第16話 有名店の寿司が家で食える!?
十体のスケルトンを第1階層へ散らしたあと、陸は玄関扉を開けて自分の部屋へ戻った。
「ちょっとだけ休も……」
そのままベッドへ転がり、目を閉じる。
次に目を開けた時、部屋の明るさが少し変わっていた。
「……寝てた?」
枕元のスマホを手に取る。
「マジか。完全に寝てたわ」
思っていたより時間が経っている。
まだ少しぼんやりしたまま身体を起こしたところで、ふとポイントのことを思い出した。
「そういや、どれくらい増えた?」
ウィンドウを開く。
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所持ポイント
42,600P
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「うお、結構増えてんな!」
四万を超えている。
陸が数字を見ている間にも、表示が変わった。
42,700P。
「おっ」
また少しして。
42,800P。
「うわ、やっぱ速い!」
第1階層で十体を別々に動かすようにしてから、明らかに増え方が変わっている。
「このやり方、正解だったかも」
陸はしばらく数字を眺めてから、ふと腹を押さえた。
「……なんか食うか」
そういえば、第2階層へ行ってから何も食べていない。
冷蔵庫を見るのもいい。でも、四万ポイント以上ある数字を見たあとだと、なんとなくショップの方が気になった。
「せっかくだし、またなんかいいもん食いたいな」
ショップを開き、食品カテゴリーへ入る。
肉。魚。弁当。惣菜。冷凍食品。菓子。
見慣れた商品が並ぶ。
陸は画面を送っている途中で、検索欄へ指を伸ばした。
「何にしよっかな……」
少し考える。
「寿司とかある?」
検索欄へ『寿司』と入れる。
すぐに商品がずらっと並んだ。
スーパーで売っていそうな寿司の盛り合わせ。海鮮丼。握り寿司のセット。
「まあ、普通にあるよな」
そのまま下へ送る。
そこで、陸の指が止まった。
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鮨 青月
おまかせ握りコース
30,000P
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「……え?」
店名をもう一度見る。
「鮨、青月……?」
数秒考えて、陸の目が大きくなった。
「ここ、テレビで見たことある!」
何度かグルメ番組で紹介されていた店だ。
予約がなかなか取れないとか、一人何万円もするとか、そんな話をしていた記憶がある。
陸はすぐ商品を開いた。
画面には、綺麗に並んだ握り寿司の写真が映る。
大トロ。中トロ。たい。えび。ウニ。いくら。穴子。
その下には、茶碗蒸しと汁物まで並んでいた。
「ちょっと待って」
陸は画面へ顔を近づける。
「これ、店の料理そのまま売ってんの?」
今までショップで見た食品は、肉や魚、飲み物みたいなものが中心だった。
黒毛和牛を買った時も、出てきたのは焼く前の肉だった。
でも、これは違う。
完全に出来上がった料理だ。
「え、じゃあ有名店の料理も買えるってこと!?」
すぐ検索欄へ戻る。
試しにラーメン。
有名店らしい名前の商品がいくつも出る。
うな重。
こっちも店名付きの商品が並ぶ。
さらに洋食、焼肉、天ぷら。
「いや、もうAmazonなんて余裕で超えてるだろこれ!」
陸は思わず笑った。
「外食できないのに、店の料理が家に来るじゃん!」
もう一度、鮨 青月のおまかせ握りコースへ戻る。
30,000P。
「三万か……さすがに一食で三万は高いな」
それでも画面を閉じず、もう一度寿司の写真を見る。
テレビでしか見たことのなかった店の寿司が、今すぐ自分の部屋で食べられる。
「……いや、これ一回食ってみたい!」
数秒後。
「いくか!」
購入を押した。
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鮨 青月
おまかせ握りコース
30,000P
購入しました。
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「よし!」
次の瞬間、テーブルの上に青白い光が集まり始める。
「来た来た!」
細かな光が一気に形を作っていく。
木の寿司台。
小皿。
湯気の立つ汁物。
茶碗蒸し。
そして、綺麗に並んだ握り寿司。
「うわ……!」
陸はすぐテーブルへ近づいた。
「マジで店のやつじゃん!」
大トロは艶があって、脂が細かく入っている。えびは身が厚く、ウニは小さな軍艦の上にこんもり乗っていた。
写真で見るより明らかに美味そうだ。
「これ家で食っていいの?」
誰に聞くでもなく笑い、すぐ椅子へ座る。
最初に手を伸ばしたのは大トロだった。
「いただきます!」
一口。
「……うっま!」
陸の目が一気に開く。
「何これ、めっちゃ柔らかい!」
噛んだと思ったら、すぐ口の中からなくなっていく。
「大トロってこんな感じなんだ……!」
続けて、たい。
えび。
中トロ。
どれも普段食べる寿司とは明らかに違う。
「やば。全部うまい!」
次にウニを口へ入れる。
「うわ、これも全然違う!」
濃いのに変な癖がない。そのままなくなるのが惜しくて、少しだけゆっくり食べる。
いくらも食べる。
穴子も食べる。
途中で茶碗蒸しを挟み、温かい汁物を飲む。
「……最高だなこれ」
自然と声が出た。
ふと、食べながらウィンドウを開く。
購入した分だけ減っていたポイントが、少しずつまた増えている。
「こんなの食ってる間にもポイント増えてんの、最高すぎるだろ!」
陸は笑いながら、次の寿司へ手を伸ばした。
最後の一貫を食べ終え、陸は温かいお茶を飲む。
「……うまかった」
空になった寿司台を見る。
「三万でも、これはまた食いたいな」
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