第173話 三体の育成!
システムメニューで第11階層を選ぶと、景色が一気に切り替わった。
高い岩壁に囲まれた広場と、その中央に立つ石造りの祭壇。前に研究員たちと来た時、ここから帰ったままになっている。
エリナが陸の横から駆け出し、祭壇の周りをぐるっと一周してきた。
「ひかってない」
「今からつけるって」
陸はスケルトンストックを開いた。
三つの入口にはオークウォーロード、オークデストロイヤー、ハイオーガをそれぞれ置き、その後ろへCランクの前衛を何体かずつ並べる。中央寄りには弓と魔法を使うスケルトンを広げた。
最後に、今回の三体を呼び出す。
大きな翼を広げたサイクロンガーゴイルが祭壇の上へ舞い上がり、杖を持ったゴブリンハイウィザードと、弓を背負ったゴブリンシャープシューターが中央の弓隊の前へ並んだ。空いた枠も、育てておきたいCランクで全部埋める。
祭壇へポイントを入れると、中央に灯った青白い光が溝を走り、足元から広場全体へ淡い線が伸びていった。続けて誘魔の香炉を置く。
それから陸は、所持アイテムから黒いケースを取り出した。
「それ、とばす?」
「飛ばす。今日はずっと撮っとく」
研究室で頼まれたのはBになった後の映像だ。ただ、研究室で見た二本の矢も、並べたから差がはっきりした。比べる元がなければ、どれだけ変わったのかも分からない。
ドローンが小さな羽音を立てて浮き上がり、祭壇の上まで昇っていく。手元の画面には、三つの入口を塞いだスケルトンたちと、その真ん中にいる陸とエリナがまとめて映っていた。
しばらくして、三方向からほぼ同時に足音が近づいてきた。
ゴブリン、ウルフ、オーガ。第11階層ではもう見慣れた顔ぶれだ。前衛が入口で受け止め、後ろから矢と魔法が降る。ウォーロードの盾にぶつかった群れが詰まり、デストロイヤーの大斧が先頭をまとめて薙ぎ払った。
陸はその中で、三体だけを目で追った。
ハイウィザードは問題なかった。入口で群れが固まるたび、杖の先へ赤い光を集める。押し合っている敵の足元へ小さな火がいくつも灯り、次の瞬間には炎が一斉に巻き上がった。詰まった群れをまとめて焼くのは、前からハイウィザードの得意な仕事だ。
問題は残りの二体だった。
シャープシューターは弓を引き絞り、矢じりへ光を集め始める。だが光が弓まで届く前に、狙っていたオーガがウォーロードの盾で押し返され、横から来た矢と炎で倒れてしまう。シャープシューターは次の相手へ狙いを移し、またすぐに撃つ。半分も溜まらない矢ばかりだった。
「あー……ここだと溜める前に終わっちゃうのか」
サイクロンガーゴイルの方は、もっと分かりやすく困っていた。
祭壇の上を大きく旋回し、入口へ降りようとしては翼を傾けて戻ってくる。三つの入口はどこも前衛で埋まっていて、レンドクローで飛び込める隙間がない。何度か上から風を吹き下ろしてはいるが、味方の前衛まで煽られて、ハイオーガが嫌そうに足を踏ん張り直していた。
「ガーゴイル、降りる場所ないじゃん」
召喚しておけば経験値は入る。ただ、このままだとガーゴイルが旋回しているだけの映像しか残らない。
陸は画面の中のガーゴイルを見て、それから岩壁の上へ目を移した。
「……ガーゴイル、一回あっち上がって。壁の外、見てきて」
サイクロンガーゴイルが翼を強く打ち、岩壁の縁を越えて外側へ出た。
陸もドローンを少し上げて後を追わせる。岩壁より高いところから見下ろすと、画面の端に広場の外の草原が入ってきた。
入口へ続く斜面の向こうから、ウルフの群れがこちらへ走ってくる。さらにその奥では、大きな影が三つ、ゆっくり丘を下りていた。オーガだ。広場の中からは、岩壁に隠れてまだ何も見えない。
「上からだと、来る前に全部見えてんのか」
ガーゴイルは岩壁の縁へ降り、翼を畳んで外を見下ろしていた。足場は思っていたより広い。人が二、三人並んで立てそうなくらい平らな岩が、壁の上にしばらく続いている。
陸は岩壁の上と、中央で次の矢をつがえているシャープシューターを交互に見た。
「……シャープシューターも、あそこ置けないかな」
ガーゴイルを一度呼び戻す。
「シャープシューター持って、さっきのとこまで運んで。落とすなよ」
サイクロンガーゴイルは降りてくると、シャープシューターの両肩を後ろから掴んだ。骨の脚が地面を離れ、細いゴブリンの骨格がぶら下がったまま持ち上がっていく。
「とんでる!」
「おお、いけるいける!」
少しふらついたものの、ガーゴイルは岩壁の縁まで昇り、シャープシューターをそっと平らな岩の上へ下ろした。シャープシューターはすぐに膝をつき、外へ向けて弓を構える。
「よし。そこから来るやつ撃って。急がなくていいから、ちゃんと溜めて」
陸はドローンを岩壁の上へ寄せた。画面の手前に弓を構えたシャープシューター、その先に斜面と草原が広がる。
さっきの三体のオーガが、ちょうど丘を下りきったところだった。一列になり、入口へ向かう斜面を登ってくる。
矢じりへ光が集まり始めた。
今度は誰も邪魔しない。光は少しずつ強くなり、弓まで広がり、腕の骨まで照らしていく。オーガたちはまだ斜面の途中だ。光はさらに強くなり、構えたシャープシューターの輪郭そのものが白く浮かび上がった。
「……まだ溜まるのかよ」
先頭のオーガが斜面を半分ほど登ったところで、弦が鳴った。
光をまとった矢が斜め下へ走る。先頭のオーガの胸へ飛び込み、そのまま背中から抜けて、すぐ後ろにいた二体目の肩へ深く突き刺さった。
先頭が斜面を転がり落ち、二体目も大きくよろめいて膝をつく。
「抜けた!? 今の一体抜けたよな!」
三体目と、手負いの二体目が入口へ駆け込んでくる。そこはもうハイオーガの前だった。二体ともあっという間に入口の内側で倒れる。
陸は手元の画面を巻き戻した。
岩壁の上で光が溜まっていく様子も、矢が一体目を抜けて二体目へ刺さったところも、上からしっかり映っている。
「撮れてる撮れてる! 壁の上、めっちゃ当たりじゃん!」
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