第132話 Cランク出現!
万象の腕輪で支援を続けている間にも、揺らいだ空間からモンスターは途切れずに出てきていた。
前衛がウルフを押し返し、その横では探索者たちがスライムへ攻撃を集中させる。さっきより防衛線は安定しているが、それでも倒した分だけ奥から次が現れる。
「これ、本当に止まらないな……」
陸が揺らぎの向こうを見ていると、歪んだ景色の奥で大きな影が動いた。
「ん?」
次の瞬間、巨大な青黒い身体が揺らぎを押し広げるように現れる。
「でかっ!」
今まで出てきたスライムとは比べものにならない。人の背丈を大きく超える身体が地面へ広がり、ぶるりと震えるたびに表面が大きく波打っている。
陸はすぐに鑑定した。
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グランドスライム
ランク:C
Lv.34
HP 438
MP 108
筋力 164
耐久 228
敏捷 46
賢さ 72
【スキル】
アシッドボディ
スライムプレス
リジェネレーション
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「Cランク!? マジかよ!」
思わず声が出た。ゴブリンロードと同じCランクが、今は普通に外へ出てきている。
「Cランクだ!」
「前衛、下がれ!」
「離れろ! 近づくな!」
防衛線の空気が一気に変わった。それまで前へ出ていた探索者たちが後退し、自衛隊員も距離を取る。
グランドスライムは構わず身体を膨らませ、そのまま前へ滑るように進み始めた。途中で炎や斬撃が何発も当たり、青黒い表面が大きくへこむ。
だが、崩れた場所がすぐに盛り上がり、元の形へ戻っていった。
「再生してる……!」
鑑定に出ていたリジェネレーション。攻撃は通っているのに、それ以上の速さで身体が戻っていく。
陸は一瞬だけ周囲を見る。ここでスケルトンを出せば、八王子の映像と結びつけられる可能性は高い。
でも、目の前ではCランクが防衛線へ迫っている。
「……もう隠してる場合じゃないか!」
迷うのをやめ、二体のスケルトンを精鋭化して召喚する。
現れたのはゴブリンハイウィザードとゴブリンアークメイジ。どちらも骨の表面と眼窩の奥に淡い金色の光を宿していた。
「スケルトン!?」
「あれ、八王子の……!」
周囲から声が上がる。
「やれ!」
ゴブリンハイウィザードが杖を向けた。
杖の先に赤い光が集まり、グランドスライムの周囲に小さな火がいくつも灯る。次の瞬間、複数の炎が一斉に巻き上がり、巨大な身体を包み込んだ。
ゴオオオッ!
青黒い表面が一気に沸き立ち、グランドスライムの身体が大きく崩れる。それでも炎の内側で液体状の身体が盛り上がり、また形を戻そうとしていた。
「まだ再生するのかよ!」
その横で、ゴブリンアークメイジも杖をグランドスライムへ向ける。
杖の先に白い冷気が集まり、その中心から鋭い氷の先端が伸び始めた。周囲へ白い霧を広げながら氷槍が一気に大きくなり、完成した瞬間、真正面へ撃ち出される。
ガァンッ!
巨大な氷槍が燃えている身体の中心へ突き刺さった。衝撃でグランドスライムの巨体が大きく揺れ、凍りついた部分から動きが鈍る。
そこへフレイムストームの炎がさらに巻き上がった。
崩れた身体が今度は戻らない。炎の中で何度か大きく波打ったあと、グランドスライムは地面へ広がるように倒れ、そのまま動かなくなった。
「倒した……?」
「よし!」
陸も思わず声を上げた。
Cランクが弱いわけじゃない。自分でゴブリンロードと戦った時、その強さは嫌というほど分かっている。
それでも、精鋭化したCランクを二体ぶつければ押し切れる。
「……いや、今はそれどころじゃないな」
陸はすぐに揺らぎへ視線を戻した。問題は、Cランクまで外へ出てきたことだ。
このまま外で待って、出てくるたびに倒していても終わらない。
「リク?」
「中、見てくる!」
二体のスケルトンを連れたまま揺らぎへ向かう。
「待ってください! 危険です!」
後ろから声が飛んできたが、陸は足を止めなかった。エリナもすぐ横をついてくる。
揺らいだ空間へ踏み込んだ瞬間、視界が大きく歪んだ。数歩進むと景色が変わり、その先には広い石造りのダンジョンが続いている。
「おお……」
天井はかなり高く、通路もホバーバイクでそのまま走れそうなほど広い。灰色の石壁が奥まで続き、少し先では道がいくつかに分かれていた。
だが、ゆっくり見ている暇はない。
正面の通路から、何体ものモンスターが走ってくる。ウルフ、ゴブリン、コボルト。その後ろにはスライムもいた。
「やっぱり中から来てるのか!」
陸の指示を受け、ゴブリンハイウィザードが前方へ杖を向ける。赤い光が集まり、群れの足元に小さな火がいくつも灯った。
炎が一斉に巻き上がり、先頭のモンスターたちをまとめて包む。その横を抜けようとしたウルフには、アークメイジの杖先から撃ち出された巨大な氷槍が突き刺さった。
それでも奥から足音は途切れない。
倒れた群れのさらに向こうから、また別のモンスターたちがこちらへ向かってくる。
「うわ、結構いるな……!」
外へ出ていたのは、この中から流れてきた一部だけらしい。
陸は奥へ続く広い通路と、左右へ分かれた道を見た。このまま放っておけば、またCランクが外へ出るかもしれない。
「……よし。とりあえず、奥まで調べるか」
エリナが隣で奥を見つめる。
前では二体のスケルトンが、次のモンスターへ向かっていった。
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