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第143話 目立ちすぎた!

 ボス部屋を出たあと、陸たちは来た道をホバーバイクで戻っていった。


 途中で何体かモンスターと遭遇したが、どれもロイヤルナイトがほとんど足を止めずに倒していく。生成部屋を止めたあとも、すでに生まれていたモンスターまですぐ消えるわけではないらしい。


 何度も通った分岐を抜け、やがて入口へ続く広い通路が見えてくる。


「……外、人いるよな」


 大阪城公園でスケルトンを出した時点で、かなり目立っている。しかも、そのまま何日もダンジョンへ入ったままだった。


 陸はロイヤルナイトをストックへ戻し、入口から少し離れたところでホバーバイクも所持アイテムへ収納した。


「このまま出るのは嫌だな……」


 ポイントショップを開き、顔を隠せそうなものを探す。すぐに見つかったのは、妙に丸いタヌキの顔をした仮面だった。もう一つ、目だけやたら大きいウサギの仮面もある。


「……これでいいか」


 タヌキの仮面をつけた瞬間、隣のエリナが陸を見上げた。


「へんなかお!」


「笑うなよ。ほら、エリナも」


「えー」


「俺だけつけても意味ないだろ」


 しぶしぶウサギの仮面を受け取ったエリナが顔につける。大きな目の仮面から耳だけがぴょこんと出ていて、今度は陸が笑った。


「そっちもかなり変だぞ」


「リクも!」


「分かってるって」


 これで隠し切れるとは思っていない。それでも、顔をそのまま出すよりはマシだ。


 二人で揺らいだ空間へ踏み込む。


 視界が歪み、次の瞬間には大阪城公園の景色が広がった。


「……うわ」


 想像していたより人が多い。


 規制線の向こうには警察や自衛隊だけでなく、探索者や報道関係者らしい人間も残っていた。陸たちが現れた瞬間、何人もの顔がこちらへ向く。


「あれ、今出てきた二人……」


「スケルトンの人じゃない?」


「JOHNってあの人じゃね?」


 ざわめきが一気に広がった。


「やっぱ無理か!」


 スマホを向ける人が増える前に、陸はエリナを抱き上げる。身体強化をかけ、人の少ない方へ走った。


「リク、はやい!」


「今は速い方がいい!」


 規制線から十分離れたところでさらに速度を上げる。後ろから声は聞こえたが、追いついてくる人はいない。


 しばらく走り、大きな商業施設が見えたところで中へ入った。


 人混みに紛れて奥まで進み、陸は一度トイレへ入る。所持アイテムに入れていた普段着へ着替え、タヌキの仮面を外した。上から帽子を被り、普通のマスクもつける。


 エリナもウサギの仮面を外し、大きめの上着とフードで目立つ部分を隠した。


「さっきよりはマシだな」


「うさぎ、もうやだ」


「俺もタヌキはもういい」


 服装を変えてから施設を出ると、さっきのように一斉に見られることはなかった。


 そのまま駅へ向かい、新大阪から新幹線へ乗る。


 席に座ると、エリナはフードを深く被り、陸が出した薄い毛布をかけた。隣で丸くなると、しばらくもしないうちに眠ってしまう。


 陸も座席へ身体を預けた。何日もダンジョンに潜り続け、そのまま人目を避けて走り回ったせいか、気が抜けると一気に眠気が押し寄せてきた。


 そのまま陸も目を閉じた。


 それから新幹線を降り、エリナと一緒に家へ戻った。


 玄関の扉を閉めると、ようやく周囲の視線を気にしなくてよくなる。エリナがフードを外し、そのままリビングへ向かっていった。


 陸も上着を脱ぎ、リビングでようやくスマホを開く。


「……え?」


 通知が画面を埋めていた。


 ニュースを開くと、大阪城公園から出てきた二人の映像がすでに流れている。タヌキとウサギの仮面が並んで歩き、その直後、陸がエリナを抱えて走り去るところまで撮られていた。


「早すぎだろ……」


 さらに別の記事を開く。


 そこには数日前、大阪城公園でグランドスライムと戦った時の映像が使われていた。二体のスケルトンを召喚した陸が、かなり近い距離から映っている。


 今回は顔もはっきり見える。


「うわぁ……これ、普通に俺じゃん……」


 記事では、八王子で確認されたスケルトン使いと同一人物ではないか、と書かれている。ランキング一位のJOHNが持つSSSランクスキル、スケルトンラッシュとの共通点にも触れていた。


 SNSを開けば、さらに直接的だった。


『大阪のスケルトン使い、八王子の人と同じじゃない?』


『JOHNのスキルってスケルトンラッシュだろ。これ本人じゃね?』


 まだ誰も佐藤陸という名前まで断定してはいない。それでも、JOHNへ結びつける声は八王子の時とは比べものにならない。


「これ、もうかなりまずいな……」


 画面上部にまた通知が重なる。


 家族や友人からのメッセージだった。開かなくても、短い文面がいくつも並んでいる。大阪にいるのか、自分ではないのか、大丈夫なのか。


「……ごめん。今は無理」


 陸は返信せず、いったんスマホを閉じた。


 今回持ち帰ったものを思い出す。


 八王子で一つ。大阪で一つ。


 別々のダンジョンに、同じ黒い紋様と黒い球体があり、どちらも球体を中心から外すとモンスターの生成が止まった。


 所持アイテムの中には、その黒い球体が二つ入っている。


「……これ、俺が持ってるだけじゃダメだよな」


 何なのかも、どういう仕組みなのかも分からない。だが、二つのダンジョンで同じものが使われていた以上、モンスターが増えていた原因と無関係とは思えない。


 自分で調べられることには限界がある。


 陸は球体を取り出さないまま、所持アイテムを閉じた。


 政府か、きちんと調べられるところへ一度話をした方がよさそうだった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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