第168話 研究の結果!
数日後、陸とエリナは再び対策庁の研究室へ来ていた。
前に見た作業台の上には、蒼星鉱とアークソード、ストームボウ。それとは別に、切断されたショップ品や金属片がいくつも並んでいる。部屋の奥には高瀬も来ていた。
「あ、佐藤さん。ちょうどよかったです。これ見てください」
研究担当者が、作業台の端にあった小さな金属部品を二つ寄せた。
片方は途中で切られ、内部が見えている。もう片方も、見た目だけならかなり似ていた。
「どっちもショップのですか?」
「こっちはそうです。で、こっちはこっちで作った方」
「おお。ほぼ同じじゃないですか」
「見た目はいいところまでいったんですけどね。動かすと全然違いました」
「あ、ダメなんですね」
「ダメでした。ちょっと悔しいです」
研究担当者は笑いながら、人間側で作った方を指先で転がした。
「材質を変えたり、中の形を寄せたりはしたんですけど、ショップ品に出ている性能までは届かなくて。ただ、何も反応しないわけでもないんです」
完成した物が目の前にあるなら、分解すればかなり近づけると思っていた。
どうやら、それほど簡単ではないらしい。
「蒼星鉱も、似たような感じです」
研究担当者は今度は銀灰色の塊へ手を伸ばした。
「壊さずに見られる範囲でも、普通の金属とはかなり違いました。強度もそうですし、魔力を通した時の反応もかなり変わってます」
「じゃあ、武器にできそうです?」
「今すぐ一本作れる、とは言えないですね。こっちで普段使ってる条件をそのまま当てはめても、素直に加工できる感じじゃないです」
蒼星鉱は、陸が預けた時とほとんど変わらない形で残っていた。
「なので、次に進むなら少しだけ削らせてほしいんです。表面だけじゃなく、中も見たいので」
「やっぱそこは削るんだ……」
「そこは避けにくいです。でも勝手にはやってませんよ」
一個しかないAランク素材だ。ずっと眺めているだけでは武器にもならないが、雑に削られるのも困る。
研究担当者は横の容器にも手を伸ばした。第11階層から持ち帰った石と土だ。
「祭壇の方は、今のところこっちを持って帰ってきても何も起きませんでした」
「まあ、石だけ光り始めても怖いですけど」
「それはそれで見てみたかったんですけどね」
陸は思わず笑った。
「現地のデータはちゃんと残ってます。ただ、今のところ『これが祭壇を動かしてる』ってものまでは見つかってません」
「うーん……」
陸は作業台を見回した。
蒼星鉱は、すぐ武器にならない。ショップ品も、形を真似しただけでは同じ物にならない。祭壇も、周りの石を持ち帰れば仕組みが分かるという話ではなかった。
「これ、全部ハズレってことです?」
「いや、そこまでじゃないです」
研究担当者は、さっきの人間側の部品を持ち上げた。
「これ、ショップ品ほどじゃないですけど反応は出てるんですよ。完全に同じ物を作ろうとすると遠い。でも、同じ物じゃなくていいなら話が変わります」
「同じ物じゃなくていい?」
「武器一本を丸ごとAランク相当にするんじゃなくて、一回の攻撃だけ手伝うとか。攻撃の瞬間だけ魔力を通しやすくするとか、そこまでなら試せるかもしれません」
陸は作業台のアークソードへ目を向けた。
タイラントドレイクには傷をつけられた。それでも、浅かった。
「一発だけでも、今より深く斬れるなら全然ありですね」
「そういう方向です」
研究担当者はそこで蒼星鉱を見た。
「で、その試験に少しだけ使わせてほしいんです」
「どれくらい使います?」
「最初は本当に少しです。目に見えてごっそり減るような使い方はしません」
陸は蒼星鉱を見る。
第12階層で見つけた時は、何を作れるか楽しみにして持ち帰った。まだ一個しかないし、できれば無駄にはしたくない。
けれど、対策庁へ預けたのは眺めてもらうためではない。Aランクに届くものが作れるかもしれないなら、少しくらいは使う意味がある。
「じゃあ、少しだけなら。Aランクに効く可能性あるなら使ってください」
「ありがとうございます。まず一個、試してみます」
その言葉を聞いて、高瀬も作業台の方へ来た。
「では、その方向で進めてもらいましょう。必要なものはこちらでも手配します」
研究担当者は蒼星鉱の記録へ新しく書き込みを始めた。まだ鉱石そのものは、陸が持ち込んだ時とほとんど同じ形で作業台の上に残っている。
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