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第129話 緊急報道!

「現在、日本各地でスタンピードが発生しています」


 画面には日本地図が映し出され、北から南までいくつもの地点が赤く示されていた。


「各地のダンジョンからモンスターが流出し、周辺地域では避難や道路の封鎖が続いています。現在確認されているモンスターは、FランクからDランクが中心です」


「まず、宮城県仙台市青葉区、作並の山間部に出現した作並ダンジョンです」


 画面が山道へ切り替わる。道路の先では、二十人近い人々がモンスターと戦っていた。


 剣を持ったゴブリン系の一体が踏み込み、正面に張られた透明な壁へ刃を叩きつける。


 ガンッ!


「くっ……!」


「止めた! 今!」


 横から火球が飛び、肩口で弾けた。さらに別の方向から氷の塊がぶつかり、ゴブリンの身体が大きく揺れる。


「右から来るぞ!」


 別のゴブリン系とコボルト系が山道を駆け下りてくる。数人がそちらへ向きを変え、地面からせり上がった土の壁で進路を塞いだ。


「前、交代!」


「分かった!」


 透明な壁が消えると同時に、別の男が大きな盾を構えて前へ出る。振り下ろされた剣が盾へぶつかり、男の身体が後ろへ滑った。


「うわっ!」


「下がれ! 怪我してる!」


 二人が駆け寄って男を後方へ引いていく。その間にも炎や氷、矢が次々と飛び、ようやく正面のゴブリンが膝をついた。


「今だ!」


 数人が一斉に武器を振り下ろす。ゴブリンが倒れると、すぐ後ろでは別の集団がウルフ系のモンスターを食い止めていた。


「現地では警察や自衛隊に加え、ダンジョン攻略経験のある探索者や周辺住民も戦闘に参加しています」


 スタジオでは、アナウンサーの隣に座るダンジョン研究者が映像を見ていた。


「Dランクが混じると、やはり少人数では厳しいのでしょうか」


「そうですね。相性のいいスキルを持っている人が揃えば別ですが、一般的にはかなり危険です。今のように複数人で動きを止め、攻撃を重ねる形が現実的だと思います」


 続いて大阪からの映像へ切り替わった。


「大阪市中央区、大阪城公園付近に出現した大阪城ダンジョンです」


 公園の一角で、何もない空間が水面のように揺れている。その向こうの景色は大きく歪み、揺らぎの中からスライム系やウルフ系のモンスターが次々と現れていた。


 周囲ではサイレンが鳴り、道路には規制線が張られている。警察車両の先では自衛隊員や探索者たちが防衛線を作り、飛び出したモンスターを押し返していた。


「現実世界に出現したダンジョンには、洞穴のようなものだけでなく、このように空間そのものが歪んでいるように見える場所も確認されています」


 日本各地の状況が伝えられる一方、海外からも同じような映像が入り続けていた。


 アメリカでは郊外の道路をモンスターの群れが走り、軍と探索者たちが迎え撃っている。韓国や中国でも複数の地域で避難が続き、ヨーロッパでは道路や鉄道の封鎖が相次いでいた。アフリカや中央アジアからも、同様のスタンピードが発生しているという報告が届いている。


「世界各地で対応が続いていますが、今のところ確認されている中で最も高いランクはDランクです」


「もし、Cランクが地上に現れた場合はどうなるのでしょうか」


「Cランクとの実戦経験がある人間自体、現在の地球ではほとんどいません。少人数での対応はまず厳しいでしょう。ただ、自衛隊などの火力や、大人数のスキルを組み合わせた場合にどこまで通用するのかは、まだ分かっていません」


「現在の体制で止められるかどうかも分からない、と」


「はい。被害がどこまで広がるのかも予測できません」


 それからしばらくして、東京都西部から新しい情報が入った。


「八王子市西部の山間部に出現した八王子ダンジョン周辺で、ゴブリンの流出が止まった状態が続いています」


 少し前までの映像では、山道を何体ものゴブリンが下っていた。だが現在、同じ場所に新しい姿はない。


「警察や自衛隊などが周辺の調査を進めています。また、報道各社のドローンもゴブリンが来た方向を追っています」


 その後、山へ向かっていたドローンの一機が、発生源と思われる場所を捉えた。


 木々の間を抜けた先で、山肌の一部が大きく裂けたように開いている。その奥には暗い洞穴が続き、人が何人も並んで通れそうな入口の前には、二体の巨大な白骨が立っていた。


「……これは、スケルトンでしょうか」


 一体は大きな武器を持ち、もう一体も人間をはるかに上回る体格をしている。二体とも洞穴の前を離れず、外へ出ようとするものを待ち構えるように立っていた。


 やがて洞穴の奥から、数体のゴブリンが走り出してくる。その中には金属鎧を身につけ、剣と盾を持った大柄な個体もいた。


 巨大なスケルトンの一体が数歩前へ出る。


 武器が振られた。


 大柄なゴブリンの身体が横へ吹き飛び、地面へ転がる。続けて出てきた別のゴブリンも、もう一体のスケルトンに一撃で倒された。


 スタジオが一瞬静かになった。


「……今の、Dランクのゴブリンナイトですよね?」


「はい」


「一撃ですか……」


 倒れたゴブリンナイトを映したまま、カメラは入口の二体へ戻る。


「今のスケルトン、何かスキルを使ったように見えましたか?」


「いえ。少なくとも映像を見る限り、ただ武器を振っただけです」


 作並では、多くの人間が声を掛け合い、何度も攻撃を重ねていた。だが今のスケルトンは、Dランクのゴブリンナイトを一撃で倒している。


「今はゴブリンを攻撃していますが、もしあの二体が山を下りて市街地へ向かった場合は?」


「かなり危険です。少なくとも一体はDランクを一撃で倒しています。もう一体も通常のゴブリンを簡単に倒していましたから、現在の戦力で被害を抑えられるかは分かりません」


 二体はそのまま洞穴の入口を塞ぐ位置で動きを止めた。


 その後、番組は別の地域で続くスタンピードの状況へ移った。各地で避難や戦闘が続き、新しい情報が次々と入ってくる。


 しばらくして、アナウンサーの手元へ新しい情報が入った。


「ここで速報です。先ほど巨大なスケルトンが確認された、八王子ダンジョンから新しい映像が入ってきました」


 画面が再び山中の洞穴へ切り替わる。


 入口の二体はまだ同じ場所に立っていた。その前を映していたドローンが少し角度を変えると、洞穴の奥から別の白骨が姿を見せる。


 四足の獣型が一体、その後ろからもう一体。さらに続けて、別の白骨も外へ出てきた。


 そして、その奥から黒と銀の車体がゆっくりと現れる。


 その上に、人影が見えた。


「人間です。洞穴の中から、人間が出てきました」

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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