第141話 コボルトベヒーモス戦2!
陸が指示を出すと、待機していた三体が一斉に動いた。サイクロンガーゴイルが翼を打って高度を上げ、ダークウルフは通路の右側へ走る。ゴブリンハイハンターは少し後ろで弓を構えた。
その間にも、ロイヤルナイトとコボルトベヒーモスが再びぶつかる。拳を長剣で受け流し、返す刃が肩へ入る。コボルトベヒーモスは構わず踏み込み、反対の拳を振るった。ロイヤルナイトもすぐに身体をずらし、剣を返す。
陸はロイヤルナイトへ身体強化をかけた。次の瞬間、踏み込みが一段鋭くなる。拳の外側へ回り込み、胴へ長剣を叩き込んだ。
「よし!」
コボルトベヒーモスが振り向きざまに腕を振るう。その横から風の渦がぶつかった。上空のサイクロンガーゴイルが放ったサイクロンだ。
巨体を吹き飛ばすほどではない。それでも踏み込んだ身体がわずかに流れ、拳がロイヤルナイトの横を抜ける。その隙に長剣がもう一度肩口を斬った。
ダークウルフの足元で黒い影が大きく揺れ、横へ伸びた。影が地面から起き上がるように形を取り、もう一体の黒い骨のウルフへ変わる。本体と分身が左右へ散った。
コボルトベヒーモスがロイヤルナイトを追おうとすると、右から本体が飛び込み、進路を変えた先には分身が回り込む。どちらも正面から止めようとはせず、踏み込める場所だけを少しずつ狭めていく。
その一瞬をゴブリンハイハンターは逃さなかった。放たれた矢がコボルトベヒーモスの横を抜け、光を弾けさせる。細い光の筋が網のように広がり、太い左腕と胴へ絡みついた。
バインドショット。
巨体の動きが鈍ったところへ、ロイヤルナイトが石床を蹴る。グランドアクセルで一気に懐へ入り、加速を乗せた長剣を脇腹へ叩き込んだ。
「グオオオッ!」
コボルトベヒーモスが吠え、全身へ力を込めた。張りつめた筋肉がさらに盛り上がり、絡みついていた光の筋が一本ずつ引き伸ばされる。次の瞬間、拘束がまとめてちぎれた。
そのまま突き出された拳をロイヤルナイトが長剣で受ける。インパクトナックルの衝撃に押され、数歩ぶん石床を滑った。
コボルトベヒーモスは追わなかった。身体の向きを変え、今度は後方のゴブリンハイハンターへ駆け出す。
「そっちはまずい!」
陸は太い脚へ炎を生じさせた。毛と皮膚を包むように火が燃え上がる。それでもコボルトベヒーモスは止まらない。大きな足が石床を蹴るたび、ゴブリンハイハンターとの距離が縮まっていく。
横から風を叩きつける。上体が少し流れたが、すぐに進路を戻された。さらに足元の石床を崩すと、踏み込んだ足が沈んで巨体が一度だけ揺れる。それでも、そのまま砕けた石を蹴散らして進んでくる。
「これじゃ止まらないか……!」
ダークウルフも横から飛び込むが、コボルトベヒーモスは太い腕を振って追い払った。真正面から止められる相手ではない。
陸は万象の腕輪を雷属性へ切り替えた。
次の瞬間、コボルトベヒーモスの脚から全身へ青白い電撃が走る。
「グッ!?」
巨体がびくりと固まり、前へ出かけていた足が止まった。
「止まった!」
ほんの一瞬だった。それでもロイヤルナイトには十分だった。
グランドアクセルで一気に追いつき、横から長剣を振り抜く。深く入った刃に押され、コボルトベヒーモスの身体が通路の中央へ戻された。
アイアンマッスルで硬くなっていても、ここまで重ねた傷までは消えない。胸にも、肩にも、脇腹にも長剣の跡が残っている。
ダークウルフと分身がすぐ左右へ回り込み、コボルトベヒーモスが前へ出ようとするたびに進路へ入る。上空からサイクロンが吹き下ろされ、巨体の向きがわずかにずれた。
そこへ、もう一度バインドショットが飛ぶ。光の筋が今度は脚と胴へ絡みついた。コボルトベヒーモスが力を込め、拘束を引きちぎろうとする。
陸はその瞬間に雷を重ねた。
青白い電撃が全身を走り、太い腕と脚が一瞬止まる。ゴブリンハイハンターの次の矢には、紫がかった淡い光がまとわりついていた。
パラライズアローが胴へ突き刺さる。
コボルトベヒーモスの全身がびくりと固まった。
「今だ!」
ロイヤルナイトが石床を強く蹴る。身体が一気に前へ弾けた。
コボルトベヒーモスも麻痺を振り切ろうとする。右腕がわずかに持ち上がり、全身の筋肉が再び大きく張る。その前に、ロイヤルナイトが懐へ入った。
グランドアクセルの勢いを乗せた長剣が、グランドフォーススラッシュで傷ついていた胸へ深く食い込む。
ズガァンッ!
衝撃に巨体が大きくのけぞった。ロイヤルナイトは剣を引き抜き、さらに一歩踏み込む。返した長剣が胴を斜めに切り裂き、コボルトベヒーモスの膝が石床へ落ちた。
それでも太い腕が持ち上がる。
ロイヤルナイトが横へ回り、最後にもう一度長剣を振るう。刃が肩口から胸へ入り、巨体が完全に力を失った。
三メートル近い身体が前へ崩れ、重い音を立てて倒れる。
しばらく待っても、もう起き上がらない。
「……やった!」
陸の声が通路に響いた。
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