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第174話 炎と風!

 次に群れが来たのは左の入口だった。


 ゴブリンとウルフが斜面を駆け上がり、ウォーロードの盾の前で押し合いになる。後ろから来た分まで詰まって、入口の外側に一つの塊ができていた。


 ハイウィザードが杖を向けた。杖の先へ赤い光が集まり、押し合っている足元へ小さな火がいくつも灯る。次の瞬間、炎が一斉に巻き上がった。


 陸はそれを見てから、左の岩壁の上へ目を移した。サイクロンガーゴイルは、シャープシューターを下ろした平らな岩のそばで、まだ翼を畳んで外を見下ろしている。ちょうど燃えている入口の真上あたりだった。


「ガーゴイル、そこから入口の外に風! 前衛には当てないで、外側から!」


 サイクロンガーゴイルが岩壁の縁から飛び立ち、入口の外へ回り込んで翼を大きく打った。


 巻き起こった風が渦を作り、サイクロンになって群れの外側へ叩きつけられる。燃えていた炎が風に引きずられ、ねじれながら一気に高く伸びた。赤い渦が群れの真ん中を回り、外へ逃げようとしていたウルフまでまとめて呑み込んでいく。


 渦が消えた時、入口の外には何も残っていなかった。


「火、巻き上がった! 今の竜巻みたいになってたぞ!」


「あかいの、ぐるぐる!」


 エリナがその場で何度も跳ねる。陸もドローンの画面へ飛びついた。上から撮った映像では、入口の前に赤い渦が立ち上がり、その周りで群れが巻き込まれていく様子がそのまま残っていた。


「これ、狙ってできるなら相当強いな……」


 何度か群れを迎えるうちに、陸が口を出す回数も減っていった。さっきまで旋回しているだけだったガーゴイルが、今は壁の上と入口の間を行き来している。シャープシューターも、岩壁の上から斜面を登ってくる相手へ、溜めきった矢を落とし続けていた。


 その途中、岩壁の上のシャープシューターへ、外から飛んできたガーゴイルが二体襲いかかった。第11階層のDランクだ。光を溜めていたシャープシューターは避けきれず、弓を抱えたまま岩の上で身を縮める。


「あっ、上!」


 陸が叫ぶより先に、入口の方から戻ってきていたサイクロンガーゴイルが、一気に岩壁の上へ駆け上がっていた。一体目へ横から突っ込み、レンドクローで翼ごと削り落とす。もう一体が爪を振り下ろすと、翼を身体の前へ畳んだ。


 ウイングガード。


 爪を弾き返したところへそのまま体当たりし、敵を岩壁の外へ叩き落とした。


「ナイス! ……そっか、上にいると上からも来るんだな」


 広場の中なら、周りに弓も魔法もいる。だが壁の上には、シャープシューターしかいない。


「ガーゴイル、入口押したら、すぐシャープシューターのとこ戻って。あっちも見てて」


 それからガーゴイルは、入口を押す時だけ降りて、終わればすぐシャープシューターのそばへ戻るようになった。日が傾く頃には、その往復もすっかり形になっていた。


 夜は祭壇の近くにテントを出した。調理台で焼いた肉をエリナと食べ、その間もスケルトンたちは入口で戦い続けている。陸は寝る前に撮った映像を何本か見返してから、エリナとテントへ入った。


 翌日も、同じように狩りは続いた。


 昼を過ぎた頃、陸は所持アイテムを開いた。祭壇の加護のおかげで、魔石や素材がかなりの量たまっている。


「よし、いったん整理するか」


 ほとんどは、これまで通りだった。Dランクの素材や、装備作りにももう使わない物は、まとめて売却する。増えたポイントはそのまま祭壇へ入れた。紋様を走る青白い光が一段強くなる。


 ただ、全部は売らなかった。


 魔石の一部と、たまに混じってくるCランクから落ちた素材。それだけは売却の一覧から外して、別にまとめておく。


「うらないの?」


「これは研究室に持ってく。蒼星鉱使わない方も作るって言ってたし」


 何が使えるのかは陸には分からない。それでも、売れば一瞬で祭壇へ消えるポイントだ。少しくらい回しても困らない。


 陸は整理を終えると、そのまま三体を確認した。


━━━━━━━━━━━━━━

サイクロンガーゴイル C Lv.39


ゴブリンハイウィザード C Lv.38


ゴブリンシャープシューター C Lv.38

━━━━━━━━━━━━━━


「お、シャープシューター上がってる! ……ガーゴイルは、やっぱこっからが長いな」


 グランドナイトの時も、39から40までは丸二日かかった。分かってはいても、一番上の表示を何度か開き直してしまう。


 エリナが陸の膝の横から画面を覗き込み、一番上を指した。


「まだ?」


「まだ。でも、昨日より絶対近づいてる」


 陸は表示を閉じ、岩壁の上を見上げた。


 平らな岩の上では、シャープシューターがまた弓を構えている。そのすぐ上をサイクロンガーゴイルが大きく旋回していた。陸はコントローラーを持ち直し、ドローンを二体の方へ昇らせた。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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