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第167話 祭壇の調査!

 システムメニューで第11階層を選ぶと、景色が一気に切り替わった。


「……空?」


 研究員の一人が、思わず上を見た。


 頭上には青空が広がり、遠くには丘と森、そのさらに向こうには山まで見える。風が草を揺らし、太陽らしき光まで地上と変わらない。


 昨日から話していた研究担当者と、機材を持ったもう一人。二人とも、しばらくその場から動かなかった。


「ここ、本当にダンジョンの中なんですか?」


「はい。第11階層です。めちゃくちゃ広いですよ」


 研究担当者はしばらく空を見上げたあと、周囲の写真を撮り始めた。今日は祭壇が目的だが、この環境自体も調べる価値がありそうだった。


 陸は高速探索部隊を呼び出し、先に進行方向へ走らせる。第11階層の通常モンスターなら、見つけてもそのまま処理できる。


 続けてホバーバイクを出した。


「これで行きます」


 研究員を一人ずつ乗せ、エリナはいつものように陸の前に収まる。高速探索部隊が前後を走り、サモンマップに残っている既知の経路を進んでいった。


 最初に乗せた研究員は、速度が上がるたびに周囲を何度も見回していた。


「この辺には、どんなモンスターが?」


「ゴブリンとかウルフとかですね。もっと進むと強いのもいます。俺のやり方はスケルトン前提なんで、他の人が同じように行けるかは分かんないですけど」


 長い移動そのものは、ホバーバイクなら早かった。


 全員を祭壇のある広場へ運び終えると、研究員たちはまた足を止めた。


「これです」


 陸が指した先で、石造りの祭壇が広場の中央に立っていた。


 研究担当の職員は返事をせず、しばらく祭壇を見上げている。周囲を囲む高い岩壁、その三方向に開いた入口まで確認してから、ようやく息を吐いた。


「……思っていたより大きいですね」


「俺も最初見つけた時はびっくりしました」


 陸にはもう見慣れた場所だ。


 三方向の入口にはスケルトンを数体ずつ配置する。もう一人の研究員は機材ケースを開き、カメラや小型の機器を並べ始めた。


 研究担当者は祭壇へ近づきながら写真を撮り、石板の表面や溝を順番に確認していく。


「これ、最初からこの状態だったんですか?」


「はい。俺が作ったわけじゃないです。探索してたスケルトンが見つけました」


「なるほど……」


 祭壇そのものには手を加えず、少し離れた地面の石や土を少量だけ容器へ入れる。もう一人は起動していない状態の数値を記録していた。


 ひと通り終わったところで、研究担当者が顔を上げる。


「効果の比較もしたいので、先に起動していない状態で何体か倒してもらえますか?」


「分かりました」


 近くの通常モンスターを数体だけ誘導し、スケルトンに倒させる。戦闘はすぐに終わった。


 研究員たちは討伐数と時間を記録し、陸の所持アイテムへ増えた魔石や素材も確認した。


 ひと通り記録が終わると、陸は祭壇へ触れた。


「前は100万P入れたんですけど、試すだけならもったいないし」


 前回よりずっと少ないポイントを入力し、そのまま決定する。


 祭壇の中央に青白い光が灯った。


 細い溝へ光が流れ込み、枝分かれしながら石板を走る。そのまま台座を伝い、足元から何本もの淡い線が地面へ伸びていった。


「……!」


 二人の研究員が同時に祭壇を見る。


 青白い光は放射状に広がり、やがて勢いを落とした。祭壇に刻まれた紋様だけが静かに輝き続ける。


━━━━━━━━━━━━━━

【祭壇の加護が発動しました】

━━━━━━━━━━━━━━


 少ないポイントでも祭壇は起動した。


 研究担当者はすぐに祭壇ではなく、横に置いた機器を見た。もう一人も別の機器を確認し、位置を変えながら記録を取っていく。


 陸は光っている祭壇と二人を交互に見た。


「なんか出てます?」


「うーん……変化は出てるんですけど」


 研究担当者は画面を見たまま少し考えた。


「これが原因だ、って言えるものがないですね」


「え。めっちゃ光ってるのに?」


「そうなんです……」


 研究員たちは祭壇の近く、地面側、少し離れた場所と測る位置を変えた。もう一人も別の機器を確認する。それでも、すぐに原因らしいものが見つかった様子はなかった。


「次は、同じくらいの数を倒してみたいです」


「香炉なら一気に集められますけど……前に人にも影響が出たことあるんで、今日はやめときます」


 陸は高速探索部隊へ、さっきと同じくらいの数だけ連れてくるよう命じた。


 しばらくして、ゴブリンやウルフが数体追ってくる。研究員たちを中央へ下がらせ、待っていたスケルトンがまとめて迎え撃った。


 戦闘はすぐに終わった。


 研究担当者は戦闘そのものより、陸の所持アイテムへ増えた物を先ほどの記録と見比べていた。魔石と素材の数が、起動前より明らかに増えている。


「……増えてますね」


「前に使ってた時も、ドロップはかなり増えてました」


「これなら効果が出ているのは見てよさそうです。どのくらい増えるかは、もう少し回数が要りますけど」


 もう一人の研究員も記録をまとめ、採取した石や土の容器をケースへ戻した。


 祭壇は変わらず青白く光っている。


「結局、これ何なんですかね」


「……それを持ち帰って調べます」


 陸はまだ光り続けている祭壇を見上げた。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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