第131話 大阪へ!
テレビに映った大阪城公園では、揺らいだ空間から次々とモンスターが出ていた。ウルフ系が三体続けて飛び出し、その後ろから身体の大きなスライム系まで現れる。
「右! また来るぞ!」
自衛隊員たちの攻撃が集中し、探索者が前へ出る。だが、一体を倒している間にも次が出てきて、防衛線は休む暇がない。画面の端では、負傷した人が二人がかりで後ろへ運ばれていた。
「全然止まってないじゃん……」
陸はテレビの前で画面を見つめた。作並など、少しずつ状況が落ち着き始めた地域も出ているのに、大阪では今も流出が続いている。
「……これ、行った方がいいよな」
「おおさか?」
「うん。行こう」
大阪で何が起きるか分からない。陸は出発前に通常ダンジョンへ寄り、各階層で狩りを続けていたスケルトンたちへ入口まで戻るよう命じた。
全員をストックへ戻したあと、エリナと駅へ向かう。
新幹線で新大阪へ向かう間も、陸はスマホでニュースを確認していた。大阪城周辺の映像は何度更新しても戦闘が続いたままで、盾を持つ探索者が交代して後ろへ下がったり、地面へ座り込んだ人へ水を渡したりする姿も映っている。
「まだ出てる……」
時間が経てば少しは落ち着くかと思ったが、揺らぎから出てくるモンスターは途切れない。映像が切り替わるたび、同じ防衛線で別の人間が前へ出ていた。
新大阪駅へ着くと、二人は電車で大阪城の近くまで移動し、そこから歩いた。近づくにつれて道路の封鎖が増え、警察車両や自衛隊車両が行き交っている。遠くからでもサイレンと大きな衝突音が聞こえた。
「リク、あっち」
さらに進むと規制線が見えた。
「ここから先は危険です! 離れてください!」
警察官の声が飛ぶ。その向こう、木々の隙間から見える空間が水面のように揺れ、奥の景色が大きく歪んでいた。
「あれか……」
その前では何十人もの人間が戦っている。炎や氷が飛び、盾がモンスターを受け止めるが、揺らぎからはまたウルフ系が飛び出してきた。
前衛の探索者が盾で受け止め、横から別の探索者が斬りつける。そのすぐ後ろでは、座り込んだ人が腕を押さえながら呼吸を整えていた。
「これ、ずっとやってるのかよ……」
ニュースで見ていた時より、近くで見る方がきつい。モンスターを倒しても、その奥からまた次が出てくる。
陸はスケルトンを召喚しようとして、手を止めた。
「……いや、さすがにスケルトンはまずいよな」
八王子では巨大なスケルトンと人影までニュースに映っている。ここで同じようなスケルトンを出せば、さすがに目立ちすぎる。
まだ戦える人は大勢いる。陸は防衛線を見ながら、まずは万象の腕輪で支援することにした。
前衛で盾を構えていた探索者へ身体強化をかける。その男の動きが一段鋭くなり、押し込まれかけていた盾が持ち直された。
「おっ……!?」
強化された本人が一瞬だけ自分の腕を見る。その横から別の探索者がウルフへ斬りかかり、男もすぐに前へ向き直った。
少し離れた場所では、腕を押さえて膝をついた探索者がいる。陸は人混みの後ろから回復をかけた。
「え……治ってる?」
傷が塞がっていくのを見て、探索者が驚いたように腕を見る。
その間にも、防衛線の端を抜けようとしたウルフが走り込んできた。陸はその身体へ炎を生じさせる。勢いを失って転がったところへ探索者が追いつき、そのまま仕留めた。
「今の炎、誰だ?」
何人かが周囲を見回す。
だが、別の場所ではもう次のウルフが前衛へ飛び込んでいた。
陸は横から風をぶつけて進路をずらす。盾を構えていた自衛隊員の正面から外れたところへ、待っていた攻撃が一気に集中した。
さらに奥ではスライムが前衛へ体当たりしようとしていた。
陸は進路へ金属の板を作った。
ドンッ!
ぶつかったスライムの身体が大きく潰れ、勢いが止まる。
「今だ!」
近くにいた探索者たちが一斉に攻撃した。
そこで終わりではない。右側では押し込まれていた探索者へ身体強化をかけ、後ろへ下がった負傷者には回復。左側から抜けようとしたウルフには炎を生じさせ、その後ろの一体には風をぶつける。
戦場のあちこちで、少しずつ動きが変わっていった。
「なんか、さっきより押し返せてないか?」
「支援入ってるぞ! 誰だ!?」
崩れかけていた前衛が持ち直し、後ろにいた人間が入れ替わるように前へ出ていく。倒されたモンスターが増え、一度だけ揺らぎの前に空間ができた。
「お……」
陸が少しだけ肩の力を抜く。
だが、その空間は長く続かなかった。
揺らいだ向こう側から、またウルフ系が二体飛び出す。その後ろでは、別の影も動いている。
「まだ来るのかよ……」
防衛線は持ち直した。
それでも、流出そのものは止まっていなかった。
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