク、いる」
「いや、いるけどさ」
そこから先は、探索班が戻ってくるたびに隊を送り出すだけになった。
ガーゴイルが回り始めた場所へは陸たちが行き、探索班が見つけた場所へはベヒーモスたちが行く。片方が戦っている間に、もう片方が次の場所へ歩き出している。陸がやることは、サモンマップへマーカーを置いて、どっちを向かわせるか決めることくらいだった。
ベヒーモスたちの方で三体目、陸たちの方で四体目が倒れた頃、陸はようやく回収に回った。
倒れたアビスリザードのそばには、ドロップが残っていた。黒青色の鱗の束、太く湾曲した爪。それに、手のひらからはみ出すくらいの魔石。親指ほどの大きさのDランクの魔石とは、光り方からして違う。奥の方で、青黒い光がゆっくり揺れていた。
陸はそれを所持アイテムへ入れ、次の場所へ移った。ベヒーモスたちが戦った岩場にも、同じものが同じように落ちていた。
全部を回収し終えて、陸は所持アイテムを開いた。
Bランクの魔石が、一覧の中で一行にまとまっている。その横の数字を見て、陸はしばらく黙った。
入ってから、まだ二時間も経っていない。
「……これ、研究室に持ってったら絶対びっくりされるやつだ」
「いっぱい?」
「いっぱい。前だったら、何回も来てやっとこのくらいだった」
一行下には、鱗と爪がまとめて並んでいる。陸は指でその数字をなぞり、もう一度魔石の行へ戻った。
「研究室に回す分抜いても、売ったらとんでもないぞこれ……!」
エリナが陸の手元の画面を覗き込み、それからサモンマップの方へ首を伸ばした。
「リク、ここ、ひろくなった」
「ん?」
言われて、陸もサモンマップへ目を移した。
今日一日で、地図はずいぶん広がっていた。ガーゴイルが上から通った線と、探索班が岩道を進んだ線が、これまで陸たちが歩いて埋めてきた範囲の外側まで、いくつも伸びている。その中に一本、陸がまだ一度も行ったことのない、ずっと奥まで続いている線があった。
左の方には、以前置いたマーカーが一つ残っていた。タイラントドレイクを見た空洞だ。新しい線は、そこから大きく外れて右奥へ向かっている。
「……今日なら、もうちょい行けるな」
陸は探索班を呼び戻し、その線の先へ二組を送り出した。ガーゴイルには探索班の少し後ろを飛ばせ、ベヒーモスたちを最後尾へ回す。
「行くか、エリナ」
「うん!」
陸はロイヤルナイトたちを前に立たせ、新しい線の方へ歩き出した。
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