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第138話 祭壇でレベル上げ!

 祭壇の三方向では、スケルトンたちが次々と押し寄せるモンスターを倒していた。剣や斧がぶつかる音に混じって、時々魔法の弾ける音が響く。


 陸は少し離れた場所へ出した椅子に座り、戦っているグランドナイトを眺めていた。


「そろそろ上がってないかな」


 グランドナイトを確認すると、まだCランクのLv.39だった。


「まだか……」


 しばらく戦闘を見る。


 グランドナイトがゴブリンを斬り、別のスケルトンが横から来たウルフを倒す。何体か片づいたと思えば、少ししてまた三つの入口から新しい群れが現れた。


 陸はもう一度グランドナイトを確認した。まだLv.39のままだ。


「変わってないよな。そりゃそうか」


 数分しか経っていない。


 分かってはいるのに、しばらくするとまた気になってくる。


「リク」


「ん?」


 隣の椅子にいたエリナが陸の膝へ前脚をかけ、そのままよじ登ってきた。陸が身体をずらすと、エリナは膝の上へ収まり、丸くなる。


「なでて」


「はいはい」


 頭から首のあたりをゆっくり撫でると、エリナが気持ちよさそうに目を細めた。


「もっと」


「注文多いな」


 そう言いながら、そのまま撫で続ける。


 少し離れたところでは、三十体のスケルトンが変わらず戦っている。祭壇の青白い光、誘魔の香炉から上がる淡い煙、その周りで続く戦闘。膝の上にはエリナ。


「なんか、この感じ懐かしいな」


「なつかしい?」


「前もここでずっとレベル上げしてたじゃん」


 実際には、そこまで昔のことではない。それでもあの頃から、外へ出られるようになって、キャンプへ行って、現実のダンジョンを二つも探索した。大阪へ来てからも何日も潜り続けている。同じ祭壇へ戻ってくると、もっと前のことだったような気がした。


 しばらくエリナを撫でてから、陸はまたグランドナイトを確認した。


「……まだ39」


「まだ?」


「まだ」


 このまま何分おきに見ても仕方がない。


 陸はモニターとゲーム機を出した。


 今回選んだのは、何人ものキャラクターが狭い足場の上で殴ったり吹き飛ばしたりする対戦アクションゲームだった。


「これ、相手を外に落としたら勝ち」


「おとす!」


「そう。俺を落とせたらな」


 最初はエリナも操作がよく分かっていなかった。走りすぎて自分から端へ落ちたり、陸とは反対側へ攻撃したりする。


「そっち俺いないって!」


「まって!」


「待ったら勝負にならないだろ!」


 何戦かするうちに、エリナも少しずつ操作を覚えてきた。


 陸のキャラクターが端へ追い込まれたところで、エリナが何度もボタンを押す。連続で攻撃を受け、そのまま画面の外まで大きく吹き飛ばされた。


「あっ!」


「かった!」


「今の適当に押してただろ!」


「かった!」


「はいはい、勝ち勝ち」


 嬉しそうに翼を動かしているエリナを見ながら、陸は次の対戦を始めた。


 その途中でも、ふと思い出すたびにグランドナイトを確認した。


 まだ39。


 夕方になっても39。


 何度か遊んでいるうちに、辺りも少しずつ暗くなってきた。


「そろそろ飯作るか」


「ごはん!」


 エリナを膝から下ろし、陸はショップを開いた。


「なんかいいのないかな」


 調理器具を眺めていると、屋外でも使える大きめの調理台が目に入った。二口のコンロにシンクと収納まで付いていて、簡単なキャンプ用品というより、そのまま小さなキッチンを持ち出したような作りになっている。かなりしっかりしている。


「高っ……まあ、これにするか」


 少し高かったが、そのまま購入する。青白い光が集まり、テントの近くに調理台が現れた。まな板やボウル、フライパンも揃え、水と食材を買って並べていく。


「外なのに、普通に料理できるな」


 玉ねぎを細かく切って炒め、粗熱を取ってからひき肉と混ぜる。エリナは調理台の横からずっと手元を見ていた。


「リク、それなに?」


「ハンバーグ」


「はんばーぐ?」


「肉こねて焼くやつ。エリナ好きだと思う」


「おにく!」


「ほら、やっぱり」


 形を整えた肉をフライパンへ並べると、ジュッと大きな音がした。表面に焼き色がつき、ひっくり返す頃には匂いが辺りへ広がっている。


「いいにおい!」


「もうちょい待って」


 中まで火を通して皿へ盛り、ソースをかける。エリナの分は食べやすいよう少し小さくした。


「ほら、できた」


「いただきます!」


 二人で食べ始める。


 エリナは最初の一口を食べると、すぐ次へいった。


「おいしい!」


「うん、うまい」


 食べ終わる頃には、エリナの皿はきれいに空になっていた。


 片づけを済ませた陸は、もう一度グランドナイトを確認した。


 まだ39。


 夜、寝る前に見ても変わらなかった。


「明日には上がっててくれよ……」


 陸はエリナとテントへ入り、その日は眠った。


 翌日も祭壇で狩りは続いた。


 陸たちは食事を作ったり、ゲームをしたり、椅子でのんびりしながら一日を過ごした。何度確認しても、グランドナイトはLv.39のままだった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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