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155/203

第155話 Bランク乱入!

 あの横穴を見つけてから数日、第12階層でのレベル上げは順調に続いていた。押し寄せる群れを倒しては傷んだ個体を入れ替え、育成中のCランクも何体かレベルが上がっている。陸がいちいち入口へ寄らなくても、狩りはかなり安定して回るようになっていた。


「いい感じだな。このまま誰か40まで――」


 言いかけたところで、岩道の奥から重い音が響いた。いつもの群れとは違う。一歩ごとに低い振動が伝わり、入口近くの小石までかすかに揺れている。


「……でかいの来た?」


 エリナも遊んでいた岩の欠片を置き、入口の方を見た。


 曲がり角の向こうから、黒青色の巨体がぬっと現れる。低い頭に分厚い四肢。岩道を塞ぐような身体を見た瞬間、陸にも何が来たのか分かった。


「うそだろ。アビスリザード!」


 陸はすぐ誘魔の香炉を止めた。


「育成組、奥! 前空けて!」


 入口近くにいたCランクのスケルトンが一斉に下がる。エリナも言われる前に奥へ駆け、さっき交代させた傷ついたスケルトンのそばまで離れた。


 空いた入口へコボルトベヒーモスが出る。ロイヤルナイトもアークソードを構えてその横へ並んだが、アビスリザードは速度を落とさず、そのまま黒青色の巨体を入口へ叩き込んできた。


 ドンッ!


「うわっ!」


 今までの群れならほとんど動かなかったコボルトベヒーモスが、石を削りながら一歩押し戻される。さらに太い前脚が踏み込まれ、巨大な頭まで横穴の中へねじ込まれた。


「押し込ませるな!」


 ロイヤルナイトのアークソードが首元へ走り、黒青色の鱗を割って食い込む。アビスリザードは低く唸って身体を振り、太い尾を横穴の入口へ叩きつけた。ロイヤルナイトがかわした先で岩が砕け、破片が奥へ散る。


「もっと下がって! そこ危ない!」


 育成組をさらに奥へ動かした時、後方で弓を構えていたゴブリンハイハンターが陸の目に入った。そこでようやく、所持アイテムへ入れたままだった一本の弓を思い出す。


「あっ。そうだ、これ!」


 取り出したストームボウは、濃い青色の弓身に細い銀色の装飾が走っている。


「ハイハンター、こっち使え!」


 ゴブリンハイハンターは今までの弓を足元へ置き、差し出されたストームボウを受け取った。構えて弦を引くと、強靭な弓身が大きくしなり、張りつめた弦が細く震える。


「撃て!」


 矢が鋭い音を残して飛び、アビスリザードの肩口へ突き刺さった。厚い鱗の隙間へ矢じりが深く食い込み、巨体がわずかにこちらを向く。


「入った!」


 ハイハンターはすぐ次の矢をつがえた。淡い光をまとった矢が同じ巨体へ飛び、命中した場所から細い光の筋が網のように広がっていく。


 バインドショット。


 前脚と胴へ絡んだ光に引かれ、入口へ押し込んでいた巨体が一瞬だけ止まった。


「今!」


 コボルトベヒーモスが低く踏み込み、アビスリザードの頭を横から殴りつける。岩壁へ巨体がぶつかったところへロイヤルナイトが飛び込み、さっき斬った首元へもう一度アークソードを叩き込んだ。


 アビスリザードが暴れ、光の拘束を力任せに引きちぎる。振り上げた爪がロイヤルナイトの横をかすめ、そのままコボルトベヒーモスの肩へぶつかった。巨体同士が入口で押し合い、コボルトベヒーモスの足がまた半歩下がる。


「ベヒーモス、そのまま!」


 上空からサイクロンガーゴイルの風が叩きつけられ、アビスリザードの頭が横へ流れる。すぐ後ろからゴブリンハイウィザードの炎が黒青色の鱗を包み、その中へストームボウの矢がもう一本突き刺さった。


「よし、押せる!」


 コボルトベヒーモスが正面から押さえ、ロイヤルナイトは横へ回って傷口を狙う。アビスリザードが前へ出ようとするたび、後方から飛ぶ矢が動きを邪魔し、入口の外へ身体が押し戻されていった。


 やがて太い前脚が崩れ、巨体が岩道へ沈む。最後にロイヤルナイトが踏み込み、アークソードを首元へ深く振り抜いた。アビスリザードは横倒しになり、そのまま動かなくなった。


「……倒した!」


 奥にいたエリナがすぐに駆け戻ってくる。


「リク!」


「大丈夫。倒した倒した!」


 陸は息を吐きながら、ストームボウを持つゴブリンハイハンターへ顔を向けた。Cランクのハイハンターでも、Bランクの弓ならあの鱗へ矢を通せる。


「これ、めっちゃいいじゃん」


 拾った時から弓を使うスケルトンへ持たせるつもりだったが、思っていた以上に頼れそうだった。陸はストームボウを持たせたまま、続けて育成組の状態を確認していく。


「結構上がったかな……」


 何体かを切り替えたところで、陸の指が止まった。


━━━━━━━━━━━━━━

ソニックファングウルフ

ランク:C

Lv.40


【進化可能】

━━━━━━━━━━━━━━


「……え?」


 見間違いかと思ってもう一度確認する。表示は変わらず、Lv.40の文字と【進化可能】が並んでいる。


「40……来た!」


 さっきまでの緊張も忘れて、陸の声が横穴いっぱいに響いた。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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