第149話 雷晶石!
巨大な空洞へ続く岩道を、陸たちはゆっくり進んでいた。
さっき遠くで噴き上がったマグマはもう見えない。周囲には黒っぽい岩壁が続き、ところどころで青白い結晶のようなものが淡く光っている。第6階層や第7階層にも自然洞窟はあったが、ここは道一つを取っても幅がまるで違った。
「どこまで続いてんだ、これ……」
前にはロイヤルナイトとコボルトベヒーモス。少し後ろにゴブリンハイウィザード、上空にはサイクロンガーゴイルがいる。陸はエリナとその間を歩きながら、前方の岩場を見ていた。
数十メートル先。大きく張り出した岩の向こうから、四本脚の黒い生き物が姿を現した。全長は四メートル近くあり、黒に近い青色の鱗が全身を覆っている。地面すれすれまで下がった太い尾をゆっくり振り、首から背中には硬そうな突起が並んでいた。
「……なんだ、あれ」
こちらにはまだ気づいていない。陸はその場で足を止め、鑑定を使った。
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アビスリザード
ランク:B
Lv.42
HP 1,020
MP 186
筋力 408
耐久 442
敏捷 326
賢さ 143
【スキル】
アビスクロー
ハードスケイル
テイルブレイク
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「B!?」
思わず声が出て、陸はすぐに口を閉じた。
大阪城であれだけ苦労したコボルトベヒーモスと同じBランク。それがボスでも何でもなく、ただ岩場を歩いている。
ロイヤルナイトとコボルトベヒーモスがいる今なら、一体だけならやれるかもしれない。倒せればスケルトンにできる可能性もある。陸は一瞬だけそう考えたが、すぐ周囲を見回した。
「……いや、やめとくか」
「たおさない?」
「ここ、まだ何がいるか分かんないからな」
戦っている間に別のモンスターが来たら面倒だ。そもそも、目の前の一体がこの階層でどの程度の相手なのかさえ分からない。
そう考えた直後、少し離れた岩陰でまた大きな影が動いた。さっきと同じ黒青色の鱗。二体目のアビスリザードだった。
「……普通にいるじゃん」
これで戦う気は完全に消えた。
第11階層までなら、高速探索部隊をいくつもの方向へ散らし、危険なら戦わず逃げるように命じていた。だが、Bランクが最初から普通に歩いている場所へ、探索班だけを遠くまで走らせる気にはならない。
「ここは俺らで見てった方がよさそうだな」
陸は四体を連れたまま、アビスリザードから離れる方向へ進路を変えた。
いくつか岩の曲がりを抜けると、さっきまでの広い道から少し細い横穴へ入った。モンスターの姿はなく、足音だけが岩壁へ反響している。
その途中、右手の壁で紫がかった青白い光がちらついた。
「……あれ何だ?」
近づいてみると、岩の隙間から細長い結晶が何本も露出している。表面では時折、小さな光が弾けるように走っていた。
「めっちゃ光ってる!」
エリナもすぐ横まで寄ってくる。陸は一番大きく見える結晶へ鑑定を使った。
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雷晶石
ランク:B
雷属性の魔力を
高濃度に含んだ結晶鉱石。
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「これもBか!」
モンスターだけではなく、壁に埋まっている鉱石までBランクだった。
陸は露出している部分を掴んで引いてみたが、びくともしない。岩の中へかなり深く食い込んでいるらしい。
「これ、掘れば取れるのかな」
ショップを開いてピッケルを検索し、まずは一番安い鉄製のものを購入する。青白い光から現れたピッケルをロイヤルナイトへ渡すと、長剣を岩壁の脇へ置かせた。
「これでここ掘ってみて」
ロイヤルナイトが大きく振りかぶり、岩壁へ叩きつける。
ガキンッ! と硬い音が響き、表面がわずかに欠けた。続けて二度、三度と振り下ろす。だが結晶の周囲はほとんど崩れず、先にピッケルの刃が大きく欠けた。
「えっ」
もう一撃で、金属部分が根元から折れて床へ転がる。
「そっちが壊れんの!?」
「こわれた!」
陸は折れたピッケルと、ほとんど変わっていない岩壁を見比べた。
「硬すぎだろ……」
もう一度ショップを開き、今度は安い物を飛ばした。丈夫さを売りにしている上位品はさっきよりずっと高かったが、目の前のBランク素材を諦める気にはならない。
「次これ。やってみて」
新しいピッケルを受け取ったロイヤルナイトが、同じ場所へ振り下ろす。今度は重い金属音と一緒に岩が大きく欠け、結晶の周囲へ亀裂が走った。
「おお!」
そこからは一撃ごとに岩片が落ちていった。何度か叩くうちに結晶の根元まで露出し、最後の一撃で紫がかった青白い塊が岩壁から外れる。
「取れた!」
陸はすぐに拾い上げた。手のひらより少し大きく、内部には細い光が走っている。持っているだけでも、時折ぱちっと小さな音がした。
「すげえな、これ……」
眺めているうちに、左手首の万象の腕輪へ目が落ちる。
「……これ、入れられるよな?」
「うでわ、たべる?」
「たぶん」
陸が雷晶石を腕輪へ近づけると、中央の紫色の石が淡く光った。
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雷晶石を
吸収しますか?
【はい】
【いいえ】
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「やっぱりいける!」
迷わず【はい】を選ぶ。
雷晶石の表面から紫がかった青白い光がほどけ、細かな粒になって腕輪へ流れ込んでいく。手の中の結晶は少しずつ小さくなり、数秒後には完全に消えた。
腕輪へ刻まれた細い溝を青白い光が勢いよく走り、新しい表示が開く。
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【属性が強化されました】
雷属性 Lv.28
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「28!?」
陸は表示へ顔を近づけた。
「雷、28まで上がったのか!」
さっきはBランクのモンスターが普通に歩いていることに驚かされたばかりだ。それでも、壁から掘り出した素材一つで万象の腕輪まで強くなる。
陸は左手首の腕輪を見ながら、思わず口元を緩めた。
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