第169話 試作品!
前回の研究から一週間ほど経って、陸とエリナは再び対策庁の研究室へ来ていた。
作業台の上にはストームボウと、前にはなかった小さな金属部品がいくつも並んでいる。そのうち二つは黒く焼け、端が少し歪んでいた。
「佐藤さん、こっちです。とりあえず形になりました」
「おお、これですか?」
研究担当者が手に取ったのは、焼けた部品ではなく、その隣にある暗灰色の金具だった。
「前に反応が出てた部品、ありましたよね。あれをそのまま真似するのはやめて、魔力が通ってたところだけ使えないか試してました」
研究担当者は焼けた方も一つ持ち上げた。
「こっちは蒼星鉱は使ってません。普通の材料で何個か作って、形を変えたり、通し方を変えたりしてたやつです」
「結構壊れてますね」
「出力を上げると、今の材料だとここまでですね」
黒くなった部品は中央がわずかに膨らみ、継ぎ目の一部が開いていた。これを何個か壊しながら、武器本体まで傷めない形を探したらしい。
研究担当者はストームボウを持ち上げた。
「今はこうしてます」
暗灰色の金具は、握りのすぐ上にある弓身の太い部分を左右から挟む形だった。内側には弓の曲面に沿った薄い板があり、二か所を締めると弓身に沿って固定される。
弓そのものに穴は開いていない。
「これなら外せば元通りです」
「それなら安心ですね」
金具の右側には、細長い差し込み口が一つだけ空いていた。
研究担当者が、指一本ほどの長さの薄い黒い部品を差し込む。半分ほどが金具の中へ入り、外に残った部分には小さな窓が付いていた。
「交換するのはこっちです。今入れたのは試験用なので、蒼星鉱は入ってません」
そのままストームボウを作業台の固定具へ置き、研究担当者が測定機器から伸びた細いコードをつないだ。
「弱い出力なら、ここでも動かせます」
機器を操作すると、画面に並んでいた数値の一つが動いた。
「何も付けてない時より上がってます」
「おお、本当に変わるんですね」
「このくらいなら普通の材料でも大丈夫です。ただ、実戦で使うくらいまで上げると……」
研究担当者が焼けた部品を見る。
「あれになるんですね」
「はい。なので、高出力は一回使ったら交換する前提です」
研究担当者は試験用の部品を抜き、今度は作業台の奥を示した。
蒼星鉱は見た目だけなら前回とほとんど変わっていない。ただ、端の一角だけが平らに削られ、そこだけ新しい銀灰色の面が出ていた。
「ちゃんと削ったんですね」
「本当に少しだけです。先に普通の材料で試せるところまで試してからにしました」
蒼星鉱の横には、小さな透明ケースが置かれている。
中に入っているのは、さっきの試験用と同じ形の黒い部品だった。違うのは、窓の奥に銀灰色の薄片が見え、その内側で青白い光が小さく瞬いていることだ。
「こっちが本番用です」
研究担当者がケースを持ち上げる。
「蒼星鉱を薄く削って、中に挟んであります。高出力で使うのはまだ試してません」
「まだなんですか?」
「一個しか作ってないので。研究室で壊して終わるより、実際の攻撃で見た方がいいと思いまして」
陸はストームボウへ目を向けた。
「これ、前にアビスリザードへ使ったことあります。鱗の隙間なら矢が入ってました」
「それなら比較しやすいですね。何も付けてない時との差も見られます」
「タイラントドレイクにも効きそうです?」
「そこまではまだ分かりません。まずBランクで見たいです」
前にタイラントドレイクへ挑んだ時は、Bランク装備でもほとんど通らなかった。いきなり同じ相手で試す必要はない。
「じゃあ、アビスリザードで試してみます」
「お願いします」
研究担当者は試験用の部品を外し、固定金具だけをストームボウへ残した。本番用の黒い部品はケースのまま陸へ渡される。
エリナが透明な蓋を覗き込んだ。
「ひかってる」
「ほんとだな」
陸はケースを所持アイテムへ入れた。作業台に残った蒼星鉱の端には、新しく削られた銀灰色の面が小さく光っていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
面白かった、続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや☆評価、感想で応援していただけると励みになります!




