第152話 探索の成果!
タイラントドレイクと遭遇してから、数日が経った。
その間も陸たちは第12階層へ通い、宝箱や素材を回収していた。Bランクの装備は少しずつ増え、万象の腕輪も反応した素材を吸収するたびに強くなっている。
今日も陸はエリナと四体のスケルトンを連れ、第12階層を歩いていた。
入口からそれほど離れていない場所では、遠くの岩場をアビスリザードが横切っていく。黒青色の大きな身体が岩陰へ消えるのを見送ってから、陸たちは上方向へ伸びる岩道へ入った。
何度か同じ方向を歩いたことで、だいたいの傾向は見えてきている。
上へ進むほどCやDランクが増える。逆に奥深くへ入ればBランクが目立ち、その先ではAランクまで何度か見かけた。
「やっぱ、こっちはだいぶ違うか」
陸の前ではロイヤルナイトがアークソードを持って歩き、その横をコボルトベヒーモスが進んでいる。サイクロンガーゴイルは少し上を飛び、ゴブリンハイウィザードは後方についた。
岩道は少しずつ高くなっていた。
黒い岩の斜面を回り込み、青白く光る岩壁の間を抜ける。途中では細い水の流れが道を横切っていて、エリナがそこを飛び越えた。着地した先で振り返り、少し得意そうに陸を見る。
「いけた!」
「それくらいなら余裕だろ」
陸も水を跨ぎ、そのまま先へ進んだ。
途中、岩棚が急に狭くなる場所では、コボルトベヒーモスがそのまま通れず横向きになった。三メートル近い骨格が岩壁の間をゆっくり抜けてくる。
「そこ通りにくそうだな」
エリナが隣で見上げる。
「おおきいから?」
「でかすぎるんだよ」
ようやく抜けた巨体が何事もなかったように先頭へ戻り、陸もその後へ続いた。
さらに坂を上ると、片側の岩壁が途切れ、巨大な空洞が下まで見渡せる場所へ出た。ずっと下の裂け目では赤いマグマが光り、その向こうでは青白い岩肌がぼんやり浮かんでいる。
「リク、した!」
「高いな、ここ」
エリナが岩道の端へ寄りかけ、陸は服の後ろを軽く掴んで止めた。
「そこまで行くなよ」
「はーい」
見下ろせば、何日か前に歩いた広い岩場がかなり下にある。あの辺りではBランクを何度も見かけたのに、ここまで上がってからは大きな影そのものが減っていた。
そのまま岩壁沿いに進んでいると、前方の岩陰からグレートケイブリザードが這い出してきた。
陸が足を止めるより先に、ロイヤルナイトとコボルトベヒーモスが前へ出る。
「倒して!」
グレートケイブリザードが爪を振り上げる。ロイヤルナイトが横へ踏み込み、アークソードを首元へ走らせた。身体が傾いたところへコボルトベヒーモスの拳が入る。
さらに上からサイクロンガーゴイルが飛び込み、鋭い爪を背中へ叩きつけた。
大きな音を立てて倒れた巨体は、そのまま動かなかった。
「もう終わりか」
陸はドロップだけ回収し、すぐに歩き出した。
少し進むと、岩道はまた二つに分かれていた。右はさらに上へ続き、左は緩く下っている。陸は右へ進む。
何度か曲がり道を抜ける。青白い光が薄くなる場所では、サイクロンガーゴイルが先へ飛び、岩陰の向こうを確かめて戻ってきた。エリナはコボルトベヒーモスの隣を歩きながら、ときどき上を見上げている。
この数日で、第12階層の広さそのものにはまだ慣れないまでも、歩き方には少し余裕が出ていた。
しばらく進んだところで、陸は足を止めた。
「今日はこの辺で帰るか」
四体を近くへ集め、陸はシステムメニューを開いた。
その時だった。
右手の岩陰から、低い唸り声が聞こえた。
「ん?」
黒い影が飛び出してくる。
グレートケイブリザード。
さっきと同じDランクだ。
ロイヤルナイトがすぐ前へ出て、振り下ろされた爪をアークソードで受け流す。コボルトベヒーモスも横から回り込んだ。
陸の目の前には、まだシステムメニューが開いている。
そのまま退出を選んだ。
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戦闘中のため、
個人ダンジョンから退出できません。
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「え?」
グレートケイブリザードが身体を捻り、太い尾を振った。
「もう倒して!」
ロイヤルナイトが尾をかわして踏み込み、アークソードを振り抜く。続けてコボルトベヒーモスが頭部へ拳を叩き込んだ。
サイクロンガーゴイルが上から飛び込み、鋭い爪で背中を切り裂く。ゴブリンハイウィザードが杖を向けると、炎がグレートケイブリザードの側面を包んだ。
グレートケイブリザードが動かなくなる。
陸は四体をスケルトンストックへ戻し、もう一度システムメニューを開いた。エリナが隣へ寄ってくる。
今度は退出を選んでも、さっきの表示は出なかった。
視界が切り替わった。
さっきまでの岩壁も、下から響いていた低い轟音も消え、麻布台のリビングが戻ってくる。
陸はソファの近くで立ち止まり、数日前に見た巨大なタイラントドレイクを思い出した。
「……あの時、気づかれなくてよかった」
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