第156話 フラッシュファング!
「進化できる……!」
陸は表示から目を離さないまま、すぐにソニックファングウルフの進化を選んだ。
目の前に新しい表示が開く。
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【進化先を選択してください】
フラッシュファングウルフ
速度と機動能力をさらに伸ばした正統進化。
バーストファングウルフ
瞬間加速と突撃攻撃に特化した進化。
ミラージュファングウルフ
回避と撹乱能力に特化した進化。
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「おお……!」
三つとも分かりやすい。
陸は順番に詳細を開き、しばらく表示を切り替えた。攻撃へ寄せたバーストも強そうだし、ミラージュの回避と撹乱も面白い。
それでも、最後にもう一度フラッシュファングウルフへ戻る。
「やっぱ、こいつは速さだよな」
元々ソニックファングウルフを相手にした時、一番厄介だったのもそこだった。追っても追いつけず、囲んでも切り返され、攻撃を当てるだけで何度も逃げ道を削る必要があった。
その強みをそのまま伸ばせるなら、迷う理由はなかった。
「よし。フラッシュファングウルフ!」
陸が選択すると、ソニックファングウルフの全身を青白い光が包んだ。
細い狼型の骨格はそのままに、脚部や背中の輪郭がわずかに変わっていく。大きくなるというより、余分なものが削ぎ落とされ、四本の脚がさらに長く、軽く見えるようになった。
骨の継ぎ目には細い青白い光が走り、眼窩の奥にも同じ光が灯る。
数秒後、全身を覆っていた光が消えた。
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【進化が完了しました】
ソニックファングウルフ
↓
フラッシュファングウルフ
ランク:B
Lv.40
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フラッシュファングウルフ
ランク:B
Lv.40
HP:710
MP:198
筋力:318
耐久:252
敏捷:482
賢さ:172
スキル:
フラッシュアクセル
クイックターン
フラッシュファング
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「敏捷、四百八十二……!」
他の能力もBランクらしく伸びている。だが、陸の目が止まったのはやはり敏捷だった。
進化で生まれたBランクとしては、ロイヤルナイトに続く二体目だ。
陸は目の前のフラッシュファングウルフを見回した。立っているだけなら、以前と比べて極端に大きくなったわけではない。それでも、細く伸びた脚や低い姿勢は、今まで以上に走るための形に見える。
エリナも近くまで来ると、その横へしゃがみ込んだ。
「ほね、かわった」
「ちょっと変わったな。……これ、どれくらい速くなってんだ?」
そう思った瞬間、試したくなった。
陸は横穴の入口へ視線を向ける。
第12階層へ来てからは、高速探索部隊を遠くへ散らしていない。普通にBランクが歩いている場所へ、Cランク中心の探索班だけを出すのは危なすぎたからだ。
だが、今目の前にいるのはBランクだ。
「……近くだけなら、いけるか」
いきなり遠くまで行かせるつもりはない。すでに何度も通った横穴の外、その周辺だけでいい。
陸はフラッシュファングウルフへ向き直った。
「入口から少し先まで見てきて。敵がいたら戦わなくていい。すぐ戻ってこい」
フラッシュファングウルフが身体を低く沈めた。
「行け!」
四本の脚が岩床を蹴る。
「――速っ!」
一歩目を見たと思った時には、もう入口にいなかった。
白い骨の狼が岩道へ飛び出し、次の瞬間には曲がり角の手前まで距離を詰めている。岩床を蹴る音だけが遅れて横穴へ響いた。さらに踏み込んだところで輪郭がぶれ、そのまま岩陰の向こうへ消えた。
陸は思わず入口まで出て、その姿が消えた方を覗き込んだ。何度も通った道なのに、フラッシュファングウルフが走ると距離の感覚まで違って見える。
エリナも入口へ駆け寄り、曲がり角の方をじっと見ている。
「いなくなった」
「いや、マジで速いな……」
陸は思わず笑った。
昔は、あの動きに追いつくことすらできなかった。ダークウルフやアサルトホーンラビットまで使って、逃げる場所を少しずつ潰して、ようやく攻撃を当てた相手だ。
今は、それが自分の指示で走っている。
第12階層へ来てから封じていたやり方を、これなら少しずつ戻せるかもしれない。遠くまで散らすつもりはまだない。それでも、陸たちより先に周囲を見に行けるBランクがいるというだけで、今までとは違う。
まだ戻ってくるには少しかかると思っていた。
だが、岩道の奥で小さく骨の音がしたと思った次の瞬間、白い影が曲がり角から飛び出した。
「もう戻ってきた!?」
フラッシュファングウルフはほとんど速度を落とさないまま横穴へ入り、陸の数メートル手前で身体を鋭く返した。四本の脚で岩床を捉え、滑ることなくぴたりと止まる。
敵と戦った様子も、骨を傷めた様子もない。
「すげえ……」
陸が近づくと、エリナも横から寄ってきた。頭骨へ手を伸ばし、軽く撫でる。
フラッシュファングウルフは動かず、青白く光る眼窩を陸へ向けていた。
あれだけ捕まえるのに苦労したやつが、今はBランクになって、自分の前にいる。
陸はしばらくその姿を眺め、口元を大きく緩めた。
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