第128話 ゴブリンロード戦2!
やがて、ゴブリンロードを包んでいた銀色の光が薄くなった。
「今!」
陸が左手を前へ出すと、八本の金属槍が一斉に走った。ゴブリンロードが大剣を振って二本を弾き、さらに一本が肩の鎧に当たって横へ逸れる。
だが、残りは止まらない。
一本が太ももへ突き刺さり、もう一本が脇腹の鎧を貫く。続く二本が胸と肩へ食い込み、最後の一本が大剣を持つ腕を大きく弾いた。
「グガァァッ!」
巨体が初めて大きく崩れる。陸はそこで炎へ意識を切り替え、脇腹へ刺さった金属槍の周囲から一気に燃え上がらせた。続けて胸、肩、脚。傷ついた場所を中心に炎が生まれ、ゴブリンロードの全身を包んでいく。
「燃えろ!」
炎の中で大剣が一度だけ持ち上がり、陸も反射的に身構える。だが、振り下ろされる前に腕が止まった。
大剣が石床へ落ち、続いて巨体も膝から崩れてそのまま前へ倒れ込んだ。
陸は少し離れたまま待った。炎が消えても、ゴブリンロードは動かない。
「……倒した」
「リク!」
入口側からエリナが駆け寄ってくる。
「Cランク、俺一人でも倒せた……!」
陸はそのままエリナを抱き上げた。エリナも嬉しそうに翼を広げ、陸の腕の中で身体を弾ませる。
ヘヴィブレイクを金属で止め、風や土で動きを崩し、最後は金属槍と炎で倒した。同じ属性でも、使い方を変えるだけでできることが全然違う。
「これ、もっと色々できそうだな」
「もっと?」
「うん。使い方次第で、まだ全然変わりそう」
エリナを下ろした、その時だった。
ボス部屋の奥で、小さな光の粒がいくつも現れる。
「ん?」
粒は一か所へ集まりながら少しずつ形を作り、やがて木箱の輪郭になっていく。
「たからばこ!」
「お、こっちでも出るんだ」
光が消えると、その場には一つの宝箱が残っていた。陸が蓋を開けると、中には見覚えのあるポーションが入っている。
「あ、ポーションか」
そのまま所持アイテムへ入れた。
続けてゴブリンロードをスケルトン化し、白骨へ変わった巨体もストックへ戻す。やることが一段落したところで、陸は膝に手をついて息を吐いた。
「自分で戦うの、結構疲れるな……」
スケルトンに任せて後ろから指示を出す時とは、身体に残る疲れが全然違う。陸は何度か深く息をして、ようやく肩の力を抜いた。
「つかれた?」
「ちょっとな。でも勝てたし、よし!」
少し休んでから立ち上がり、陸は広い岩場を見回す。
「……で、これどうやって帰るんだ?」
「かえる?」
「今までのダンジョンなら、ボス倒したら次に進めたんだけど……」
少し待ってみても、新しい道が開く様子はない。
「戻るしかないか」
サモンマップを開き、洞穴の各所にいる探索班へ入口まで戻るよう命令する。陸もホバーバイクを取り出してエリナを前へ乗せ、待機させていた二体のスケルトンと一緒に来た道を引き返した。
サモンマップに残った経路を辿って分岐まで戻ったところで、陸は一度ホバーバイクの向きを変える。
「一応、あっちも見ていこう」
生成部屋へ続く通路へ入り、行き止まりの広間まで戻る。床に広がっていた黒い紋様は暗いままで、光の粒が集まる様子もなかった。
「ちゃんと止まったままだな」
それだけ確認すると、再び分岐へ戻って入口を目指す。途中では探索班も一組、また一組と帰還経路へ合流し、洞穴の中は行きに比べてかなり静かになっていた。
やがて暗い岩壁の向こうに、白い外の光が見える。
「あ、そと!」
「やっと戻ってきた!」
ホバーバイクが山肌に開いた大きな洞穴を抜ける。頭上には青空が広がり、木々の間を抜けてきた風が頬に当たった。ずっと岩壁ばかり見ていたせいか、それだけで妙にほっとする。
陸は洞穴から少し離れたところでホバーバイクを止め、地面へ足をついた。振り返れば、さっきまでいた暗い洞穴が山肌にぽっかりと開いている。
「はぁー……終わったー!」
ゴブリンが生まれていた場所も止めた。Cランクのゴブリンロードも倒した。暗い洞穴から外へ戻ってきた瞬間、張り詰めていたものが一気に抜けていく。
「いやー、よかった」
大きく息を吐いた、その時だった。
ブーン、と聞き慣れた小さな羽音が頭上から聞こえる。
「ん?」
顔を上げると、少し離れた上空にドローンが一機浮かんでいた。さらにその横にも、もう一機いる。
「……ドローン? なんでこんなところに……」
洞穴の入口にはオークウォーロードとハイオーガが立ち、その周囲へ戻ってきた探索班のスケルトンたちも集まり始めている。
上空のドローンは、どう見てもこちらへ向いていた。
「…………」
陸はしばらくその機体を見上げる。
「……これ、撮られてる?」
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