第151話 Aランク!
陸たちは第12階層の岩道を、そのまま奥へ進んでいた。
少し先で、黒青色の大きな身体が岩陰から現れる。
「……またいる」
アビスリザードだった。
反射的に別の道へ行こうとして、陸は足を止めた。隣ではロイヤルナイトが、さっき手に入れたアークソードを持っている。
「……これ、Bランク相手にどれくらい通るんだろ」
Dランクなら簡単に斬れた。だが、それではこの剣がどこまで強いのかは分からない。
目の前のアビスリザードは一体だけだった。
陸はすぐには近づかず、周囲を確かめながら少し場所を変えた。近くに別の大型モンスターはいない。奥まで見通せる岩場で、横から別の道がつながっている様子もない。戻ってきた道もそのまま使える。
「……一体だけなら、やってみるか」
「たおす?」
「うん。ちょっと試したい」
危ないのは分かっている。それでも今は、ロイヤルナイトだけではない。コボルトベヒーモスもいるし、サイクロンガーゴイルとゴブリンハイウィザードもいる。
最悪、どうしても無理ならスケルトンフュージョンも使える。
「長引かせない。全員で一気にいくぞ」
陸の指示で四体が動いた。
最初にサイクロンガーゴイルが翼を広げ、アビスリザードの横へ回り込む。続いてコボルトベヒーモスが大きく踏み込み、巨大な骨格のまま正面から突っ込んだ。
アビスリザードが低く唸り、太い尾を振るう。
コボルトベヒーモスが腕で受ける。重い音が響き、巨体が横へずれた。その隙にサイクロンガーゴイルの風がぶつかり、アビスリザードの身体がわずかに傾く。
そこへゴブリンハイウィザードが杖を向けた。
炎が前方で大きく渦巻き、アビスリザードの側面を包む。
「今!」
ロイヤルナイトが一気に踏み込んだ。
アークソードが黒青色の鱗へぶつかる。
硬い音。
それでも刃は止まらなかった。
厚い鱗を割るように斬り込み、その下まで深く傷が走る。
「おおっ! 入った!」
アビスリザードが身体を振ってロイヤルナイトへ爪を振るう。ロイヤルナイトは横へかわし、そのまま距離を取った。
コボルトベヒーモスが再び正面からぶつかる。太い腕で頭部を押さえ込むように打ち込み、アビスリザードが大きくよろめいた。
その間にロイヤルナイトが長剣を構える。
刃から青白い光が大きく伸びた。
次の瞬間、強烈な斬撃が岩場を走る。
グランドフォーススラッシュ。
青白い斬撃がアビスリザードの肩口へ直撃した。
ズガンッ!
巨体が横へ押し飛ばされる。さっきアークソードで斬った場所からさらに深く傷が広がり、アビスリザードが地面へ片脚をついた。
「すげえ! めっちゃ通るじゃん!」
ロイヤルナイトだけを戦わせるつもりはない。
「そのまま押し切れ!」
サイクロンガーゴイルが上から飛び込み、コボルトベヒーモスが正面から殴りつける。ゴブリンハイウィザードの炎も続き、アビスリザードは立て直す暇もなく攻撃を受け続けた。
最後にロイヤルナイトが踏み込み、アークソードを首元へ振り抜く。
大きな身体が崩れ落ちた。
しばらく待っても動かない。
「……倒した!」
「やった!」
思っていたより早かった。
周囲に別のモンスターがいないことを確かめてから、陸は落ちたドロップだけを所持アイテムへ回収した。
Bランク一体を、今の四体ならかなり押せる。
それに、アークソードは間違いなく強かった。アビスリザードの硬い鱗にも、はっきり刃が通っていた。
「これなら、条件ちゃんと選べばBもいけそうだな」
少し気分が軽くなる。
陸たちは再び探索を始めた。
しばらく進むと、岩に挟まれた細い道の先が大きく開けていた。
その手前で陸は止まる。
遠くに、巨大な生き物がいた。
黒に近い灰色の鱗。四本の太い脚。長く大きな尾。首も太く、頭部には短い角のような突起がいくつも並んでいる。
翼はない。
それでも、見た目はどう見ても竜だった。
「……なんだ、あれ」
相手はこちらに気づいていない。
陸はすぐに鑑定を使った。
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タイラントドレイク
ランク:A
Lv.50
HP 2,180
MP 574
筋力 738
耐久 704
敏捷 651
賢さ 386
【スキル】
タイラントブレス
ドレイクハイド
レイジチャージ
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「……A!?」
思わず声が出そうになり、すぐに抑える。
さっき倒したアビスリザードとは、明らかに格が違った。
HPは二千を超えている。筋力と耐久は七百前後。それなのに、あの巨体で敏捷まで六百を超えていた。
「なんだこれ……」
さっきまでの手応えが、一気に消える。
Bランク一体を倒せたからといって、ここで好きに戦えるわけではなかった。
陸は横にいるエリナへ、小さな声で聞いた。
「エリナ。あれってドラゴン?」
エリナは少しだけ空洞の方を確かめた。
「ううん。ちがう」
あれだけ竜みたいな姿をしていても、本物のドラゴンではないらしい。
それ以上確かめる気にはならなかった。
「戻ろう」
四体へ下がるよう命じ、陸たちはゆっくり距離を取る。
足元の石を蹴らないように進み、コボルトベヒーモスも大きな骨格を岩へ当てないよう慎重に下がる。
タイラントドレイクはまだ動かない。
陸たちはそのまま後退し、曲がり角の奥まで戻った。
巨大な姿が完全に見えなくなる。
「走るぞ!」
そこから一気に離れた。
いくつか岩道を曲がり、かなり距離を取ったところでようやく速度を落とす。
「……さっきBと戦ったの、結構危なかったな」
もし戦っている最中に、あんなものが近くへ来ていたら。
Bランク一体を倒せたのは確かだ。それでも、第12階層にはその上が普通に歩いている。
そして陸の頭には、もう一つ別の考えも浮かんでいた。
雷晶石も、アークソードも、ストームボウもBランクだった。
Aランクのモンスターまでいるなら、この階層のどこかには、それと同じランクの素材や装備まであるのかもしれない。
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