第118話 外へ出る前夜!
バーベキューを終えたあとも、陸とエリナはしばらくベランダでだらだら過ごしていた。
気づけば、外はすっかり暗くなっている。
空では相変わらず雲が流れ、遠くで何度か雷が光っていた。昼間ほど派手ではないが、世界更新が続いていることだけはすぐに分かった。
陸は片づけを終えると、エリナと一緒にリビングへ戻った。
「……明日の朝か」
スマホを見る。
世界更新が終わるのは、朝六時。
あと一晩寝れば、玄関から外へ出られる。
「そうだ。連絡しとくか」
陸はスマホから母親へ電話をかけた。
『もしもし?』
「母さん? 明日の朝から外出られるみたい」
『知ってる。こっちも表示出てるわよ』
「そっちもか」
『陸、明日どうするの?』
「六時になったら一回外出てみる。近所どうなってるか見たいし」
『こっち来る?』
「あー……でも明日はやめといた方がよくない? みんな一斉に出るだろうし、道路も電車もどうなってるか分かんないじゃん」
『それもそうね』
「落ち着いたら一回そっち行くよ」
『分かった。無理だけはしないでね』
「分かってるって」
少しだけ近況を話してから電話を切る。
「ママ?」
エリナが隣から聞いてくる。
「俺の母さん」
「会いにいく?」
「そのうちな。明日は人も多そうだし」
エリナは少しだけ黙ってから、陸を見る。
「エリナのママも、いるかな」
「いるよ。いつか会えるから」
「……うん」
陸はエリナの頭を軽く撫でると、今度はグループLINEを開いた。
「うわ、めっちゃ来てる」
海斗、蓮、虎太朗とのトークには、文明攻略戦の間に送られたメッセージが大量に溜まっていた。
『JOHNまた上がった』
『一位いけるんじゃね?』
『残りやばい』
『三秒!?』
『勝ったああああ』
『JOHN一位!!』
『陸どこいった』
『またダンジョンか?』
『生きてる?』
「最後俺の安否確認になってんじゃん」
見ると、ちょうど三人が通話中になっている。
陸も参加した。
『おっ、きた!』
『生きてた』
『お前マジで何してたんだよ』
「ダンジョン」
『ずっと?』
「ダンジョン行って、帰って寝て、またダンジョン」
『何してんだよお前』
「攻略してたんだよ!」
海斗たちの笑い声が重なる。
『こっちはJOHNでめちゃくちゃ盛り上がってたぞ』
「LINE見た。すごかったな」
『最後見た? 三秒だぞ三秒』
「見た見た」
『JOHNマジでずっと攻略してたんだろうな』
「だろうな」
『お前も最近ダンジョンばっかだったんだろ?』
「まあ、結構行ってたけど」
『似たようなもんじゃん』
「いや、俺と比べたら失礼だろ」
また笑い声が重なった。
そのまま文明攻略戦の話をしていると、やがて話題は明日のことへ移った。
『陸、明日外出る?』
「出る。六時になったらすぐ」
『はやっ』
「いや出るだろ。やっとだぞ」
『まあ、それはそう』
『俺も一回外見に行くわ』
「道路とか電車どうなってるんだろうな」
『分かんねえ』
『明日いきなり集まるのは無理そうだな』
「だな。ちょっと落ち着いてからにしようぜ」
『それでいいんじゃね』
『久しぶりに四人で集まりてえな』
「集まろうぜ」
しばらく話してから通話を切った。
スマホを置いた陸は、そのまま立ち上がる。
「よし。明日の準備するか」
「じゅんび?」
「外出る準備」
久しぶりに使うバッグを引っ張り出し、必要なものを入れていく。
「財布……どこやったっけ」
引き出しをいくつか開けて、ようやく奥から財布を見つけた。
「あった」
「それなに?」
「財布。外で買い物する時に使うやつ」
「ポイントじゃないの?」
「店でポイント使えるか分からないしな。一応持ってく」
財布をバッグへ入れ、スマホの充電も確認する。
次に服を出していると、エリナが覗き込んできた。
「それきるの?」
「明日はこれでいいかな」
陸は服をベッドの端へ置くと、エリナを見る。
「エリナも明日、外出たらあんまり勝手に飛んでくなよ」
「なんで?」
「人とか車とか、急に増えるかもしれないから。前に映画で見た車、覚えてる?」
「くるま! いっぱいはしってるやつ!」
「そうそう。道路に出る時はちゃんと周り見ような」
「うん!」
「あと、人多かったら俺の近くにいて」
「エリナ、めだつ?」
「めちゃくちゃ目立つ」
陸が即答すると、エリナは少し嬉しそうに翼を広げた。
「そこ喜ぶとこ?」
「えへへ」
準備が終わる頃には、寝る時間も近くなっていた。
二人でベッドへ入る。
「エリナ、明日どこ行きたい?」
「くるまみたい!」
「車か。走ってるかな」
「おみせも!」
「店も開いてたら行ってみるか。まあ、たぶん閉まってると思うけど」
「なんで?」
「世界更新終わったばっかだし、店の人もすぐ準備できるか分かんないだろ」
「そっか」
「まあ、とりあえず外歩いてみようぜ」
「うん!」
エリナは布団の中で嬉しそうに翼を動かした。
「明日、六時だからな」
「おきる!」
「寝坊すんなよ」
「リクも!」
陸は笑いながら目を閉じた。
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