第116話 世界更新
第1階層から家へ戻ると、陸はソファへ腰を下ろした。
左手首には、さっき手に入れたばかりの万象の腕輪がある。石壁へ突き刺さった三本の金属針を思い出すと、疲れているはずなのに、また少し試したくなってきた。
「これなら、俺も戦えるんじゃないか」
今まではスケルトンたちに任せるのが一番だった。自分で前へ出るより強くて、安全で、何十体も同時に動かせる。それでも腕輪があれば、スケルトンたちを戦わせながら陸自身も攻撃へ加われる。
「そういや、俺のステータスって今どんな感じだっけ」
陸は自分のステータスを開いた。
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佐藤陸
Lv.31
HP 302(+230)
MP 258(+172)
筋力 147(+110)
耐久 139(+105)
敏捷 158(+119)
賢さ 181(+134)
【スキル】
・スケルトンラッシュ
・鑑定
・サモンマップ
【称号】
・ゴブリンスレイヤー
・ウルフスレイヤー
・オークキラー
・……
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「……もったいなかったな、これ」
レベルが上がるたびに能力が伸びていることも、称号の補正が増えていることも分かっていた。
けれど、今までは自分で戦う必要がほとんどなかった。
括弧の中は、これまで獲得してきた称号による上昇分だ。最初に手に入れたゴブリンハンターは、ゴブリン系を累計1,000体倒した時の称号だった。討伐数が10,000体を超えればキラー、100,000体を超えればスレイヤーへ上がる。
スケルトンたちと大量の魔物を倒し続けた結果、その補正だけでHPは+230、MPは+172。ほかの能力にも100を超える上昇がいくつも乗っている。
「スケルトンの方が強いし、ポイント使うならスケルトンラッシュ育てた方が効率よかったからな……でも、こうして見ると俺自身も結構戦えそうだな」
陸はもう一度、左手首へ目を落とした。
万象の腕輪は属性を使うたびにMPを消費する。さっきは三本の針を作って飛ばしただけだが、MPは258もある。
「攻撃に使えるし、狙われた時は防御にも使える。形も自由に変えられるし、戦闘以外でも何か使えそうだよな。これ、めちゃくちゃ使い勝手いいじゃん」
陸はそう言いながら、ソファへごろんと横になった。
「さすがに疲れた……」
するとエリナがすぐに陸の上へ乗ってきて、左手首の腕輪をじっと見る。
「エリナもそれほしい!」
「これ一個しかないからな。次また手に入ったらエリナにあげるよ」
「ほんと!?」
「手に入ったらな」
エリナが嬉しそうに翼を動かす。
陸は寝転がったまま、もう一度腕輪へ目を向けた。金属だけでも攻撃と防御の両方へ使える。別の属性まで増えれば、今までとはまた違う戦い方もできそうだった。
「つぎ、なにいれる?」
「それも考えないとな」
陸が笑った、その時だった。
目の前に青白い光が集まり、新しいウィンドウが開く。
「ん?」
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【世界更新】
地球の世界更新が開始されました。
更新完了まで:1日8時間40分
更新完了後、
外界への移動制限が解除されます。
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陸はばっと身体を起こした。
「来た!」
文明攻略戦を一位で終えた時から、外へ出られるようになること自体は分かっていた。けれど、今度は終わるまでの時間がはっきり出ている。
「一日と八時間四十分……」
陸はすぐにスマホを見る。
21時20分。
「今からなら……明後日の朝六時か!」
「明後日の朝になったら、お外いける?」
「行ける!」
陸は思わずベランダの向こうへ目を向けた。
道路も建物も、ずっとそこにあった。けれど玄関の向こうは第1階層につながり、ベランダから外へ出ようとしても透明な壁に阻まれる。見えているのに行けない場所だった。
「明後日には外歩けるんだよな……!」
「あの道いきたい!」
「行こう。せっかくだし、近くの店も見に行きたいな」
「おみせ!」
エリナが嬉しそうに翼を広げる。
「朝になったらすぐ行く?」
「行く。六時になったらすぐ出ようぜ」
「いく!」
まだ一日以上ある。それでも、いつ出られるのか分かっただけで、さっきまで遠かった外の景色が急に近くなった気がした。
陸は世界更新の表示をそのまま見ていく。外界への移動制限解除だけではなく、システムにもいくつもの追加や変更が入るらしい。
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【世界更新 主な変更内容】
・ポイントの他者送付が可能になります
・システムメニューから
個人ダンジョンへ移動可能になります
・玄関と個人ダンジョンの接続が解除されます
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「ポイント送れるようになるのか!」
今の生活では、食べ物も日用品も、装備や素材もポイントで買える。以前の金も残ってはいるが、家から出られない今の暮らしでは、ポイントを使う機会の方が圧倒的に多かった。
「これなら素材売った時とか、誰かに何か頼んだ時も、そのままポイントで払えるな」
変更項目はまだ下に続いていたが、次に陸の目が止まったのは個人ダンジョンへの移動だった。
「ってことは、玄関も戻るんだ」
世界更新が終われば、個人ダンジョンへはシステムメニューから直接移動できる。その代わり、これまで玄関とダンジョンをつないでいた接続は解除される。
エリナが玄関の方を見る。
「じゃあ、ここあけたらお外になるの?」
「そう。ダンジョン行きたい時はメニューから行けばいいし、明後日からは玄関開けたら外だ」
エリナは玄関と窓の外を交互に見て、嬉しそうに翼を動かした。
ゴゴ……。
「ん?」
遠くから、低い音が一度だけ響いた。
テーブルの上のスマホがわずかに震え、窓ガラスが小さく鳴る。
「リク、いま音した?」
「したな」
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