第157話 先行偵察!
陸は誘魔の香炉を所持アイテムへ戻すと、育成用に出していたスケルトンも順番にストックへ戻していった。
「よし。そろそろ先、行くか」
「いく!」
横穴でのレベル上げは十分できた。フラッシュファングウルフもBランクまで進化した以上、ここに留まり続ける理由はない。
育成用の個体を戻し、主力はそのままにして、陸たちは横穴の外へ出た。
岩道の先には、これまで何度も通った曲がり角が続いている。
陸は隣に立つフラッシュファングウルフを見る。
「まず、あの先まで。敵がいたら戦わなくていいから、すぐ戻ってきて」
低く身を沈めた骨狼が、岩床を蹴った。
白い影が一気に遠ざかる。
最初に走らせた時ほど驚きはしなかった。それでも、数秒もしないうちに曲がり角の向こうへ消えていく姿を見ると、やはり速い。
「俺らも行こう」
ロイヤルナイトを前に、陸とエリナも歩き始めた。
少し進んだところで、フラッシュファングウルフがこちらへ戻ってくる。何事もなかったように陸の前で止まった。
「よし。次」
今度はもう少し先。骨狼が走り、陸たちがその後を追う。また戻ってくれば、さらに先へ進む。
今までは、大きな岩陰や曲がり角へ近づくたびに足を止め、陸自身がその先を確認していた。だが今は、その前をフラッシュファングウルフが走っている。
何もなければ、そのまま後を追えばいい。
「これ、かなり楽だな」
歩く速さそのものは大して変わっていない。それでも、止まる回数が減るだけで進める距離が全然違った。
横穴から離れ、まだほとんど調べていない岩道へ入る。
左右には黒っぽい岩壁が続き、ところどころに青白い光が浮かんでいる。道は何度も緩く曲がり、先まで見通せない。
「もうちょっと先まで頼む」
フラッシュファングウルフが駆け出し、すぐに姿が消える。
陸たちも後を追い、最初の曲がり角を抜けた。次の岩壁が見え、その奥へ道が続いている。
もう一つ先へ――。
そう思ったところで、前方から骨の脚音が響いた。
「ん?」
白い影が岩陰から飛び出してくる。さっきまでなら、もう少し先まで行ってから戻ってきていたはずだ。
「もう戻った?」
フラッシュファングウルフは陸の前まで来ると、そのまま止まった。骨には傷もない。
「何かいるか」
詳しく何を見たのかまでは分からない。それでも、戦わず戻るよう命じた個体が途中で引き返してきたなら、先へそのまま進む気にはならなかった。
「ちょっと待ってて」
エリナへ短く声をかけ、陸はロイヤルナイトとコボルトベヒーモスを前へ出した。足音を抑えて岩壁沿いへ進み、曲がり角の手前で止まる。陸だけがそっと先を覗いた。
「……あ」
少し離れた岩道を、黒青色の巨体がゆっくり歩いている。
アビスリザード。
こちらにはまだ気づいていない。
「やっぱいたか」
陸はすぐ頭を引っ込めた。倒そうと思えば戦える。実際、もう何体も倒している。
だが、わざわざ今ここで戦う必要はない。
「こっちはやめよう」
全員を少し戻し、途中にあった別の分岐へ向かう。エリナも何も聞かず、陸の横をついてきた。
別の岩道へ入ったところで、陸はフラッシュファングウルフへ声をかけた。
「今度は俺らもすぐ追う。何かいたら、その手前で止まってろ」
白い骨狼はあっという間に見えなくなった。陸たちもすぐにその後を追う。
岩道を二つ曲がり、狭い場所を抜ける。さらに進むと、左右の岩壁が少しずつ離れ、前方が大きく開けた。
フラッシュファングウルフはその手前で止まっていた。
「どうした?」
陸も速度を落とす。開けた岩道の向こうに、また黒青色の巨体が見えた。
「……またいる」
さっきとは別のアビスリザードだった。太い尾を地面へ垂らし、大きな岩のそばでじっとしている。まだこちらには気づいていない。
「ほんと、普通にいるな……」
陸は岩陰へ身体を寄せ、その先を確かめる。アビスリザードのすぐ向こう、二つの岩壁に挟まれた場所へ、さらに先へ続く道が伸びていた。
ここまで来た道より細いが、行き止まりには見えない。
陸はその場で止まった。すぐそばでは、フラッシュファングウルフが静かに待っていた。
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