第121話 キャンプ旅行へ!
世界更新から二週間ほどが経った。
街を走る車は増え、電車やバスもほとんど元通りに動いている。店や会社も次々と営業を再開し、以前の日常がかなり戻ってきていた。
昼過ぎ、陸はリビングのソファでスマホを見ていた。
隣ではエリナが窓の外を眺めている。この二週間で近所には何度も出かけたが、まだ街から遠くへ行ったことはない。
「エリナ、今度ちょっと遠くまで行くか?」
エリナがすぐに振り返った。
「いく!」
「何したい?」
「んー……」
少し考えたあと、エリナが顔を上げる。
「きゃんぷ!」
「キャンプ?」
陸は思わず聞き返した。
「前も何回かやっただろ。そんな気に入ってたの?」
「うん! てんとでねる!」
「そこなんだ」
「おそとでごはんも!」
「まあ、それは分かる」
前にキャンプをした時は、どちらもダンジョン攻略の途中だった。泊まる必要があるからテントを張り、そのついでに食事やゲームを楽しんでいた。
「じゃあ今度は、ちゃんとキャンプしに行くか」
「やった!」
返事は一瞬だった。
陸はテーブルへノートパソコンを持ってきて、エリナと一緒にキャンプ場を探し始めた。
画面には山や川の写真が次々と出てくる。ログハウスが並んでいる場所もあれば、広い芝生へテントを張る場所もある。
「こういう家に泊まるのもあるけど」
陸が画面を見せると、エリナは少し眺めてから首を横に振った。
「てんとがいい!」
「やっぱそっちか」
それなら、以前使った大きなテントをそのまま使える。
「川あるところとかどう?」
「いきたい!」
「じゃあ川あるところな」
条件を絞って探していくと、家から車で一時間半ほどの山にキャンプ場が見つかった。近くには川があり、テントを張る区画もある。焚き火も決められた道具を使えばできるらしい。
予約状況を見ると、翌日でもかなり空いていた。
「明日いけるじゃん」
「あした!?」
「空いてるし、行くか」
「いく!」
世界更新後、山間部ではモンスターの目撃情報も増えている。その影響もあって、以前ほど人が戻っていない場所も多いらしい。キャンプ場の案内にも、周辺でモンスターを見かけた場合は近づかないよう注意書きが出ていた。
陸はそれを確認して、そのまま予約を済ませた。
「よし。決まり」
「きゃんぷ!」
「何するかも決めとくか」
エリナと画面を見ながら、今度はキャンプでやることを考えていく。
「川で遊んで、夜はバーベキューして……焚き火もやるか」
「たきび?」
「火つけて、外でゆっくりするやつ」
「やる!」
「あと、山なら星もよく見えるかもな」
「ほし、みたい!」
「夜になったら空見よう」
「うん!」
エリナは何を聞いても楽しそうに頷いていた。
「じゃあ、だいたい決まったな」
陸は必要なものを考えながらショップを開く。
テントやマット、寝具、テーブルや椅子は前に使ったものが所持アイテムに残っている。それ以外の食材や飲み物、バーベキュー用品、焚き火に使う道具や消耗品をポイントで買っていく。
「肉、多めでいいか」
「いっぱい!」
「だと思った」
買ったものを一通り確認すると、準備はほとんど終わった。
「明日、朝から出るか」
「はやくねる!」
「まだ昼だぞ」
「……まだ?」
「まだ」
陸が笑うと、エリナは少し残念そうに窓の外を見た。
翌朝。
二人はアパートを出て、駐車場へ向かった。
陸が自分の車のドアを開けると、エリナは迷わず助手席へ乗り込む。
「じゃあ行くか」
「きゃんぷ!」
車を出し、まずは街の中を走る。
しばらくして高速道路へ入ると、周囲を何台もの車が流れていった。何車線もある道路を車が途切れず走っていて、エリナは助手席の窓からずっと外を眺めている。
都市部へ入ると、今度は大きなビルが何本も並んだ。
「リク、あれ!」
「でかいだろ」
「いっぱい!」
高い建物が続いていた景色も、走っているうちに少しずつ変わっていく。
ビルが減り、住宅が減り、遠くに見えていた山がだんだん近づいてきた。高速を降りる頃には、道路の両側にも木が増えている。
「やま!」
「もうすぐ着くぞ」
それからしばらく山道を走り、昼前にはキャンプ場へ到着した。
受付の建物の前に車を止める。
周囲には木々が広がり、その向こうから水の流れる音も聞こえていた。駐車している車は少なく、思っていた通り人もあまりいない。
受付を済ませ、案内された区画まで車を移動させる。
広い場所へ着くと、エリナがすぐに助手席から外へ出た。
「リク! ここ?」
「ここ」
エリナは周りの山や木々を見回し、嬉しそうに翼を動かした。
「じゃあ、まずテント出すか」
「てんと!」
陸は車の横で所持アイテムを開いた。
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