第162話 Aランク戦!
二体目のアビスリザードを倒したあと、陸は残った二体の死体を順番にスケルトン化し、そのままストックへ戻した。
「……今日はもう帰るか」
蒼星鉱まで手に入れたうえ、アビスリザード二体との連戦までした。身体強化を使い続けたせいで、さすがに身体も重い。
陸は近くにいたフラッシュファングウルフへ向き直る。
「周りだけ見てきて。何もなかったら戻ってきて、そのまま帰るぞ」
白い骨狼が岩床を蹴った。
いつものように一瞬で曲がり角の向こうへ消える。
陸はその間にロイヤルナイトたちを近くへ集めた。エリナも隣まで来て、フラッシュファングウルフが消えた方を見る。
まだほとんど時間は経っていなかった。
奥から骨の脚音が響く。
「もう?」
白い影が曲がり角から飛び出してきた。
フラッシュファングウルフは陸たちの横まで来ると、そのまま通り過ぎかけた。すぐに身体を鋭く返し、来た道へ向き直る。青白く光る眼窩が、岩道の奥へ向いたままだ。
「……何かいる」
次の瞬間、重い足音が響いた。
アビスリザードよりも低く、岩床そのものが揺れるような音だった。
曲がった岩壁の向こうから、黒に近い灰色の巨体が現れる。四本の太い脚。長い尾。頭には短い角のような突起が並んでいる。
「……タイラントドレイク」
前に見たAランクだった。
エリナもすぐ陸のそばまで下がった。
前回は、こちらに気づかれる前に離れられた。
だが今回は違う。
タイラントドレイクの頭がこちらを向いた。
巨体が一度止まる。
そのまま四本の脚が岩床を蹴った。
「来る!」
陸はすぐにシステムメニューを開き、退出を選んだ。
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戦闘中のため、
個人ダンジョンから退出できません。
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「マジか!」
表示を閉じた時には、タイラントドレイクがもう近い。
「ロイヤルナイト! ベヒーモス!」
二体が前へ出た。
先にぶつかったのはコボルトベヒーモスだった。三メートル近い骨格が正面から踏ん張り、太い腕をタイラントドレイクの頭部へ押しつける。
だが止まらない。
灰黒色の巨体がそのまま前へ踏み込み、コボルトベヒーモスの足が岩床を削りながら後ろへ滑った。
「うそだろ……!」
横からロイヤルナイトが踏み込む。
アークソードが青白い光を引き、タイラントドレイクの肩口へ斬りつけた。
硬い音が響く。
刃は弾かれなかった。灰黒色の鱗へ細い傷が走る。
だが、アビスリザードへ斬り込んだ時とは違う。
浅い。
タイラントドレイクが首を振った。
その動きだけでロイヤルナイトが剣ごと押され、横へ大きく跳ぶ。続けて振られた前脚が岩床へ叩きつけられ、黒い岩が砕けた。
「下がって!」
コボルトベヒーモスが距離を取ろうとする。
タイラントドレイクが一歩踏み込んだ。
速い。
陸は万象の腕輪を雷属性へ切り替え、すぐに左手を向けた。
青白い電撃が灰黒色の身体を走る。
タイラントドレイクの頭がわずかに揺れ、踏み出しかけていた前脚が一瞬だけ止まった。
「今!」
ロイヤルナイトとコボルトベヒーモスがその間に離れる。
だが、硬直したわけではない。次の瞬間にはタイラントドレイクがまた動き出していた。
「フラッシュ!」
白い影が横から走る。
フラッシュファングウルフが巨体の前を横切り、岩道の反対側へ抜けた。
タイラントドレイクの頭がすぐにそちらへ向く。
次の一歩で、距離が一気に縮まった。
「えっ――」
フラッシュファングウルフが鋭く切り返す。
白い骨格が横へ弾け、タイラントドレイクの前脚がそのすぐ後ろを通り過ぎた。岩床が大きく砕ける。
フラッシュファングウルフは止まらず、そのまま陸たちの方へ戻ってくる。
陸は迷わなかった。
「無理だ、逃げる!」
ロイヤルナイトとコボルトベヒーモスもすぐ向きを変える。
エリナはもう走り出していた。フラッシュファングウルフがその横へつき、陸も続いて岩道へ駆け込む。
背後で、また重い足音が響いた。
陸は振り返らず、そのまま走った。
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