第161話 高速連携!
陸が目の前へ視線を戻した直後、アビスリザードが岩床を蹴った。
「うわっ!」
身体強化を使ったまま横へ飛び、振り下ろされた爪を避ける。さっきまでなら、このまま距離を取っていた。だが今は違う。後ろからロイヤルナイトたちがこちらへ戻ってきている。
「もう逃げなくていいな」
陸は左手を上げた。
風を細く絞り、今度は顔の近くではなく、アビスリザードの目そのものへ飛ばす。
鋭い風が黒青色の頭部へ走った。アビスリザードは反射的に瞼を閉じ、顔を横へ振る。
「フラッシュ!」
少し離れていたフラッシュファングウルフが身体を低くした。
次の瞬間、白い骨格の輪郭がぶれる。
フラッシュアクセル。
一気に距離を消したフラッシュファングウルフが、顔を逸らしたアビスリザードの横へ潜り込む。そのまま前脚の付け根へ牙を叩き込んだ。
フラッシュファング。
硬い音と一緒に黒青色の鱗が割れ、巨体が大きく身体を振る。
「入った!」
前脚が振り下ろされるより早く、フラッシュファングウルフは噛みついた場所から離れた。進行方向を鋭く切り替え、爪の外へ抜けると、そのまま陸の横まで戻ってくる。
「それ使えるじゃん!」
アビスリザードはすぐに追おうとしたが、前脚へ力を入れた瞬間、噛まれた側がわずかに沈んだ。大きな傷ではない。それでも、今まで注意を引くだけだった時とは違う。
陸がもう一度目を狙おうと左手を上げると、今度はアビスリザードの方が先に動いた。低く身体を沈め、一気にこちらへ突っ込んでくる。
「うおっ!」
陸が横へ退いたところへ、戻ってきたロイヤルナイトたちが合流した。
コボルトベヒーモスが正面から踏み込み、アビスリザードの頭を太い腕で押さえ込む。巨体同士がぶつかり、岩床へ重い音が響いた。
アビスリザードが押し返そうとした瞬間、フラッシュファングウルフが右側へ走る。
黒青色の頭がそちらへ向いた。
その反対側からロイヤルナイトが踏み込み、アークソードを肩口へ斬り込む。厚い鱗が割れ、その下まで深く刃が入った。
アビスリザードが吠えるように口を開き、身体を強く捻った。太い尾が横薙ぎに振られ、ロイヤルナイトとコボルトベヒーモスがそれぞれ距離を取る。少し離れた位置から飛んだ矢も尾に弾かれ、岩床へ転がった。
そのまま巨体が前へ出た。さっきまでと違い、今度は陸たちの間を抜けるのではなく、正面から押し切ろうとしている。
「まだ!」
陸は万象の腕輪を水属性へ切り替えた。
左手の前から大量の水が一気に噴き出し、アビスリザードの顔へぶつかる。巨体そのものは止まらない。それでも水をまともに浴びた頭が下がり、足元へ水が広がった。
アビスリザードが顔を振って水を払おうとする。
陸はそこへもう一度、細く絞った風を飛ばした。
狙うのは目だ。
水に濡れた顔へ風が走り、アビスリザードが目を閉じて頭を背ける。
「今!」
白い影が動いた。
フラッシュファングウルフが今度は左側から一気に回り込み、後脚の付け根へ牙を食い込ませる。
アビスリザードが脚を跳ね上げる。
だが、その時にはもういない。
フラッシュファングウルフは身体を鋭く返して離脱した。噛みつかれた後脚を庇うようにアビスリザードの身体がわずかに流れ、その頭が白い影を追う。
そこへコボルトベヒーモスが突っ込んだ。
横から巨体を押され、アビスリザードの身体が傾く。
「ロイヤルナイト!」
アークソードを構えたロイヤルナイトが、一気に踏み込んだ。
狙ったのは、さっきから何度も攻撃が集まっている肩から首の横。
青白い光をまとった刃が、割れた鱗の間へ深く食い込む。
アビスリザードが暴れ、前脚を振り上げる。
フラッシュファングウルフがもう一度その前を横切った。
頭が白い影を追った一瞬、ロイヤルナイトが剣を引き抜き、さらに踏み込む。
アークソードが同じ場所へ叩き込まれた。
黒青色の巨体が大きく揺れる。
コボルトベヒーモスが正面から押し込み、そのまま岩床へ倒した。
アビスリザードは起き上がろうと前脚を動かしたが、力が入らない。そのまま巨体が岩床へ沈み、動かなくなった。
「やった!」
周囲には、倒れたアビスリザードと、戦闘で砕けた岩、それにさっき陸が撒いた水が残っていた。
陸は大きく息を吐く。
すぐ横へ、フラッシュファングウルフが戻ってきた。青白い光を宿した眼窩を向けたまま、傷らしい傷もない。
「お前、ちゃんと攻撃もいけるな」
陸が頭骨へ手を伸ばすと、フラッシュファングウルフはその場で動かなかった。
少し離れたところでは、エリナが倒れた場所を見てから、白い骨狼の方へ駆けてくる。
「はやかった!」
「な。あれはいいな」
陸はもう一度、フラッシュファングウルフの頭骨を軽く撫でた。
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