第120話 初めてのコンビニ!
世界更新から数日が経った。
街には車が戻り、バスや鉄道も少しずつ動き始めていた。店も開き始め、配送トラックを見かけることも増えている。一方で、外のモンスターやダンジョンの報告も増え続けていた。
陸も、第11階層を攻略してから止めていた狩りを再開している。スケルトンたちをいくつかの階層へ送り、集まったポイントで万象の腕輪に使えそうな素材や装備を買っては試していた。人目のない場所で、外でもスケルトンを問題なく使えることも確認してある。
そんな日の昼前、ソファでスマホを見ていた陸の指が止まった。
「お、コンビニ開いたんだ」
近所の店が、今日から営業を再開したらしい。
「エリナ、コンビニ行くか?」
「こんびに?」
「食べ物とか飲み物とか、いろいろ売ってる店」
「いく!」
陸はスマホをポケットへ入れて立ち上がった。
外へ出ると、数日前より道路を走る車が増えていた。歩道を歩く人も増え、店の前には荷物を下ろしている配送トラックも見える。エリナもこの数日で近所を何度か歩いているが、車が近くを通るたびにまだ楽しそうに目で追っていた。
コンビニまでは歩いて数分だった。
入口へ近づいた瞬間、自動ドアが左右へ開く。
「わっ」
エリナが足を止める。閉じかけたところへもう一度近づき、また開いたドアを見上げた。
「勝手にあいた!」
「近づくと開くんだよ」
中へ入ると、エリナの視線がすぐに棚へ向かった。
「いっぱいある!」
お菓子、パン、飲み物、冷蔵ケース。ところどころ商品が少ない棚もあったが、それでも店内にはかなりの品物が並んでいる。冷蔵ケースからは低い音が聞こえ、棚ごとに色も形も違う商品がびっしり並んでいた。
陸がカゴを持って後ろをついていくと、エリナは右を見たと思えばすぐ左へ寄り、気になるものを見つけるたびに足を止めた。甘いものとしょっぱいものの違いや、中に何が入っているかを簡単に教えていくうちに、カゴの中身も少しずつ増えていく。
「これ、あまい?」
「甘いよ。それ前に食べたクッキー入ってるやつ」
「クッキー!」
「食べる?」
「うん!」
すぐに決まった。
パンの棚では袋越しに中を覗き込み、いくつか見比べたあとでクリームの入ったものを選ぶ。陸も横から自分の分を一つ取り、別の棚では久しぶりに食べたくなった菓子を見つけてカゴへ入れた。
「リクの?」
「俺の。俺も買う」
エリナはそれを聞くと、また棚へ顔を戻した。自分だけが選んでいるわけではないと分かったからか、その後は陸のカゴの中まで覗きながら店内を回っていく。
冷たい飲み物が並ぶ棚では透明なボトルや色のついたジュースを見比べ、デザートの前ではしばらく足を止めた。全部を細かく聞くことはなく、陸が甘いものだと教えると、気になったものだけを選んでいく。
そのまま店内を回っていると、エリナが急に鼻を動かした。
「リク、いいにおいする」
「ああ、あっちだな」
匂いの先にあったのは、レジ横のホットスナックだった。さっきまで棚を見ていたエリナがすぐそちらへ向かい、ケースへ顔を寄せる。
「これ、にく?」
「そう。どっちもうまいよ」
「りょうほうたべる!」
「分かった」
からあげとフライドチキン、それからもう一つ気になったものを選ぶ。会計へ向かう頃には、カゴもかなり埋まっていた。
レジには現金や電子決済と並んで、ポイント払い対応の表示も出ている。
「もうポイント使えるんだな」
陸はそのままポイントで支払いを済ませ、袋を受け取った。
店を出ても、エリナは袋から漂う匂いが気になるらしく、何度もそちらへ顔を向けている。
「近くの公園で食うか」
「いま食べる?」
「温かいうちにな」
「いく!」
少し歩いた先の公園で、二人は空いているベンチへ座った。
袋を開けると、エリナは迷わずからあげを選ぶ。陸が渡すと、最初は熱そうに少しだけかじり、すぐにもう一口食べた。
「あつい。でも、おいしい!」
「ゆっくり食えよ」
「うん!」
返事のわりに食べる速さはほとんど変わらない。二つ目へ前脚を伸ばしたあと、今度は袋の中を覗いて次を探し始める。
その後も温かいものを食べたかと思えば、甘いパンやプリンへ移り、気に入ったものを見つけるたびに翼が小さく動いた。陸も隣で自分のパンや菓子を開け、時々エリナが選んだものを一口もらいながら食べていく。
しばらくすると、最初は膨らんでいた袋もかなり軽くなっていた。
「まだ食うの?」
「まだある!」
「そうだな」
エリナは嬉しそうに次の袋を覗き込み、陸も笑いながら自分の飲み物へ手を伸ばした。
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