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第126話 スタンピードの発生源!

 ただ、今の陸や探索部隊なら足を止めるほどではない。


 サモンマップでは、一番遠くまで進んでいた一組の印がさらに先へ伸びている。陸はその経路を追ってホバーバイクを走らせた。


 少し進むと前方から短い戦闘音が響き、速度を落として曲がり角を抜けると、探索班のウルフ系とバット系がちょうどゴブリンナイトを倒したところだった。二体は止まらず、そのまま先へ進んでいく。


「まだ奥か」


 陸たちも後を追う。しばらく進むと狭かった通路が急に開け、その先に今までよりずっと広い空間が現れた。


「お……」


 陸はホバーバイクを止め、エリナと一緒に降りる。


 広間の床には、黒い線が複雑に重なった大きな紋様が広がっていた。いくつもの円と線が淡く光り、その中心の少し上には、真っ黒な球体が浮かんでいる。


「……なんだこれ」


「まっくろ」


 球体は床に触れていない。両手で抱えられそうな大きさで、表面には模様も凹凸もなく、綺麗な球形のまま空中に静止していた。


 陸が少し近づいた時、光る紋様の周囲に小さな粒が現れた。粒は球体の近くへ集まり、少しずつ一つの形を作っていく。


「ん?」


 最初に脚。次に胴体。腕と頭が続き、最後に緑色の肌が現れた。


「ゴブリン……」


「でてきた!」


 何もなかった場所から、一体のゴブリンがそのまま作り出された。さらに別の場所にも光の粒が集まり始める。


 陸が左手を向けると、生まれたばかりのゴブリンの身体が炎に包まれ、数秒もしないうちに動かなくなった。


「ここで増えてるのか……」


 床いっぱいに広がる光る紋様。その中心上空に浮かぶ球体。そして、その周囲で次々と形になろうとするゴブリン。どう見ても無関係には思えなかった。


 陸は少し離れた位置で左腕を上げ、万象の腕輪へ意識を向ける。球体の横から風を当て、ゆっくり押した。


 最初はわずかに揺れただけだったが、少し風を強めると、黒い球体が紋様の中心から横へずれていく。


 中心を外れた瞬間、球体が支えを失ったように落ちた。


 コトッ、と硬い音を立てて床へ転がる。


「あっ!」


 同時に、床へ広がっていた紋様の光が消えた。空中へ集まっていた光の粒も一斉に薄くなり、途中まで脚の形になっていたものが崩れるように消えていく。


 陸は風を止め、そのまま少し待ったが、新しい光は現れない。


「とまった!」


「……やっぱり、あの球が関係してるみたいだな」


 正体までは分からない。ただ、球体を紋様の中心から外した途端、紋様の光もゴブリンの生成も止まった。


 陸は床に落ちた黒い球体へ近づく。


「所持アイテムに入るかな」


 収納を試すと、球体がその場から消えた。


「お、入った」


「なくなった!」


 しばらく待ってみても、紋様が再び光ることはなく、光の粒も現れない。


「よし。新しく増えるのは止められたかな」


 少なくとも、この場所から新しいゴブリンが生まれ続けることはなさそうだ。


 広間を見回すと、来た道以外に通路はない。ここは洞穴の奥にできた行き止まりだった。


「戻るか」


 陸はエリナをホバーバイクへ乗せ、来た道を引き返した。


 少し戻ったところでサモンマップを開く。別方向へ進んでいた探索班の一組が、かなり離れた別の道の先で止まっていた。


「今度はあっちか」


 記録された経路を辿って分岐まで戻り、別の通路へ入る。何度か曲がりながら進んでいくと、やがて前方に探索班の二体が見えた。


 その先で道は行き止まりになっている。


 ただし、岩壁で終わっているわけではなかった。


「扉……?」


 洞穴の奥に、見覚えのある大きな扉が立っている。これまでダンジョンで何度も見てきた、ボス部屋の入口によく似ていた。


 陸が近づくと、目の前に表示が浮かぶ。


━━━━━━━━━━━━━━

【ボスエリア】


ゴブリンロード ×1


入場しますか?

━━━━━━━━━━━━━━


「やっぱボス部屋じゃん!」


「ぼす?」


「うん。中に一体いるみたいだな」


 陸が入場を選ぶと、重い音を立てて大扉が開いた。


 その先は広い岩場になっていた。


 奥に、一体だけ大きなゴブリンが立っている。これまで見たゴブリンより明らかに大きく、厚い金属鎧を身につけ、片手には幅広の大剣を持っていた。


 陸は鑑定を使う。


━━━━━━━━━━━━━━

ゴブリンロード

ランク:C

Lv.32


HP  418

MP   96

筋力 188

耐久 172

敏捷 104

賢さ  82


【スキル】

ヘヴィブレイク

アイアンガード

━━━━━━━━━━━━━━


「Cランク!?」


 現状、地球でCランクのモンスターとまともに戦った経験がある人間はほとんどいない。外へ出ていたF、E、Dランクとは明らかに次元が違う。


 ただ、陸にとっては別だった。


 ゴブリンロードのステータスを見ながら、陸は左手首の万象の腕輪へ目を落とす。


「……ちょうどいいかも」


「なにが?」


「俺がどこまで戦えるか、試してみる」

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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