第115話 万象の腕輪!
「見る?」
横で丸くなっていたエリナが、青白いウィンドウを覗き込むように顔を上げた。
「見る。これだけは今見たい」
身体はまだ重い。それでも、文明攻略戦を一位で終えた個人特別報酬だ。何が出るのか考えた瞬間、眠気より先に期待が勝った。
「何くるんだろうな。一位の報酬だぞ」
「すごいやつ!」
「だといいな!」
陸はソファから少し身体を起こし、【個人特別報酬】の確認を選んだ。
目の前に青白い光が集まる。光は細い輪郭を作りながら小さくまとまり、やがて一本の腕輪へ変わった。
「おお……腕輪?」
陸はすぐに手を伸ばした。
細身の銀色の腕輪だった。表面には細い溝が何本も走り、その一部だけが黒く沈んでいる。中央には小さな紫色の石が一つ埋め込まれていて、角度を変えるたびに淡い光が揺れた。
「きれい!」
「な。見た目も結構いいじゃん」
手の中で何度か回してから、陸は鑑定を使った。
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万象の腕輪
ランク:SS
素材・装備を吸収し、
その性質を属性として取り込む腕輪。
【機能】
・属性獲得
・属性強化
・属性操作
獲得した属性の使用時、
使用者のMPを消費する。
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「SS!?」
陸の声が一段上がった。
「エリナ、これSSだって!」
「えすえす?」
「めちゃくちゃ上のやつ。誘魔の香炉でもAだったんだぞ」
「すごいやつ!」
「ほんとにすごいやつ来たな……!」
陸はもう一度説明へ目を戻した。素材や装備から属性を取り込み、その属性を強化して、自分で操作できる。
読んでいるうちに、さっきまでとは別の意味で胸が高鳴ってくる。
「これ、何入れるかでできること増えてくってことだよな?」
「いれるの?」
「そう。たぶん腕輪が食う」
「うでわ、たべるの!?」
エリナがすぐ腕輪へ顔を近づける。陸は笑いながら左手首へ着けた。
「じゃあ、最初はちゃんといいやつ食わせてみるか」
真っ先に浮かんだのは、第11階層で手に入れたアダマンタイトインゴットだった。
所持アイテムから取り出すと、紫がかった銀色の金属塊が手の中へ現れる。第11階層のボス報酬だ。一個しかないが、SSランクの腕輪を最初に試す素材なら、これくらいの方が面白い。
「これ入れてみる」
「アダマンタイト!」
「覚えてたの?」
「うん!」
陸がインゴットを万象の腕輪へ近づけると、中央の紫色の石が淡く光った。
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アダマンタイトインゴットを
吸収しますか?
【はい】
【いいえ】
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「ほんとに食えるみたいだな」
「たべる!」
「よし。いけ!」
陸が【はい】を選ぶ。
アダマンタイトインゴットの表面から紫銀色の光がほどけ、細い光の粒になって腕輪へ流れ込んでいく。エリナもすぐ隣まで寄り、消えていく金属塊をじっと見つめていた。
「ちっちゃくなってる!」
「うわ、ほんとにそのまま吸ってくな」
数秒後、手の中のインゴットが完全に消えた。腕輪へ刻まれた細い溝を紫色の光が一周し、すぐに新しい表示が開く。
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【属性を獲得しました】
金属属性 Lv.12
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「12!?」
陸は思わず数字へ顔を近づけた。
「いきなり12まで上がった! アダマンタイト入れたからか?」
「じゅうに、つよい?」
「たぶんかなりいい。最初から1じゃないし」
しかも機能には属性強化がある。別の金属素材を入れれば、この数字はまだ伸ばせるのかもしれない。
そこまで考えたところで、陸はもう待てなくなった。
「ちょっと使ってみよう」
「やる!」
陸は右手を開き、金属を出すところをイメージした。
左手首の腕輪から魔力が抜けていく感覚と同時に、掌の少し上へ銀色の小さな塊が現れた。
「出た!」
「おおー!」
エリナがすぐに顔を寄せる。
指先ほどの金属塊が宙に浮かんでいた。陸が丸くなるよう意識すると、歪んでいた表面が滑らかな球へ変わる。
「じゃあ、細く」
球がするすると伸び、一本の細い棒になる。
「もっと尖らせて……」
先端が細くなり、一本の針へ変わった。
「リク、かたちかわった!」
「これ面白いな。じゃあ次――」
今度は薄く広げる。針が潰れるように広がり、小さな金属板になった。さらに丸めれば球へ戻り、一つだった球を二つ、三つと分けることもできた。
「三つ!」
「まだいけそうだな」
「もっと!」
「いや、家で増やすのはちょっと怖いって」
陸は笑いながら三つで止めた。それぞれを細い針へ変え、ソファから立ち上がる。
「飛ばせるか試したい。行こう」
「いく!」
二人で玄関へ向かい、扉を開けて第1階層へ出る。石造りの通路へ入ると、陸は三本の金属針を自分の前へ浮かべた。
「まず一本だけ」
少し離れた石壁へ意識を向ける。
飛べ、と考えた瞬間、一本の針が弾けるように前へ走った。
カンッ!
乾いた音が響き、金属針が石壁へ突き刺さる。
「刺さった!」
「おおっ!」
陸はすぐ残る二本へ目を向けた。一本ずつでも、まとめてでも動かせそうだ。形も自由に変えられるなら、針だけにする必要もない。
「これ、金属だけでかなり遊べるぞ」
「エリナもやる!」
「これは俺の腕輪だから無理じゃない?」
「えー!」
陸は笑いながら左手首へ目を落とした。
金属だけでこれなら、別の属性を取り込んだ時はどうなるのか。さっきまで疲れ切っていたはずなのに、もう頭の中には次に試したい形や使い方が次々浮かんでくる。
「スケルトンに任せるだけじゃなくて、これなら俺も一緒に戦えそうだな」
「エリナもいっしょ!」
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